Quarteto em Cy — ボサノヴァとMPBを極めるブラジル女性コーラスの聴き方と名盤ガイド

Quarteto em Cy — 知っておくべき基本像

Quarteto em Cy(クアルテート・エン・シー)は、ブラジルを代表する女性コーラス・グループで、1960年代に登場して以来、ボサノヴァやMPB(ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ)の重要な存在として長く活動してきました。4人の女性による緻密なハーモニー、柔らかなフレージング、そしてブラジルの名曲を洗練されたアレンジで再解釈する力が魅力です。

グループは時代とともに編成やレパートリーを変えつつも、常にボーカルアンサンブルの美しさを中心に据えてきました。初期のボサ・ナヴァ期の素朴で軽やかな表現から、70年代以降のMPB的な深みのある解釈、ライヴでの即興的な掛け合いまで、彼女たちのディスコグラフィは聴きごたえがあります。

聴きどころ(アーティスト性を理解するためのポイント)

  • ハーモニーの精度とアレンジ:4声コーラスの緻密なハーモニーが最大の魅力。楽器のアレンジは比較的節度を保ち、声を引き立てる配置が多い点に注目すると、グループの特色がよく分かります。
  • レパートリーの幅:ボサ・ノーヴァのスタンダードから、ヴィニシウス・ヂ・モライスやトム・ジョビンらの作品、70年代以降のMPB作家の曲まで幅広く取り上げています。翻案やコーラス・アレンジを通してオリジナリティを感じられます。
  • スタジオ録音とライヴの対比:スタジオ盤は緻密なサウンド設計で美しく、ライヴ盤は即興的な掛け合いや観客とのコミュニケーションが楽しめます。用途に応じて聴き分けると良いでしょう。
  • 言語表現と発音:ポルトガル語の母音を生かしたフレージングや、言葉のアクセントを伴う歌い回しは彼女たちの強み。歌詞を追いながら聴くと、表情の豊かさがより分かります。

おすすめレコード(入門〜コア・コレクション)

以下は「初めてQuarteto em Cyを聴く人」「コアなファンとして揃えたい人」の両方に向けたおすすめ盤です。各盤の位置づけと聴きどころを中心に解説します。

  • セルフタイトル(初期のスタジオ盤/いわゆるデビュー期の作品)

    彼女たちの持ち味が最もストレートに出ている時期のアルバム。ボサノヴァ色の強い楽曲と、軽やかで丁寧なコーラス・ワークが並びます。初期のサウンドを知ることで、後年の変化や発展をよりよく理解できます。

    聴きどころ:ハーモニーの素朴さと、アンサンブルとしての呼吸感。ボサノヴァの名曲をどう自分たちのものにしているかを比べてみてください。

  • Viniciusとの共演盤(Vinicius de Moraesとのコラボレーション作品)

    詩人・作詞家ヴィニシウス・ヂ・モライスとの共演は、彼女たちの音楽性を文学的・情緒的な側面から際立たせる好例です。ヴィニシウスの作品は歌詞の深みがあるため、コーラスでの語り口や感情表現の幅を楽しめます。

    聴きどころ:言葉の切り取り方、感情の層の作り方。スタジオ録音ならではの丁寧な表現が光ります。

  • ライヴ盤("Ao Vivo"など)

    ステージでの掛け合い、即興的なコーラス処理、観客との一体感はライヴ盤ならでは。レパートリーの別アレンジや、メンバーのソロ的な場面も楽しめます。グループの生きたダイナミズムを知るには最適です。

    聴きどころ:テンポの揺れや呼吸、観客反応を含めた「場の音」。スタジオ盤との比較で新たな発見があります。

  • 編集盤/ベスト・セレクション

    入門者には編集盤やベストが最短ルート。代表曲や重要な録音がまとめられているため、まずは名曲群を把握できます。良質な編集盤は年代順に並べ、サウンドの変遷を追う手助けにもなります。

    聴きどころ:代表曲の比較/年代ごとの歌唱スタイルの変化。気に入った曲のオリジナル盤を探すための足がかりにもなります。

  • 70年代以降のMPB系スタジオ盤

    より洗練されたアレンジや、MPB特有のソウルフルな表現が増す時期の作品群。民族楽器や都会的なプロダクションが混じり、歌い手としての表現の幅が広がります。

    聴きどころ:アレンジの多様化、表現の深まり、当時のMPBシーンとの関係性(共演者や作曲家)を意識して聴くと面白いです。

名盤を深掘りするための聴き方ガイド

  • テーマ別に聴き比べる:同じ曲のスタジオ版とライヴ版、あるいは複数の録音での違いを意識して聴くと、アレンジやフレージングの妙がよく分かります。
  • 作曲家に注目する:トム・ジョビン、ヴィニシウス、その他MPBの巨匠たちの作品をQuarteto em Cyがどう歌っているかを追うと、解釈の個性が見えてきます。
  • コーラスの構造を分析する:メロディを誰が歌い、どのパートがハーモニーを支えているかを耳で追うと、技術的な面での驚きがあります。
  • 歌詞を読む:ポルトガル語が分からなくても、日本語や英訳の歌詞を併せて読むことで、表現のニュアンスや感情の置きどころがより理解できます。

購入・収集のヒント

  • 初期のオリジナル・プレスは音色や空気感が魅力ですが、再発盤やリマスター盤はノイズ処理や音のバランスが現代向けに調整されていることが多いです。目的(歴史的雰囲気重視/音質重視)に合わせて選ぶとよいでしょう。
  • ライナーノーツやクレジット表記が充実している盤は、参加ミュージシャンや編曲者が確認でき、聴きどころを見つける手助けになります。
  • コンピレーションやデジタル配信は入門には便利。気に入った曲が見つかったら、その曲が収められたオリジナル・アルバムを探すとさらに深掘りできます。

まとめ

Quarteto em Cyは、ブラジル音楽の中で「声(コーラス)」が主役となる魅力を示した重要なグループです。初期のボサノヴァ的な軽やかさと、後年のMPB的な深みの双方を楽しめるため、代表的なスタジオ盤、ライヴ盤、編集盤をバランスよく聴くことをおすすめします。まずは編集盤で代表曲に触れ、気に入った曲があればその曲を含むオリジナル盤に遡る──この聴き方が最も楽しく確かな理解につながります。

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参考文献