サウンドメイキングとは何か サウンドメイキング(Sound Making/Sound Design)は、音楽制作における「音そのもの」を設計し、形作る行為を指します。単に良い音を作るだけでなく、楽曲の感情、空間、質感、アイデンティティを音色や処理で表現するアートかつサイエンスです。シンセシス、サンプリング、エフェクト処理、録音、ミックスの各工程を横断しながら音を作り込んでいきます。
基本原理と聴覚の科学(サイコアコースティクス) サウンドメイキングは聴覚の仕組みを理解することが出発点です。人間の可聴帯域はおよそ20Hz〜20kHzで、低域は体感、超低域は心理的な重さを与えます。マスキング現象により、同一帯域に複数の音があると目立たなくなるため、周波数分配が重要です。また、音の定位は周波数成分、レベル差、到達時間差(ITD)や頭部関連伝達関数(HRTF)に依存します。これらを活用して音の距離感や広がりをデザインします。
サウンドソースの選択と生成方法 アコースティック音源 :生録音は微妙なニュアンスと倍音構造を提供します。マイク選び、マイキング位置、プリの品質が音質を左右します。サンプリング :既存音源を編集・再構成する手法。ループ処理、スライス、タイムストレッチ、ピッチシフト、コンフォルモードなどを駆使します。高品質な元素材が重要です。合成(シンセシス) :基本はオシレーター+フィルター+エンベロープ。主なタイプに減算(subtractive)、加算、FM、ウェーブテーブル、グラニュラー、物理モデリングがあります。それぞれ得意な音色領域が異なります。各種シンセ技術の応用 減算シンセ :オシレーターの倍音をフィルターで削り出す手法。暖かいパッド、ベース、リードに向く。FM(周波数変調) :金属的、アタックの強い音を作れる。微妙なアルゴリズム調整で倍音構成が大きく変わる。ウェーブテーブル :テーブル間をモジュレーションで補間して動的な音色変化を生む。モダンな電子音に最適。グラニュラー :短い粒(グレイン)を再合成してテクスチャやストレッチ音を作る。サウンドスケープ、アンビエンスに有効。処理のチェーンとテクニック 基本的な処理チェーンは、音源→EQ→コンプレッション→彩色系エフェクト(サチュレーション、ディストーション等)→空間系(リバーブ・ディレイ)→マスター処理、です。以下のポイントを意識します。
EQ :不要な帯域のカット(ハイパスで低域を整理する等)でマスキングを防ぐ。ピークや共振を抑え、音色の特徴を強調するブーストは幅広めのQで自然に行うことが多い。コンプレッション :ダイナミクス制御と音色作りに使用。スレッショルド、レシオ、アタック/リリースでトランジェントやサステインを調整する。サイドチェインを使えばキックに合わせたダッキング等が可能。サチュレーション/ディストーション :倍音を付加して存在感を増す。真空管風の温かさやテープのコンプレッションを模した処理が使われる。モジュレーション :コーラス、フランジャー、フェイザーで厚みや動きを付与する。LFOやエンベロープで周期的/非周期的に変化させる。空間系 :リバーブは距離感と空間性を与え、ディレイはリズムを補強する。コンボリューション・リバーブは現実的な空間再現に優れ、アルゴリズミックは創造的な空間表現に向く。ジャンル別サウンドメイキングの要点 ポップ/ロック :明瞭なボーカルとミックスのセンターを確保。ギターやピアノは中域の帯域を整理してボーカルと干渉しないように。EDM/ハウス :キックとベースの関係を厳密に管理。サイドチェインでキックを際立たせ、ベースは低域を確保しつつ中高域で存在感を出す。アンビエント/サウンドアート :テクスチャの生成が中心。グラニュラーや長時間のリバーブ、非標準的なモジュレーションを多用する。映画オーディオ/ゲームサウンド :物語性と空間表現。位置情報(ステレオ/マルチチャネル)やダイナミクスでシーンを演出。レイヤリングとアレンジでの音作り 単一のサウンドで完璧を求めるより、複数レイヤーで役割を分けるのが実務的です。例:キックはサブ低域を担当するレイヤー、アタック感はクリック系(オーディオ)で補う。リードはメインのトーン、サブで倍音や空間を足す。レイヤーごとにEQやステレオ配置を調整して干渉を避けます。
ステレオイメージとモノ互換性 ステレオの広がりを作る一方で、モノラル再生で崩れないことが重要です。低域はモノにまとめ、ステレオの広がりは中高域で演出するのが基本。後ろに置く要素はリバーブや遅延で広げ、センターの重要要素(キック、ベース、ボーカル)は幅を抑えます。
ミックスでの周波数管理(周波数バスケット) ミックス時には「周波数スロット」を意識します。低域(20–120Hz)、低中域(120–400Hz)、中域(400Hz–2kHz)、高域(2k–8kHz)、超高域(8k–20kHz)を意図的に分配し、各楽器の主要帯域を決めます。これによりマスキングを減らし、各パートの輪郭を保てます。
録音とルームの影響 録音段階での品質が後処理の負担を大きく左右します。良いマイク、適切なゲインステージング、ルームチューニング(音響吸音・拡散)を整えると、不要な補正が減り自然な音作りが可能になります。近接効果、反射、残響時間(RT60)の管理が重要です。
マスタリングとラウドネス管理 マスタリングはトラック群を通して音質を均質化し、配信フォーマットに合わせたラウドネス(LUFS)に調整する工程です。過度なラウドネス追求はダイナミクスを失うため、ジャンルと配信先(ストリーミング、CD、放送)に応じたターゲット(例:-14 LUFS for streaming)を設定します。リミッティング、マルチバンド処理、ステレオイメージ調整を最小限の透明性で行うことが望ましいです。
実践的ワークフローと制作効率化 テンプレートを用意し、よく使う処理チェーンやトラック構成を即座に呼び出せるようにする。 プリセットは出発点として使い、必ず耳で微調整する。プリセットそのままは陥りやすいワナ。 リファレンストラックを常時比較し、スペクトルとラウドネスの差をチェックする。 バウンスとA/Bテストを繰り返し、時間をおいて聴くことで耳の慣れを防ぐ。 オートメーションを活用して曲のダイナミックと表情を作る。 よく使われるツールとプラグイン(代表例) 使用するツールは多岐にわたりますが、業界で広く用いられるものとしてシンセ(Serum、Massive、Omnisphere、Pigments)、エフェクト(FabFilter Pro-Q、Valhalla Reverb、SoundToysプラグイン群)、マスタリング(iZotope Ozone)、ミキシング系(Waves SSL系、UAD)などが挙げられます。どれを使うかよりも、ツールの特性を理解し適切に使うことが重要です。
学びと習得のための練習課題 同じメロディを3種類の音色(アコースティック、減算シンセ、FM)で作り比べる。 一つのキックを3レイヤー化してサブ、アタック、ボディを分担させる。 リファレンストラックを解析(スペクトラム、ダイナミクス)して自作トラックに適用する。 注意点と落とし穴 過度な処理は音の原型を壊すことがあります。過度なEQやリバーブ、過度のラウドネス化は混濁を生むため、必要最小限の介入を心がけてください。また、プラグインのサウンドに慣れすぎると環境依存の音作りになりやすいので、複数のスピーカーやヘッドフォンでチェックすることが不可欠です。
制作の心理とクリエイティビティ維持 技術ばかりに偏ると表現がおざなりになります。音作りは技術と感性の両輪が必要です。制作の初期段階ではアイデアのスケッチを優先し、最終段階で細部に磨きをかけるワークフローが効率的です。休息をとり、客観的に聴ける時間を設けましょう。
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