バーバリー(Burberry)徹底解説|歴史・定番アイテム・ブランド戦略とサステナビリティ
イントロダクション:英国を代表するラグジュアリーブランド「バーバリー」
バーバリー(Burberry)は、英国発のラグジュアリーブランドとして世界的に知られ、トレンチコートやベージュのチェック柄ライニング(通称バーバリーチェック)を象徴とする存在です。本稿では、創業から現代までの歩み、代表的プロダクト、ブランド戦略やデジタル化、サステナビリティに関する取り組みまでを詳しく解説します。
創業と素材革新:トーマス・バーバリーとガバディン
バーバリーは1856年、当時若きテーラーであったトーマス・バーバリー(Thomas Burberry)によってイングランド南部のバシングストークで創業されました。トーマスは耐久性と防水性に優れる織物の研究を続け、1879年に「ガバディン(gabardine)」と呼ばれる撥水性・通気性を兼ね備えた織物を開発しました。ガバディンは当時の重厚な防雨服に比べて軽量で動きやすく、屋外活動や探検用の服装として高く評価されました。こうした素材技術こそがバーバリーの基盤となり、後のアイコニックなコート類へとつながっていきます。
トレンチコートの誕生と軍用への採用
ガバディン素材を用いたコートは第一次世界大戦期に英軍の将校用コートとして採用され、ここから「トレンチコート」が発展しました。バーバリーは機能的なディテール(ショルダーストラップ、エポレット、ダブルブレスト、ベルト、裏地のチェックなど)を備えた設計を行い、戦後も民間向けの定番アウターとして普及しました。トレンチコートはファッション面だけでなく、機能性と歴史的背景を併せ持つアイテムとして今日まで高い評価を受けています。
バーバリーチェックの誕生とブランドアイデンティティ
バーバリーの象徴的要素の一つがベージュを基調とした格子柄のライニング、いわゆる「バーバリーチェック」です。チェック柄は20世紀前半に同社のコートやアクセサリーの裏地として使われるようになり、その外観と結びついてブランドのアイデンティティを確立しました。のちにスカーフやバッグ、洋服のデザインにも積極的に採用され、世界的に認識される模様となっています。
20世紀〜21世紀初頭:成長とブランドの拡張
20世紀後半は事業の拡大によりバーバリーは世界市場へ進出し、衣料品にとどまらずアクセサリー、香水、レザーグッズへと事業領域を拡大しました。一方で、90年代から2000年代にかけてはブランドの乱用や偽物問題、マス市場化によるイメージの希薄化も指摘されました。こうした課題に対して、21世紀に入ってからの経営・クリエイティブ両面での再構築が重要課題となりました。
クリエイティブと経営の再編:ブランドの再定位
2000年代以降、バーバリーはクリエイティブ戦略と経営の刷新を進めます。クリストファー・ベイリー(Christopher Bailey)らの手によってクラシックな英ブランドの伝統を保ちつつ、よりモダンで国際的なデザインに舵を切りました。また、デジタル化や若年層へのアプローチを強化し、ラグジュアリーブランドとしての再評価を促しました。2018年以降もデザイナー交代や経営陣の変化があり、ブランドは常に進化を続けています(代表的な人事としてリカルド・ティッシの参画など)。
デジタル戦略とマーケティングの先駆性
バーバリーはデジタル面での先進性でも知られます。ファッションショーのライブ配信やSNSを活用したキャンペーン、デジタルと実店舗を連携させた顧客体験の設計などを早期から導入しました。2010年代には「see-now-buy-now(ショー直後に販売開始)」を試みるなど、流通や発表の在り方にも挑戦し、ファッション業界の議論を喚起しました。こうした取り組みはブランドの若返りとグローバルな認知拡大に寄与しています。
代表的プロダクトとスタイリングの魅力
バーバリーの代表作はやはりトレンチコートですが、その他にもスカーフやショールに使われるチェック柄、上質なレザーグッズ、香水(フレグランスライン)などが定番です。スタイリング面では、トレンチコートを軸にカジュアルからフォーマルまで幅広く応用できる点が強みです。シンプルなモノトーンコーデにトレンチを羽織るだけでクラシックな英国調の洗練された印象を作れますし、チェックのアクセントを小物で取り入れるのも定番です。
サステナビリティと社会的責任
近年、ファッション業界全体でサステナビリティが重要課題となる中、バーバリーも対応を進めています。ただし、過去には不良在庫の焼却(製品廃棄)を巡る批判が報じられ、その後に企業方針の見直しや透明性向上の取り組みが求められました。現在は素材の調達、製造時の環境負荷低減、製品寿命の延長やリサイクルの促進といった領域で施策を打ち出しており、ブランドとしての社会的責任の強化を図っています。
直面する課題と今後の展望
バーバリーが直面する課題としては、伝統と革新のバランス、世界各地でのブランドポジショニング、偽物対策、そしてサステナビリティ対応の深化が挙げられます。ラグジュアリーマーケットでは顧客の価値観が多様化しており、クラフトマンシップや持続可能性、デジタルでの体験価値がますます重要になります。バーバリーはその英ブランドとしての歴史的強みを活かしつつ、現代の消費者ニーズへどう適応していくかが鍵となるでしょう。
まとめ:ヘリテージを現代に生かすブランド
バーバリーは創業から160年以上にわたり、素材革新(ガバディン)、機能的な衣料(トレンチコート)、そして視認性の高いチェック柄といった要素で独自の位置を築いてきました。近年はデジタル化や新しいクリエイティブの導入、サステナビリティ対応などに取り組み、伝統と現代性を融合させる試みを続けています。今後も“英国的な上質さ”を基盤に、世界のラグジュアリー市場でどのように進化していくかが注目されます。
参考文献
- Encyclopaedia Britannica - Burberry
- Burberry plc - Our heritage
- BBC News - Burberry admits burning unsold clothes worth millions
- The New York Times - Burberry’s See-Now-Buy-Now Gambit
- Wikipedia - Burberry


