Edith Mathisのプロフィールとレパートリー|透明感あるリリック・ソプラノの名演と聴きどころ
Edith Mathis — プロフィールと総覧
Edith Mathis(エディット・マティス)は、スイス出身のリリック・ソプラノ。1938年生まれ(ルツェルン出身)で、チューリッヒなどで音楽を学び、1950〜60年代から国際的なキャリアを築きました。特にモーツァルトのオペラ作品やドイツ語リート、バッハの宗教曲・カンタータで高い評価を受け、「透明感」「自然な表現」「優れたドイツ語発音」によって多くの聴衆と批評家を魅了してきました。
声質と歌唱の特徴
- 透明で伸びやかな声:中音域から高音域にかけての均一性が高く、鋭さや強い重量感に頼らない「しなやかな」発声が特徴です。
- 明晰な発音と語りのようなフレージング:ドイツ語リートやモーツァルト語法での言葉の扱いが巧みで、歌詞の意味やニュアンスが自然に伝わります。
- 音楽的な均整感と柔らかな表現力:過度に装飾的でないが内的な表現に富み、アゴーギクやダイナミクスの制御で物語性を引き出します。
- レパートリー適応力:モーツァルト(オペラ)/バッハ(宗教曲)/シューベルトやシューマンのリートといった多彩なジャンルを自然に行き来できる柔軟さを持っています。
レパートリーの広がりと代表的な作品
Mathisは「モーツァルト歌唱の名手」としてまず名が挙がりますが、それに留まらずリートやバロック声楽曲でも高く評価されました。以下は、彼女の魅力がよく表れるジャンル別の代表的なレパートリーです。
- モーツァルト(オペラ):Pamina(「魔笛」)やSusanna(「フィガロの結婚」)など、自然で歌いやすい表現を生かした役柄が代表的。モーツァルトのアリアや重唱でのセンスが際立ちます。
- ドイツ・リート:シューベルト、シューマン、ブラームスらの歌曲を通して、語りかけるようなフレーズづくりと語彙的表現を発揮します。小品から歌曲集まで、テキストへの配慮が聴きどころです。
- バッハ/バロック宗教曲:カンタータや受難曲、モテットなどでのソロを多数録音。清澄なトーンと明瞭なテキスト発音が宗教作品に適しています。
- 20世紀オペラ・歌曲:伝統的レパートリー中心ながら、時折20世紀作品にも挑み、語り口の柔らかさを現代音楽でも活かしました。
代表盤・おすすめの聴きどころ(入門ガイド)
ここでは「まずこれを聴いてほしい」という観点からのおすすめを挙げます。録音年代は主に1950〜80年代のものが多く、音質は時代に依りますが歌唱の魅力は色あせません。
- モーツァルト:オペラ抜粋/全曲録音(Paminaなど) — モーツァルト歌唱の自然さ、語りのようなフレーズ感を味わえる定番。アリアや重唱でのバランス感が魅力です。
- シューベルト/シューマンのリート集 — 短い歌曲群での表情の細かさ、テキストへの寄り添い方がよくわかります。伴奏との対話も聴きどころ。
- バッハ:カンタータ/受難曲のソロ — 宗教曲での落ち着いた表現と明瞭な語り口が、合唱・管弦楽と調和して際立ちます。
- ライブ録音やコンサート記録 — スタジオ録音より自然で伸びやかな歌を聴けることが多く、舞台での表現力を感じたいときにおすすめです。
解釈の魅力と聴きどころのポイント
- 言葉を大切にする歌い方:単に美声を聴かせるのではなく、語るように言葉を届けるため、歌詞の細部や語尾の処理に注意して聴くと深みが増します。
- フレージングの自然さ:フレーズ終わりの余韻や、フレーズごとの息づかいの処理が実に自然。テンポに頼らない表現が多い点に注目してください。
- ダイナミクスの内面化:大声や派手なクレッシェンドに対する欲求が少なく、内面の変化を微細な音量や色彩で表します。静かな箇所での緊張感に耳を傾けてください。
舞台・録音での活動と評価
Edith Mathisはステージと録音の両方で評価され、多くの音楽祭やオペラハウスに出演しました。録音ではモーツァルト作品、バッハの宗教曲、リート集などが残され、批評家からは「清澄な音色」「言葉の明晰さ」「音楽への誠実さ」といった点を高く評価されました。若手歌手や指揮者にとっても、模範的なモーツァルト/リート解釈の手本となっています。
聴き方のアドバイス — 具体的に何を聴き取るか
- 語尾や子音の処理:ドイツ語のリートを聴く際は、テキストの子音や語尾の処理に注目。意味の提示が如何に音楽と結びつくかが分かります。
- フレーズの呼吸と間合い:短い一息の置き方で感情の切り替えをしていることが多く、そこを聴くと歌の「物語性」が見えてきます。
- 伴奏との会話:伴奏者(ピアノやチェンバーオーケストラ)との呼吸の取り方に注意すると、Mathisのアンサンブル力がよく分かります。
Edith Mathis が現代の聴き手に与えるもの
声の華やかさだけで聴衆を惹きつけるタイプとは異なり、Edith Mathisの魅力は「言葉を伝える力」「音楽の内部から滲む表現力」にあります。モーツァルトやシューベルト、バッハを中心に、テクニックと誠実さを兼ね備えた歌唱は、今日の若い歌い手やリスナーにも学ぶ点が多く、聴き返すほどに新しい発見を与えてくれます。
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参考文献
- Edith Mathis — Wikipedia
- Bach Cantatas Website: Edith Mathis(略歴・録音一覧)
- Edith Mathis — Discogs(ディスコグラフィー)
- Edith Mathis — AllMusic(概説・レビュー)


