シギスヴァルト・クイケン:歴史的奏法(HIP)とOVPPで紐解くバロック音楽の真髄

シギスヴァルト・クイケン(Sigiswald Kuijken)──プロフィール

シギスヴァルト・クイケンは1944年生まれのベルギー出身のヴァイオリニスト/指揮者で、歴史的奏法(Historically Informed Performance, HIP)の第一人者の一人として国際的に知られています。1970年代以降、バロックや古典派の演奏慣習を原典や資料に基づいて再構築する活動を展開し、1972年に創設したアンサンブル「La Petite Bande(ラ・プティット・バンド)」を通じて、多数の録音・公演を行ってきました。

クイケンの魅力──何が評価されるのか

  • 原典志向と音楽学の接続:楽譜原典や当時の奏法資料を重視し、考証に基づく表現を行う点。演奏が資料や作曲家の時代の文脈に根ざしているため、説得力がある演奏を生みます。

  • 「一声一部(One Voice Per Part:OVPP)」の推進:特にバッハのカンタータや宗教曲に関して、合唱を大人数で歌う近代的慣習に対し、各パートを一人ずつで歌わせる唱法を実践・提唱し、テクスチャーの明晰さや対位法の構造を浮かび上がらせました。

  • 音色と表現の自然さ:金属的な派手さや過度のヴィブラートを避け、ガット弦・バロック弓を基調とした柔らかく反応の速い音色を重視します。舞曲的なリズム感、語り口(レトリック)を強調する演奏スタイルが特徴です。

  • 室内楽的・対話的なアンサンブル観:オーケストラ的な“重さ”よりも、各パート間の対話や声部の独立性を尊重するため、アンサンブルがクリアで生き生きとしています。

  • 教育者としての影響力:若手演奏家への指導やマスタークラスを通じて、欧州を中心に次世代のHIP奏者を育て、多くの分野での実践者を輩出しています。

演奏哲学と具体的な実践

  • テンポとリズム:舞曲的性格を大切にし、拍節感やダンスの重心を意識した自然なテンポ設定を行います。曲ごとの文脈(礼拝曲なのか舞踏曲性なのか)を考慮して動的に解釈します。

  • 表現の「語り」としてのフレージング:フレーズを「話す」ように扱い、音楽的呼吸や句読点を明確にすることで、聴き手に意味が伝わる表現を志向します。

  • 編成の見直し:大規模合唱・大オーケストラの常識に疑問を呈し、作曲家当時の習慣に近い小編成(しばしばOVPP)での演奏を選択することが多く、作品の細部を浮かび上がらせます。

代表作・名盤(入門おすすめ録音)

  • La Petite Bande によるバッハ関連録音群:バッハのカンタータやブランデンブルク協奏曲など、クイケンの解釈がよく表れている録音群は、HIP入門として有益です(カンタータ全集ではないものの、OVPPの考え方が体感できます)。

  • バロック協奏曲集(ヴィヴァルディ、コレッリ、コレッリ様式の作品):弦楽アンサンブルの対話性やデリケートなテンポ運用が光ります。

  • ヘンデル/テレマンなどの曲集:当時の演奏慣習をベースにしたリズム感とヴィルトゥオーソ性のバランスを示す録音が多数あります。

(注:タイトルはリリースやレーベルで複数の編集が存在するため、まずは「La Petite Bande」名義の代表的なバッハ録音やバロック協奏曲集を探すと良いでしょう。)

聴きどころと楽しみ方

  • 声部の独立性に注目:OVPPや小編成によって各声部が際立つため、対位法の動きや内声のメロディーラインに耳を傾けると新しい発見があります。

  • 拍節と舞曲性:拍の取り方や短いニュアンスで「踊り」の要素が表れる場面を探してみてください。意外と「踊る」ことが音楽全体の活力につながっています。

  • 響きの質感を味わう:ガット弦やバロック弓による柔らかいアタック、控えめなヴィブラートの効果を意識すると、現代楽器の演奏との違いが明瞭になります。

クイケンの影響と今日への残響

シギスヴァルト・クイケンの活動は、歴史的奏法の普及と演奏慣習の見直しに大きく寄与しました。La Petite Bandeを通して提示された多くの演奏的発見は、現在の古楽界のスタンダードの一部となっており、また対位法や合唱編成に関する議論(OVPPの是非など)を活性化させました。演奏家・研究者双方に対する彼の実践は、古楽の実演における「考える演奏」のモデルとなっています。

聴衆・研究者・演奏家へのメッセージ

クイケンの演奏を聴く際は、「当時の音楽がどのように機能していたのか」を探る好奇心を持つことをおすすめします。譜面・史料に裏付けられた表現は、単に「古風」な音を再現することよりも、作品の内在的な論理や語りを際立たせます。演奏家にとっては、技術や録音の流儀を越えて「歴史と音楽の対話」を続ける重要性を示す先例です。

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