Arcturusの前衛ブラックメタルを極める:代表作から初期デモまで、おすすめレコードと聴き方ガイド
はじめに — Arcturusとは何か
ノルウェー発のArcturusは、ブラックメタルの周縁から派生した前衛的/実験的な音響世界で強烈な存在感を放つバンドです。オーケストレーション的な鍵盤アレンジ、演劇的なボーカル、そしてサイケデリックや電子音響を取り込む大胆な作風で、1990年代後半から2000年代にかけて独自の道を切り開きました。本コラムでは、レコードで聴くべきおすすめ作品を深掘りし、それぞれの魅力や聴きどころ、選ぶ際のポイントを解説します。
おすすめレコード一覧(概説)
- Aspera Hiems Symfonia — 初期の凍てつく叙情とシンフォニックな基盤
- La Masquerade Infernale — Arcturusの代表作、演劇的で稀有な傑作
- The Sham Mirrors — サイケデリック/プログレ方面への転向と実験性
- Sideshow Symphonies — より整ったプロダクションとダークな美意識
- 初期デモ/EP(Constellation 等) — 発展の過程を知るための資料的価値
Aspera Hiems Symfonia(おすすめポイント)
特徴:初期の作品ながら、ただのブラックメタルに留まらない、寒冷で叙情的な世界観とシンセを伴う壮麗さが滲み出ています。典型的な疾走パートと劇的なキーボードが交差し、のちの実験的方向性の萌芽を聴くことができます。
聴きどころ:
- 冷たく荘厳なイントロダクションと、曲ごとのドラマティックな構成。
- ヴォーカルの表現幅(ブラックメタル寄りの咆哮と、メロディックなフレーズ)が混在する点。
- 後期作品と聴き比べることで、サウンドの進化が鮮明になる。
購入の目安:初期盤はコレクターズ・アイテム性があるため、音質やプレスの状態をDiscogs等で確認してから選ぶと良いでしょう。
La Masquerade Infernale(おすすめポイント)
特徴:Arcturusを代表する名盤。演劇的(マスカレード的)なアプローチと多彩な編曲が融合し、ブラックメタル寄りの出自を超えた独自の音楽世界が確立されています。メロディ、ハーモニー、そして奇抜なアレンジが高次元で混ざり合う一枚です。
聴きどころ:
- 曲ごとに「演目」が用意されたかのような構成美と劇的転調。
- クリーン/スクリームなど声質のコントラスト、そして時にコーラス的に重なる合唱表現。
- 前衛性と親しみやすさが両立しており、初めてのリスナーにも入りやすい。
代表曲(聴いてほしいトラック):作品全体がコンセプチュアルなのでアルバム通しでの鑑賞を強く推奨しますが、アルバム中の導入的トラックや印象的な曲をピックアップして聴くのも入り口として有効です。
購入の目安:このアルバムは複数のフォーマット(オリジナル盤、リマスター/再発、限定カラー盤など)が存在するため、音質重視ならリマスター盤、コレクション性を重視するなら初回プレスや限定カラーを探すのがおすすめです。
The Sham Mirrors(おすすめポイント)
特徴:ここでバンドはさらにプログレッシヴかつサイバーパンク的/スペーシーな要素を取り込み、ギター・シンセ双方で広がる音像が展開されます。ポストブラック/プログレ金属の側面が強く出た作品で、緻密なアレンジとモダンな音響処理が魅力です。
聴きどころ:
- エレクトロニクスとアナログ楽器の融合による未来的なサウンドスケープ。
- 長尺トラックや複雑な構成が多く、反復して聴くたびに新しい発見がある。
- 歌詞世界やサウンドデザインにSF的モチーフが強い点。
購入の目安:モダンなプロダクションを楽しみたいなら現行プレスやリマスター盤が聴きやすいです。オリジナル盤の雰囲気を重視するコレクターも存在します。
Sideshow Symphonies(おすすめポイント)
特徴:バンドのその時点での総括的な作品。プロダクションが洗練され、よりダークで劇場的な面が強調されています。感情表現の幅が広く、陰鬱さとユーモア、どこかカルト的な美学が混在する作風です。
聴きどころ:
- 楽曲ごとの演出感が強く、アルバムとしての統一感がありながら多様性も維持。
- 歌唱表現や編曲の細かいニュアンスに注目すると、制作の技巧がよく分かる。
- バンドとしての成熟が感じられる一枚で、ライブやコンセプト面での拡張性も伺える。
購入の目安:こちらも複数プレスがありますが、曲のテクスチャをしっかり感じたい場合は質の良い再発(プレスの品質が明示されたもの)を選ぶと安心です。
初期デモ/EP を聴く意味
特徴:デモやEPは、バンドの芽生え/実験段階を追体験できる貴重な資料です。完成度よりもアイデアの萌芽や布石が多く含まれており、後の傑作群がどのように組み立てられていったかが見えます。
聴きどころ:
- 未整理なエネルギーと、後年の作風に繋がる断片的モチーフ。
- 初期メンバーや試みの跡が残り、ファンにはコアな楽しみを提供。
レコード選びの実践アドバイス(作品選定基準)
1) まずは「代表作」を:La Masquerade Infernale はArcturusの魅力を最も端的に伝える名盤なので、初めてレコードで手に入れるならここからが無難です。
2) サウンドの嗜好で分ける:冷たい叙情(Aspera)を好むか、前衛的実験(The Sham Mirrors)を好むかで次の一枚を決めると失敗が少ないです。
3) プレス/音質を確認:中古市場では盤質・ジャケットの保存状態・プレス年が音質に影響します。購入前に写真や出品説明をよく確認してください(詳細はDiscogs等で照合すると安心です)。
4) 限定盤と再発のメリット:限定カラー盤やオリジナル・プレスはコレクション性が高い一方、リマスター/再発は音質やノイズ面で優れていることが多いので、何を重視するかを明確に。
聴き方の提案
- アルバム通しでの鑑賞を基本に。曲ごとのトラックリストは「劇の幕組み」のように設計されていることが多いです。
- 歌詞対訳やライブ映像と併せて聴くと、演劇性や演出の意図が見えてきます。
- 他バンド(Ulver、Emperor、Borknagarなどノルウェイジアン・シーンの周辺)と比べて聴くと、Arcturusの独自性がより際立ちます。
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参考文献
- Arcturus — Wikipedia (English)
- Arcturus — AllMusic
- Arcturus — Discogs (discography & releases)
- Arcturus — Encyclopaedia Metallum


