Psychic TVとは?前衛音楽の旗手・儀式性・聴き方・影響を徹底解説
Psychic TVとは — 概要と成り立ち
Psychic TV(サイキックTV)は、1980年代初頭にイギリスで結成された実験音楽/マルチメディア・プロジェクトです。中心人物はGenesis P‑Orridge(ジェネシス・P=オリッジ)で、彼女/彼の前身バンドであるCOUM TransmissionsやThrobbing Gristleで培われたパフォーマンス・アートや前衛的音楽のノウハウを引き継ぎつつ、音楽ジャンルの垣根を越えて活動しました。常にメンバーが流動的で、多数のコラボレーターやサブプロジェクトを伴いながら、音楽・映像・儀礼・出版を横断する包括的な創作を行った点が大きな特徴です。
主要メンバーと関連組織
- Genesis P‑Orridge:中心的な創作と思想の担い手。パフォーマンス、作詞作曲、映像、出版などを統括。
- Peter Christopherson(初期に関与):Throbbing Gristle出身の映像/音響作家で、Psychic TVの初期活動にも深く関わった。
- Thee Temple ov Psychick Youth(TOPY):Psychic TVを取り巻くカルト的なネットワーク兼実践集団。儀礼的・精神的実践や出版(例:Thee Psychick Bible)を通じて、音楽以外の文化的影響力も及ぼしました。
音楽的特徴と表現手法
Psychic TVの魅力は「ジャンルを横断し、概念を音に落とし込む」点にあります。以下が主要な特徴です。
- ジャンル混交:ノイズ、インダストリアル、ポストパンク、サイケデリック、アシッドハウス、アンビエント、テクノなどを時期に応じて取り入れ、しばしば一つのトラック内で複数の要素が共存します。
- 儀礼性とパフォーマンス:音楽は単独で完結せず、映像・舞台演出・身体表現と結びつき、ライブは「儀式」的な側面を帯びることが多いです。
- コラージュ/カットアップ手法:サンプリングや断片的な音素材の重ね合わせによって、断続的で夢幻的な音像が構築されます。
- ポップと実験の境界を曖昧にする姿勢:時にキャッチーなメロディやシングル志向の曲も制作しつつ、実験的作品群を同時並行で発表します。
代表作・名盤(選)とその聴きどころ
膨大なカタログを持つため「入門盤」と「深堀り盤」で紹介します。下記は代表的で評価の高い作品群です。
- 初期のアルバム群(例:Force the Hand of Chance、Dreams Less Sweet)
芸術的実験とポップ性が混在する時期。音のテクスチャーやサウンド・コラージュ、作品ごとに異なるゲストやアプローチが聴きどころです。
- シングル「Godstar」などのストレートな楽曲
切れのあるポップなフックを持ち、Psychic TVが単なる実験集団ではなくヒット狙いの曲もつくることを示した例。テーマ性や外部の文化人物(例:ブライアン・ジョーンズ)を題材にしたものもあります。
- 後期のダンス/ハウス志向の作品(Towards Thee Infinite Beat等)
1980年代後半から1990年代にかけてのレイヴ/ハウス文化との親和性が強まった時期で、リズム重視のトラックやクラブ向けの再構築が見られます。
- ライブ録音・限定テープ群
断片的で一回性の高い実験が多く、ファンにとっては掘り出し物的な名盤が多数存在します。音源のアーカイブ性も魅力の一つです。
ライブと視覚表現—映像、パフォーマンス、儀式性
Psychic TVは視覚を欠かせない表現としてきました。映像インスタレーション、ビデオ作品、ライブでの衣装や舞台構成は、単なる演奏の枠を超えた「儀礼的なイベント」を形成します。また、会場と観客を巻き込むことで、作品の体験がより共同的・即興的になる点が大きな魅力です。
思想と論争—芸術と社会の境界を揺さぶる
Genesis P‑OrridgeやTOPYが提唱した思想・実践は、しばしば物議を醸しました。性的・宗教的表現、自己改造(例:パンロジェニーなどの身体表現プロジェクト)、カルト的な誤解やスキャンダルに発展することもありました。しかし同時に、アートと生活、個人と集合の境界を問い直す先駆的な試みとして高く評価されています。
後続への影響と現代的評価
Psychic TVの影響は多岐にわたり、インダストリアルや実験電子音楽だけでなく、90年代以降のクラブ/レイヴ文化、アンビエント、ポップの実験的接近にもつながっています。大量のリリース形態(シングル、ミニアルバム、テープ、映像)やコミュニティ形成の手法は、DIY的な現代インディ/アンダーグラウンド・シーンに多くの示唆を与えました。
聴き方・楽しみ方の提案
- まずは代表曲・代表作から入る:ポップ寄りのシングルで耳を慣らした後、アルバムやライブ録音で実験性に触れると切り替えがスムーズです。
- 映像資料とセットで鑑賞する:映像やライブの記録が作品理解を深めます。
- 断片的な作品を楽しむ心構え:同じ曲内でスタイルが飛ぶことを前提に、コラージュ的音像を楽しんでください。
- 思想的背景も手がかりに:TOPYやThee Psychick Bibleなどの思想資料を読むと、音楽の意図や儀礼的側面が見えてきます(ただし批判的視点も忘れずに)。
まとめ:なぜPsychic TVは魅力的か
Psychic TVの魅力は、音楽を中心に据えながらもそれを「生き方」「儀礼」「映像」と結びつけて拡張した点にあります。ジャンルを横断する柔軟性、挑発的で実験的な姿勢、加えて大量かつ多様な音源群は、時代を越えて新しい聴衆に再解釈され続けています。商業的成功だけを目的としない自由な実験精神こそが、彼らの長年にわたる魅力の核です。
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参考文献
- Psychic TV — Wikipedia
- Psychic TV — AllMusic
- Psychic TV — Discogs(ディスコグラフィ)
- Genesis P‑Orridge obituary — The Guardian
- Thee Temple ov Psychick Youth — Wikipedia


