トゥルーバイパス徹底解説:音色を守るか否か、仕組みと実践ガイド

トゥルーバイパスとは何か

トゥルーバイパス(true bypass)は、エフェクターがオフのときに入出力を回路の外側で直結し、エフェクト回路が信号経路に一切干渉しないようにするスイッチング方式を指します。多くのギター/ベース用エフェクターで採用され、プレイヤーがエフェクトをオフにした際に“素の”楽器の音色を維持したい場合に重要視されます。

仕組み(電気的観点)

トゥルーバイパス実現の基本は、スイッチが回路を物理的に切り替え、信号がエフェクト回路を迂回するようにすることです。典型的には入力(IN)→出力(OUT)を直接接続する導通経路を持ち、エフェクトがオンのときのみ入力が回路に送られます。

実装上よく使われるスイッチは3PDT(トリプルポール・ダブルスロー)や2回路のDPDTで、LED表示を伴う場合は3PDTでLEDと回路切り替えを同時に制御するのが一般的です。1PDTは単純な切替のみ可能ですが、LEDを制御する追加配線が必要なため、広くは3PDTが採用されます。

代表的なスイッチと実装方式

  • 3PDTメカニカルスイッチ:信頼性が高くDIYでの採用が多い。LED制御も同時に行える。
  • リレー(ラッチング/非ラッチング):無音で切替でき、遠隔スイッチングが可能。ただし非ラッチングは駆動電力を消費する。
  • ソフトスイッチ/MOSFET:ポップノイズを抑える回路(ミュート)を併用しやすい。設計が複雑。

トゥルーバイパスの長所と短所

長所:

  • エフェクトOFF時に回路が信号に介入しないため、理論上は音色の劣化がない。
  • 単純な回路で遅延や色付けがない。

短所:

  • パッチケーブルや長いケーブルを多数接続した際、ケーブルの容量(キャパシタンス)により高域が削られる(ハイ落ち)。これは複数のトゥルーバイパス機器を直列にしたときに顕著になる。
  • 一部のヴィンテージ系ファズやピッキングニュアンスに依存する機器は高入力インピーダンスを必要とするため、バッファの有無で挙動が変わる。

バッファ(Buffered Bypass)との比較

バッファは入力で高インピーダンス(例:数百kΩ〜1MΩ以上)を受け、出力で低インピーダンス(数Ω〜数百Ω)に変換します。これにより長いケーブルや多数のペダルでも高域のロスを防げます。バッファ付きのバイパス(通称「バッファバイパス」)は、エフェクトOFF時にバッファ回路を信号経路に残すことでケーブル容量の影響を抑えます。

要点:

  • 真の“無色”とは異なり、バッファも設計次第で音色に影響を与える(等化や位相特性)。
  • 一般的な推奨:ギター→長いケーブルや複数ペダルがある構成には、チェーンの先頭(ギター寄り)にバッファを置くと効果的。

なぜ複数のトゥルーバイパス機器がハイ落ちを引き起こすのか

受動的なギターは高インピーダンス出力で、接続されたケーブルの容量と合わせてRC(抵抗-容量)フィルタを形成します。複数のペダルがあると各ペダルの入力ジャックや配線の寄生容量が積み重なり、結果として高域が失われやすくなります。トゥルーバイパス自体は回路を切り離しますが、物理的に存在するケーブルやジャックの容量は残ります。

実践的な配線・運用のベストプラクティス

  • ギターとペダルボード間のケーブルはできるだけ短くする(特に最初の接続)。
  • チェーンの先頭にバッファを置く(アンプのインプットが高インピーダンスなら必須ではないが長ケーブル対策になる)。
  • ヴィンテージファズなどはバッファを回避するか、バッファを外せるループを用意する。
  • パッチケーブルは短く高品質なものを使用し、不要な接続を減らす。
  • 複数のトゥルーバイパス機器を直列に使う場合、トゥルーバイパスだけでは高域維持が難しいため、ボード全体に1〜2個のバッファ配置を検討する。

スイッチングノイズ(ポップ音)と対策

トゥルーバイパスの切替時にポップやクリックが発生する主な原因は、回路内のDCバイアスやコンデンサに蓄えられた電荷が切替時に放出されることです。対策としては:

  • スイッチング前にミュート回路を挟む(ソフトスイッチ、ミュートトランジスタ)。
  • ラッチングリレーやソリッドステートリレーを使うと機械的接点のチャタリングやノイズを低減できる。
  • 電源設計でオンオフ時のポップを最小化する。例えば入力側のDCブロッキングや、電源オン時の順序を制御する回路。

改造や自作での注意点

トゥルーバイパス化改造は一般的ですが、注意が必要です。主なポイント:

  • LEDやDCジャックの配線、バッテリースイッチ機能などを含めた3PDT配線図を正確に理解すること。
  • 一部のエフェクターは設計上、真に回路を切り離すことができない(例:入力保護やバイアス回路が常に接続されている)。その場合“表面上の”トゥルーバイパス化が必ずしも音質改善につながらない。
  • グラウンドループやハムの増加を招く可能性があるため、接地の取り回しに注意する。
  • 内部のコンデンサやトリマーを扱う際は放電に注意し、安全に作業する。無理に分解すると保証が無効になる場合あり。

どんな場面でトゥルーバイパスが有利か

トゥルーバイパスは、単体のミニマルなエフェクターを使用し、エフェクトOFF時にはギター本来の音を保ちたいプレイヤーに向いています。ペダルボードが小規模で、ケーブル長も短く抑えられる環境ではトゥルーバイパスの利点が活きます。

どんな場面でバッファの方が良いか

大規模なペダルボードや長いケーブルを使う場合、あるいは機材を頻繁に切り替えるライブ環境ではバッファを導入する方が安定した高域特性と信号レベルを保てます。バッファは単に「色を付けるもの」ではなく、設計によっては極めて透明に動作するものもあります。

まとめ:選択基準と運用のコツ

・小規模ボードで純粋な「オフ時の素の音」を重視するならトゥルーバイパスを選ぶ。
・多数のペダルや長距離配線がある場合は、少なくとも1つのバッファをチェーンの先頭に置く(もしくは高品質なバッファ機能付きパワーサプライ/エフェクトループを利用)。
・古いファズ等の特殊な機器はバッファの介入で挙動が変わる場合があるため、個別に動作確認する。
・静音スイッチング(リレーやソフトスイッチ)を導入すればポップの問題を抑えられる。

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参考文献