リリ・レーマンの歴史的録音を楽しむ:復刻盤で探るモーツァルトとワーグナーの歌唱と聴き方
リリ・レーマン(Lilli Lehmann)——短い人物紹介
リリ・レーマン(Lilli Lehmann、1848–1929)はドイツの名ソプラノで、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した声楽家です。ウィーン、ミュンヘン、さらにはバイロイト音楽祭などでの活動を通じてワーグナーやモーツァルトを得意とし、後年は教育者として多くの門下を育てました。演奏者としての幅広さ(レパートリーが非常に豊富)と、声楽教育における影響力が特徴です。
レコード選びの前提:歴史的録音を聴く際の心構え
レーマンの録音の多くは20世紀初頭の音響録音(アコースティック録音)で、現代のデジタル録音とは音響特性が大きく異なります。ノイズや帯域制限、音像の近接性などがありますが、そのなかに当時の歌唱技術や解釈、発声観が色濃く残っています。購入・視聴の際は「史料」としての価値を楽しむ姿勢があると、より深い鑑賞ができます。
おすすめレコード(復刻盤/アンソロジー)と聴きどころ
- Preiser “Lebendige Vergangenheit — Lilli Lehmann”(CD)
Lebendige Vergangenheitシリーズは歴史的歌手を扱う定評あるシリーズです。このタイトルは代表的なアリアや歌曲をバランスよく収めており、入門用として最適。音質は現代のリマスター技術で整えられており、歌唱の特質(明瞭な語詠み、アゴーギク、ワーグナー/モーツァルト両面の表現)がわかりやすく提示されています。
聴きどころ:モーツァルトや初期ワーグナーのフレーズ処理、語尾の処理、アコースティック録音におけるダイナミクスの表現。
- Marston Records 等の“Complete Acoustic Recordings / Early Recordings”復刻(ボックス/CD)
Marstonや同種リイシュー・レーベルは、可能な限り原拠音源から丁寧に復刻して完全盤形式で出すことが多いです。個々のセッション情報、録音年、伴奏者情報などの解説が充実しているため、研究的に聴く人に向きます。
聴きどころ:年代順に聴いて声の変化(若年期と成熟期の違い)や録音技術の影響を比較することができる点。
- Naxos Historical / EMI などのアンソロジー(デジタル配信/CD)
大手クラシック系のアンソロジー・シリーズにもレーマンの抜粋が収録されることがあります。価格や入手性の点で便利で、他の歴史的歌手との比較に向いています。
聴きどころ:ほかの同時代歌手と並べて聴き、歌唱様式の差異(ヴィブラート、語詠み、テンポ感)を把握する。
- インターネットアーカイブ(Internet Archive)や国立図書館等のデジタル化音源
著作権の状況により、一部の初期録音はパブリックドメインとして公開されています。オリジナル音源に近い形で聴く/ダウンロードできることがあるため、研究目的での参照に有益です。
聴きどころ:オリジナルのカップリングや放送用マスターなど、CD化で省略されたセッション情報に触れられる場合がある点。
具体的に聴いてほしい代表的な楽曲・場面
モーツァルト歌曲・アリア — レーマンはモーツァルト作品の解釈で知られ、透き通った明快なフレージングと語詠みが魅力です。モーツァルトのアリアやアンフォーニングされた歌曲を聴くと、彼女の「古典的」な歌い回しがよくわかります。
ワーグナーの抜粋 — ワーグナー役柄の一部や抜粋(例えば『マイスタージンガー』や『ローエングリン』などの女性役に期待される表現)で、ドラマ性の扱い方や発声の持久性が確認できます。
リート・歌曲 — ドイツ・リートを通じて、語詠みやテキスト表現に対する姿勢が見えてきます。レーマンの教育者としての側面が反映された歌唱に注目してください。
録音を深く楽しむための鑑賞ポイント(解説的)
時代背景を知る:当時の演奏実践(テンポ、装飾、語詠み)や舞台慣習を頭に入れると、現在の「標準」との違いがクリアになります。録音そのものを「当時の演技解釈の証言」として聞きましょう。
音質の特徴に慣れる:高域・低域の制約や背景ノイズがあることを踏まえ、歌の「ニュアンス」や「音楽的選択(アゴーギクや語尾処理)」に注目してください。息遣いや語詠みは今も鑑賞上の大きな手がかりになります。
連続して聴く:同じ曲の異録音や、同時代の他歌手の録音と連続して聴くと、レーマンの個性が相対的に際立ちます。声の「色」「発語の習慣」「フレーズの流れ」を比較してみてください。
解説を読む:良質な復刻盤には詳細なブックレット(セッションデータや時代解説、テクニカルノート)がつくことが多く、それを読むことで録音の位置づけがより理解できます。
コレクションの楽しみ方と買いどころのヒント
・まずはアンソロジーやLebendige Vergangenheitのような入門的な復刻盤で代表録音を押さえ、その後にMarstonなどの“完全盤”でセッション単位の録音を補うとよい流れです。
・配信サービスでは音源の断片が散在していることがあるため、まとまったブックレットや解説を重視するならCD復刻盤の購入も検討してください。
・研究目的ならアーカイブ系の一次音源にもあたることをおすすめします(収録年代・マスターの系譜を確認できるため)。
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