20世紀フォックスの歴史と遺産:ロゴ、名作、そしてディズニー買収まで

20世紀フォックスとは

20世紀フォックス(Twentieth Century Fox)は、20世紀におけるハリウッドの主要メジャー映画スタジオの一つとして長く存在感を放ってきました。創業以来、名作映画や大作の配給・製作を手がけ、特徴的なロゴとファンファーレは映画ファンに広く知られています。2019年の資産売却を経て社名や組織は変化しましたが、その歴史と遺産は映画史の重要な一部です。

創立の背景と初期の歴史(1915〜1935)

20世紀フォックスのルーツは二つの会社に分かれます。ひとつは映画製作会社として1915年にウィリアム・フォックスが創設したフォックス・フィルム(Fox Film Corporation)、もうひとつは1933年にジョセフ・シェンクとダリル・F・ザナックらが設立したツウェンティース・センチュリー・ピクチャーズ(Twentieth Century Pictures)です。経営難にあったフォックス・フィルムと、製作力を持つツウェンティース・センチュリーが合併して1935年にツウェンティース・センチュリー・フォックス(Twentieth Century-Fox Film Corporation)が誕生しました。

黄金期と名作群(1930〜1960年代)

合併後、ダリル・F・ザナックはスタジオの製作部門を率い、演劇的で大作志向のラインナップを進めました。1940年代から1950年代にかけては、階級や社会問題を扱った重厚なドラマや、ミュージカルなど多彩なジャンルで名作を世に出しました。

  • 代表作の例としては、社会派の傑作や大規模ミュージカルなどが含まれます(年代を通じて多数の名作を制作/配給)。

ブロックバスターの時代とフランチャイズ展開(1970年代〜2000年代)

1970年代以降、20世紀フォックスは大規模な興行作品の配給で世界的な地位を確立しました。特に1977年の『スター・ウォーズ』第1作(現行のナンバリングではエピソード4)はルーカスフィルム製作を配給したことで大ヒットとなり、以後のフランチャイズ商法の先駆けのひとつとなりました。また、1979年の『エイリアン』や、1980〜90年代のアクション映画・コメディなど、多様なヒット作を持ちます。

2000年代には、ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』シリーズ(第1作は2009年)が記録的な大ヒットとなり、興行収入で世界最高記録を樹立しました。こうした大作は、スタジオの技術力とマーケティング力を象徴しています。

ロゴとファンファーレの歴史

20世紀フォックスの金字塔のようなロゴは、巨大な3段の「20th CENTURY FOX」文字がライトで照らされるデザインで知られます。このビジュアルとともに使われるファンファーレは、映画音楽界の巨匠アルフレッド・ニューマンが1930年代に作曲したものが基になっており、映画の始まりを告げる象徴的な音として定着しました。長年にわたりロゴやファンファーレは細部のリファインを経ながらも基本的なイメージは維持され、観客の期待感を高める役割を果たしました。

企業変遷とメディアグループ化(1980年代〜2010年代)

20世紀フォックスは、1985年にルパート・マードック率いるニューズ・コーポレーションに買収され、その後は大手メディアグループの一員としてテレビ部門やケーブル、衛星などを含む総合的なエンターテインメント企業の中核となりました。2013年にはニューズ・コーポレーションが事業再編を行い、映画・テレビ部門は21世紀フォックス(21st Century Fox)としてまとめられました。

ディズニーによる買収と社名変更(2017〜2020)

2017年、ウォルト・ディズニー・カンパニーが21世紀フォックスの主要資産を買収する意向を示し、その後の交渉と規制当局の承認を経て、2019年3月に約713億ドル(発表ベース)で合意・クロージングが行われました。買収対象には20世紀フォックスの映画スタジオ、ケーブルネットワークの一部、海外資産などが含まれましたが、FOXブランドを冠する放送事業やニュース部門(Fox Broadcasting Company、Fox Newsなど)は分割され、フォックス・コーポレーションとして残留しました。

ディズニーは買収後、2020年1月に映画スタジオの名称を「20th Century Studios」(20世紀スタジオ)に、アートハウス部門の「Fox Searchlight Pictures」は「Searchlight Pictures」にそれぞれ改称しました。これは「Fox」という名称をニュース系資産と切り離すための措置であり、ブランドの歴史的遺産は継承しつつも名称上の区別を明確にしました。

テレビ事業と子会社

映画部門のほか、20世紀フォックスにはテレビ制作部門もありました。20th Televisionなどの名で多くのテレビシリーズを制作・配信し、米国の放送・ケーブル市場で影響力を持ちました。これらのテレビ制作資産も、買収を通じてディズニーの傘下に入るか、分割される形で整理されました。

文化的影響と遺産

20世紀フォックスは、単なる映画配給会社にとどまらず、ハリウッドのイメージ作りに大きな役割を果たしました。ロゴとファンファーレは映画文化に深く刻まれ、スタジオが手がけた作品群はジャンルの幅広さと商業的成功を示します。スター発掘、技術革新(特殊効果、シネマスコープなどの視覚フォーマット採用)でも影響力を持ち、映画産業の発展に寄与しました。

保存とアーカイブ、スタジオ施設

ラ・シエネガ・ブールバード付近にあるスタジオ・ロットや撮影施設は歴史的価値が高く、同社が制作してきた数多くの作品の撮影が行われました。こうした施設やフィルム・アーカイブは、映画史研究や修復プロジェクトにおいても重要です。買収後も作品の管理やアーカイブ保存は継続されており、旧作の再リリースやストリーミング配信に向けた整備が進められています。

現在の状況と今後の展望

社名変更後の20th Century Studiosは、ディズニーのラインナップの一部として、従来のブランド資産を活かしつつ新作の製作・配給を続けています。ディズニーとの組み合わせにより、大作のマーケティングやグローバル配信の戦略が強化される一方で、かつての独立系スタジオとしての立ち位置は変化しました。今後はストリーミング時代に適応した作品制作、既存IPの活用、新技術の導入などが重要な課題となるでしょう。

まとめ

20世紀フォックスは、そのロゴとファンファーレが象徴するように、長年にわたりハリウッドと世界の映画文化に影響を与えてきました。合併と革新、数々の名作と商業的大ヒットを通じて築かれた遺産は、社名変更や企業再編があっても映画史の重要な一章として残ります。ディズニーによる買収後も、20世紀フォックス由来の作品とブランド要素は世界中の観客に届けられ続けています。

参考文献