ジム・モリソンとザ・ドアーズの名盤ガイド:初心者から中級者までの聴き方とおすすめレコード
ジム・モリソン(Jim Morrison)を聴く前に—概観
ジム・モリソンはザ・ドアーズ(The Doors)のフロントマンとして知られる詩人的なヴォーカリスト/リーダーです。ソロ・スタジオ・アルバムを残さなかったため、彼を味わう最良の方法はザ・ドアーズ名義のアルバム群やモリソンの声・詩性が前面に出たポスト・ヒューマン作品を聴くことです。本コラムでは、初めてのリスナーからコアなファンまでを想定して、代表的かつ聴きどころの深い「おすすめレコード」を厳選し、各作の背景・楽曲のポイント・聴き方の視点を解説します。
おすすめレコード一覧(要点と聴きどころ)
The Doors(1967)
デビュー作。バンドの原型が最もストレートに出た一枚で、モリソンの声とロイ・プライス(オルガン)を中心に、即興性とサイケデリックな要素が融合しています。初期の代表曲が集中しており、ザ・ドアーズを知るうえで必聴。
- 代表曲:Break On Through (To the Other Side)、Light My Fire、The End
- 聴きどころ:モリソンの語り/朗読的表現と長尺の即興(The End)の緊張感。バンドの生々しい演奏。
- なぜ重要か:バンドの原点。詩人としてのモリソンとロック・バンドの実験が初めて結実した作品。
Strange Days(1967)
デビューと同年に発表された2作目。サウンドの幅が広がり、ストリングスやサウンドエフェクトの実験が増えています。よりダークで幻想的な世界観が構築され、モリソンの詩的イメージが強く反映された曲が多く含まれます。
- 代表曲:People Are Strange、Strange Days、When the Music’s Over
- 聴きどころ:映画的なサウンドスケープとモリソンの語りの交錯。長尺ナンバーでの感情表現。
- なぜ重要か:バンドとしての音楽的冒険心が顕著になった段階。劇的な構成が好きな人に特におすすめ。
Waiting for the Sun(1968)
ポップ寄りの楽曲(Hello, I Love You など)と、モリソンの詩的テーマが混在するアルバム。全体としてバラエティがあり、シングル志向と実験性の両立を試みた作品です。
- 代表曲:Hello, I Love You、Five to One、The Unknown Soldier
- 聴きどころ:政治的/社会的テーマ(The Unknown Soldier)や、黒く詩的なナンバー(Five to One)の迫力。
- なぜ重要か:ヒット曲と深い暗さが同居することで、モリソンの多面性が見える。
The Soft Parade(1969)
弦楽器やブラスを大胆に導入した一枚。批評では賛否が分かれることが多いアルバムですが、モリソンの詩とバンドのアレンジ志向がユニークに交差しています。ロックとオーケストレーションの融合に興味がある人に勧めたい作品です。
- 代表曲:Touch Me、Runnin’ Blue、The Soft Parade
- 聴きどころ:商業的なアレンジとバンドのロック性の緊張関係。モリソンのヴォーカルのレンジ。
- なぜ重要か:ザ・ドアーズ史における“実験の軸”を理解するための鍵。
Morrison Hotel(1970)
ブルース志向が復活した、より直線的で骨太なサウンドが魅力のアルバム。モリソンの声に力強さが戻り、バンドの演奏もタイトになっています。ロックンロール/ブルースのダイレクトな楽しさを味わえます。
- 代表曲:Roadhouse Blues、You Make Me Real、Peace Frog(収録はアルバム構成による)
- 聴きどころ:生々しいブルース感、スタジオでの即興性。モリソンの“荒々しさ”が魅力。
- なぜ重要か:モリソン自身のヴォーカル表現の成熟を示す作品で、バンドのルーツ感が色濃い。
L.A. Woman(1971)
モリソン在籍最後のスタジオアルバム(1971年リリース)。ブルースとルーツ・ロックを基調に、ミニマルながら深い雰囲気を持つ名盤です。アルバムの雰囲気は陰影が深く、モリソンの声はよりリラックスしつつも深みを増しています。
