ラリー・グラハム徹底解説|スラップ奏法の創始者が切り開いた歌うベースとファンクの歴史
ラリー・グラハム(Larry Graham) — 概要とプロフィール
ラリー・グラハムは、アメリカを代表するベーシスト/シンガー/バンドリーダーで、ファンクとR&Bの発展に多大な影響を与えた人物です。1960年代後半から活動を始め、Sly & the Family Stone のリズム隊を支えた後、自身のバンド「Graham Central Station」を結成してリーダー/作曲家としても注目を浴びました。
なぜ特別なのか — 魅力の核
ラリー・グラハムの魅力は大きく分けて以下の点に集約されます。
- ベースの役割を「メロディ+リズム」の両輪に拡張したこと
従来のベースが主に和音の土台や低域の支えを担っていたのに対し、グラハムはベースを楽曲の主役級のフックとして機能させました。彼のラインはメロディ性が強く、ドラムと密接に絡みながらも耳に残る“歌うベース”になっています。
- スラップ奏法(スラッピング/ポッピング)の発明・普及
グラハムは親指で弦を叩いて「打楽器的」なアタックを与え、指で弦をはじいて鋭いトーンを出すという奏法を確立しました。この奏法は“スラップ”として広まり、ブーツィー・コリンズや多くのファンク/ロック系ベーシストへ影響を与えました。
- ゴスペル〜ゴージャスなヴォーカル表現
育ちやルーツに由来するソウルフルな歌唱やコール&レスポンスの処理も彼の特徴です。ベースと歌を同時にこなす点でも聴衆を惹きつけます。
- リーダー/アレンジャーとしての才
Graham Central Stationでは、ファンク、ゴスペル、ロック、R&Bをクロスオーヴァーさせたサウンドを作り上げ、派手なホーンやコーラス、リフ主体の編曲で一貫した個性を提示しました。
スラップ奏法の成立と音楽的特徴(技術面の深掘り)
スラップ奏法は単なる技巧ではなく、楽曲全体のグルーヴを作るための言語です。グラハムの特徴的なアプローチは次のような要素で成り立ちます。
- 親指による“サム・スラップ”で低域に鋭いアタックを与え、ベースがまるで打楽器のように聞こえる
- 人差し指/中指による“ポップ”で高域の弦をはじき、アクセントやリズムの切れ味を作る
- ゴースト・ノートやミュートを多用して“空間”を作り、ドラムと対話する
- シンプルなコード進行やオスティナート(反復リフ)に対して、装飾的で歌うようなフレーズを重ねる
これらにより、ベースは単なる伴奏楽器から楽曲の中心的な推進力になりました。技術の面だけでなく“リズム感”と“歌心”の両立が彼のスラップ奏法の本質です。
代表曲・名盤(これから聴くなら)
ラリー・グラハムを知るための主要な作品をいくつか挙げます。Sly & the Family Stone 時代と Graham Central Station、ソロの仕事でそれぞれ異なる顔が楽しめます。
- Sly & the Family Stone — 「Stand!」など(代表曲:"Everyday People"、"Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)" 等)
グラハムがリズムセクションとしてグルーヴを支えた時代。ファンクの基本が詰まっています。
- Graham Central Station — デビュー作や初期アルバム
彼のバンドではベースの主導性がさらに前面に出て、ゴスペル的要素とダンス性の高いファンクが融合しています。代表曲やライブ演奏でそのエネルギーを感じてください。
- ソロ作(1980年代以降のR&B寄りの作品)
よりメロディ重視のR&Bナンバーやバラードもあり、別の側面が見えます。
ステージとパフォーマンス
グラハムのライブは、ベースの存在感だけでなく、フロントマンとしての魅力が大きな見どころです。声を前に出し、観客とのコール&レスポンスを作り、楽曲のダイナミクスを巧みに操ります。ビジュアル面でも当時のファンク・シーンを象徴する派手な衣装やアフロスタイルなど、エンタテインメント性が高いショーを見せました。
影響とレガシー
ラリー・グラハムの影響は計り知れません。スラップ奏法はその後の多くのベーシスト—ブーツィー・コリンズ、マーカス・ミラー、フリー(Red Hot Chili Peppers のフリー)、フリーやフリーの影響を受けたフリー系など—に継承され、ファンク/ロック/ポップのサウンドを変えました。さらに、ベースを“曲を牽引する楽器”として認識させた点は、バンド編成やアレンジの考え方自体にも影響を与えています。
学ぶべきポイント(プレイヤー向けの示唆)
- リズムの強さと歌心を両立させること。メトロノームでの練習はもちろん、歌や声のフレーズを意識してベースラインを作ると説得力が増します。
- ミュートやゴースト・ノートで“空間”を作る。音を出すだけでなく、出さないことでグルーヴが生まれます。
- シンプルな反復の中に変化を入れる。リフ自体が曲のフックになることを意識する。
- ステージパフォーマンスでは、役割を超えた“表現”を意識する。観客とのコミュニケーションが音楽をより強くします。
まとめ
ラリー・グラハムは、テクニックだけでなく音楽の思想そのものを変えたアーティストです。ベースを“リズム+メロディ”の両面で生き生きと機能させ、聴衆を巻き込む歌心とリーダーシップで多くのミュージシャンに影響を与えました。ファンクやR&Bの歴史を学びたい人、あるいは“ベースを主役にしたい”と考えるプレイヤーにとって、彼の音楽は必聴です。
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