ジャック・ディジョネットの名盤完全ガイド:初心者向けの聴き方とおすすめレコード一覧

はじめに — ジャック・ディジョネットという存在

ジャック・ディジョネット(Jack DeJohnette)は、1960年代後半から現在に至るまでジャズの最前線で活躍してきたドラマー/作曲家です。マイルス・デイヴィスの電化期を支え、チャールズ・ロイドやキース・ジャレットなど名だたるリーダーの重要なパートナーを務める一方で、自身のリーダー作やプロジェクトでも独自の音楽世界を築いてきました。本コラムでは、ディジョネットの音楽性を深く味わえるおすすめレコードを選び、それぞれの聴きどころ、背景、代表的なトラック、コレクション上の注目点(音楽的観点)を解説します。

選考の視点

  • 歴史的インパクト:ジャズ史上の転換点に関わった作品
  • リーダー/共演のバランス:ディジョネット自身の表現と名セッションでの輝き
  • 音楽的多様性:アコースティック・ジャズからフリー、フュージョン、コンテンポラリーまで
  • 初めて聴く人にも入りやすい作品と、深掘りしたくなるコアな作品のバランス

おすすめレコード・リスト(概観)

  • Miles Davis — Bitches Brew
  • Charles Lloyd — Forest Flower (Live)
  • Keith Jarrett / Standards Trio — Standards, Vol. 1(スタンダーズ作品)
  • Jack DeJohnette — The DeJohnette Complex(リーダー初期作)
  • Jack DeJohnette — Special Edition(グループ/プロジェクト)
  • Jack DeJohnette — Sound Travels(近年の代表作)
  • Jack DeJohnette — Made in Chicago(郷里を題材にした近年作)

Miles Davis — Bitches Brew

なぜ聴くべきか:エレクトリック・ジャズ/ジャズ・ロック(フュージョン)誕生の landmark 。ディジョネットはこの濃密なセッション・サウンドにおいて、ビートの柔軟さとテクスチャー作りで重要な役割を果たしました。

聴きどころ:長尺のトラック群で、ドラマーとしての「時間の引き伸ばし方」や、リズムを固定せず流動的に移ろわせる手法を学べます。ブラスと電子音が重なる中での間合い、ダイナミクスに注目してください。

代表的トラック:タイトル曲「Bitches Brew」を中心に、断片的なループと即興の重なり方を体感するとディジョネットの役割が浮かび上がります。

Charles Lloyd — Forest Flower (Live)

なぜ聴くべきか:若き日のディジョネットがチャールズ・ロイドのカルテット(キース・ジャレット等)で見せた多彩さを収めたライブ盤。アコースティック・ジャズの中で幅広い表現力を示す好例です。

聴きどころ:ライブならではのテンポ変化や、ドラマーが空間を埋める/開ける判断の連続。フレーズの裏での「間(ま)」の取り方、ブラシ/スティックの使い分けなど、ドラマーのテクニックと感性が明確に聴き取れます。

代表的トラック:「Forest Flower」はもちろん、ライブの流れ全体でメンバー間の呼吸を感じてください。

Keith Jarrett / Standards Trio — Standards, Vol. 1

なぜ聴くべきか:キース・ジャレット(p)、ゲイリー・ピーコック(b)と組んだ「スタンダーズ・トリオ」でのディジョネットは、古典曲の新たな解釈と即興の深さを両立します。スタンダード曲を通じた表現の深化を観察するのに最適な作品です。

聴きどころ:曲を支えるグルーヴの確かさと、即興での会話性。特にバラードや中速のナンバーでの細かな色付け(シンバルの置き方、スネアのタッチなど)に耳を傾けると、音楽全体の成熟度がわかります。

代表的トラック:スタンダード曲群の選曲とアレンジに注目。トリオの「間合い」が曲の新しい魅力を引き出しています。

Jack DeJohnette — The DeJohnette Complex

なぜ聴くべきか:リーダーとしての初期の試みを示す重要作。ディジョネットの作曲観やバンドリーダーとしての視点、そして多彩な表現欲が早期から顕在であることがわかります。

聴きどころ:ドラマー主体ではありながら曲の構成感が強く、リズム以外の楽器との相互作用、アンサンブルの設計を学べる点が貴重です。若き日の実験的な側面とジャズの伝統との折衷にも注目してください。

Jack DeJohnette — Special Edition(プロジェクト)

なぜ聴くべきか:「Special Edition」はディジョネットがフロント陣(サックス等)と強力にコラボしたプロジェクトで、フリージャズ的な即興の荒々しさと構築的なコンポジションが混在します。彼の「プロデューサー/編曲者」としての才能も感じられるシリーズです。

聴きどころ:テナーやバリトンサックスとの重層的なやり取り、自由度の高いリズム処理。即興が破綻しないための支え方、空間を埋める工夫など、リーダーとしての音楽的決断を読み取れます。

Jack DeJohnette — Sound Travels

なぜ聴くべきか:近年におけるディジョネットの代表作のひとつで、伝統と現代的感覚が融合したサウンド。楽器編成やゲストの呼び方も多彩で、彼の成熟した作曲/プロデュース観が明確に示されています。

聴きどころ:メロディアスな楽曲から即興色の強いナンバーまで幅広く、曲ごとに異なる「時間感覚」を試している点が特徴。ドラムだけでなくパーカッションの使い分けや、曲全体の空気作りに注目してください。

Jack DeJohnette — Made in Chicago

なぜ聴くべきか:ディジョネットの出自であるシカゴのミュージシャンと共演し、ルーツを見つめ直した作品。郷愁と革新が同居するサウンドは、彼のキャリア全体を理解する上での重要なピースになります。

聴きどころ:シカゴの伝統的なジャズ/即興の系譜と、ディジョネットが培ってきた現代的表現との接点。ゲストとの掛け合い、アンサンブルの温度感を楽しんでください。

各作品を深く聴くためのポイント(音楽的着眼点)

  • 「空間の活かし方」を聴く:ディジョネットは叩き続けるのではなく、音を出す/出さないの判断で曲を動かします。沈黙や余韻の扱いに注目。
  • ダイナミクスの幅:ソフトからラウドまでの移行が自然で、それが曲のストーリーテリングを担います。
  • 色彩(サウンドテクスチャー):シンバル、ロータム、パーカッション類の使い分けで曲の色が変わります。打点の位置や手法の違いを意識して聴くと、新たな発見があります。
  • 共演者との対話:特にトリオや小編成では“会話”がそのまま音楽の核です。相手のフレーズに対する即応性を聴き取りましょう。

ディジョネット入門のための聴き方シークエンス(初心者向け)

  1. まずは歴史的な一枚(例:Miles Davis「Bitches Brew」)で彼の“時代を動かした”側面を把握。
  2. 次にライブ盤(Charles Lloydなど)で即興応答の柔軟さを体感。
  3. スタンダード系(Keith Jarrettとのトリオ)で“伴奏力”と間の取り方を観察。
  4. リーダー作(The DeJohnette Complex、Special Edition、Sound Travels、Made in Chicago)で彼の個性と作曲性を味わう。

補足:レコード選びの観点(音楽的)

  • オリジナル・リリースとリマスター盤では編集やミックスが異なる場合があります。演奏の“ニュアンス”が気になる方は複数版を聴き比べるのも面白いです。
  • ライブ盤は演奏の即興性が強く出るため、スタジオ盤とはまた違う「ディジョネット像」が見えます。どちらも聴くのが望ましいです。

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参考文献