- 代表曲:Riders on the Storm、L.A. Woman、Love Her Madly、The Changeling
- 聴きどころ:雨音やエフェクトを含む映画的な配置、モリソンの低音域の表現。「Riders on the Storm」のような夕暮れ的ムード。
- なぜ重要か:モリソン期ザ・ドアーズの集大成。詩的深淵とブルース的実直さが絶妙に混ざる。
Absolutely Live(1970)
ステージ上のモリソンをそのまま切り取ったライブ盤。即興のヴォーカル・エンディングやリード曲の変奏が楽しめ、モリソンのパフォーマンス力とライブでの危うさ・魅力がよく伝わります。
- 代表的な聴きどころ:ライブならではの長尺即興(The End 等の変容)、観客とのインタラクション。
- なぜ重要か:モリソンの“ライブアクト”を体験的に理解するのに不可欠。
An American Prayer(1978)
モリソン没後に発表された詩の朗読作品。モリソン自身の録音された詩的朗読に、ザ・ドアーズの残されたメンバーが音楽を付けた構成で、彼の詩人としての側面を最も直接的に感じられる作品です。ロックの枠に留まらない、文学的・儀式的な色合いが強い一枚。
- 代表的な聴きどころ:詩の断片が音楽と重なり合う部分。朗読の間合いと音響の設計。
- なぜ重要か:モリソンを“歌手”ではなく“詩人”として再評価するための重要作。
その他:注目すべきライヴ/編集盤
公式・非公式を問わず、多くのライヴ録音やアウトテイク集が出ています。初期のクラブ・ライヴ(MatrixやWhisky a Go Goなど)や、後年リリースされたライヴ音源はモリソンの即興性を知るうえで有益です。また、ベスト盤やリマスター盤は入門用として便利です。
- ライブ音源:初期クラブでの荒々しい演奏を収めたものや、後年の代表公演の音源
- 編集盤:代表曲を整理して聴くにはコンピレーションが便利(ただしアルバム通しての流れは別格)
聴き方の提案(深掘りポイント)
- 詩に注目する:歌詞を投げかける一行一行を朗読するように追ってみると、モリソンの影響源(詩人、映画、カウンターカルチャー)が見えてきます。
- 声の変化を追う:デビューからL.A. Womanまでの声の表情(若さ・荒さ・低音の深み)を比較すると、表現の移り変わりがよく分かります。
- バンドとの関係性:レイ・マンザレクのオルガン、ロビー・クリーガーのギター、ジョン・デンズモアのドラミングとの掛け合いを聴き、モリソンがどのように“声”としてバンドに溶け込んでいるかを意識する。
- ライブ音源の価値:スタジオ録音では見えにくい即興やトーク、長尺展開はライブ盤でこそ楽しめます。鑑賞時は曲間の空白や会話も含めて“パフォーマンス”として眺めると面白い。
入門者向けの聴き進めルート(初心者〜中級者)
- ステップ1:ベスト盤(代表曲)でモリソンの声と主要楽曲に親しむ。
- ステップ2:デビュー作(The Doors)→ Strange Days → L.A. Woman の順でアルバム通して聴く。初期の衝動と集大成を並べて比較する。
- ステップ3:Morrison Hotel や Waiting for the Sun、The Soft Parade を聴いて変遷を把握。
- ステップ4:Absolutely Live や An American Prayer で舞台/詩人としてのモリソンを深める。
コレクションやエディション選びの観点(音楽的観点中心)
音質的にリマスター盤は聴きやすく、細部が分かりやすい利点があります。一方、初期のオリジナル・アルバムは当時の空気感やミックス仕様が残っており、歴史的な聞き味が違います。音の「生々しさ」や演奏のダイナミズムを重視するか、聴きやすさ・解像感を重視するかで選ぶと良いでしょう。
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参考文献
- The Doors — 公式サイト
- Jim Morrison — Wikipedia(英語)
- The Doors — Wikipedia(英語)
- AllMusic — The Doors アーティストページ
- Rolling Stone — The Doors 関連記事


