メジャーセブンスコードの理論と実践 — 音楽制作で使いこなすための完全ガイド

メジャーセブンスコードとは

メジャーセブンスコードは、トライアド(長三和音)に長7度の音を重ねた四和音で、スケール上の度数で表すと1–3–5–7から成ります。たとえばCメジャーセブンス(Cmaj7)はC(根音)、E(長3度)、G(完全5度)、B(長7度)の音を含みます。音程で見ると、根音から長3度は4半音、完全5度は7半音、長7度は11半音の位置にあります。

表記と記号

楽譜やコード譜での表記は複数あります。代表的なものは以下です。

  • Cmaj7, CM7, CΔ7(Δはジャズ表記でよく使われる)
  • 単にCΔと表記して長7度を示す場合もある
  • 注意点としてC7はドミナントセブンス(長3度+短7度)を意味し、メジャーセブンスとは異なる

サウンドの特徴と感覚的な役割

メジャーセブンスコードは「柔らかく、夢見るような響き」「穏やかな煌めき」と形容されることが多いです。長7度の音が根音に近いため(1と7が半音差に近い音の関係となることもあり)、和音全体には軽い緊張感を残しつつ安定感を併せ持ちます。ジャズやポップスでは、主和音(トニック)に色彩を与えるコードとして頻繁に使われます。

歴史的背景とジャンル別の使われ方

クラシックの厳格な和声法では、長7度を同時に鳴らす合成音としての使用は比較的少なく、7度音程は線的(メロディック)な処理が多かったのに対し、20世紀以降の印象派、ジャズ、ポピュラー音楽では和音としてのメジャーセブンスが積極的に採用されるようになりました。ドビュッシーやラヴェルに代表される印象派の和声感覚、続くジャズのハーモニーの発展により、和音色として定着しました。

機能と進行の実践例

ハーモニーの機能的には、メジャーセブンスはトニック(Imaj7)やサブドミナント(IVmaj7)でよく用いられます。ジャズの典型的な進行では、IIm7–V7–Imaj7という形が標準で、Imaj7が解決先となる例が多いです。ポップスではImaj7からIVmaj7やvi7へゆったり移ることで、温かみのある進行が生まれます。

構成音とベースでの配置(転回)

四和音であるため、以下の転回が可能です。

  • 根音配置(root position): 1–3–5–7
  • 第1転回(1st inversion): 3–5–7–1
  • 第2転回(2nd inversion): 5–7–1–3
  • 第3転回(3rd inversion): 7–1–3–5

転回を使うとベースラインや内声部の動きに応じた自然な声の動きを作れます。たとえばV7からImaj7へ行く際に、Imaj7の第3転回(7がベース)を使うと leading tone(導音)を低めに配置して滑らかな解決が得られます。

和声分析と異名同音(半音関係)の扱い

メジャーセブンスの長7度は11半音であり、短9度の異名同音関係となることがあります。臨時記号や調性によって表記が変わるため、和声分析では文脈に応じた音名表記を行います。機能和声においては、長7度はしばしばトニックの色彩音として扱われ、ドミナントの短7度(dominant 7)とは明確に区別されます。

テンションと拡張

メジャーセブンスコードは他のテンション(9度、11度、13度)を付加して拡張されることが多いです。代表的な拡張例は以下です。

  • maj9(1–3–5–7–9): 優雅で広がりのある響き
  • maj11(1–3–5–7–9–11): 11度が自然に入ると時に濁りをもたらすため扱いに注意が必要
  • maj13(1–3–5–7–9–13): ボイシングにより上声部の響きを整える

ジャズでは9thや13thを加えることで豊かなハーモニーが得られますが、11thは#11として用いられることが一般的で、リディアン的な響きを生む場合があります。

実践的なボイシング(ピアノ・ギター)とコンピング

ピアノでは、3度と7度を中声部に置き、10度や13度で広げると透明感のあるサウンドになります。ジャズのコンピングでは、トップノートに9度や13度を置き、下声でルートや5度を省略する「シェル」ヴォイシング(3rdと7th中心)もよく使われます。ギターでは開放弦を利用したCmaj7(x32000)などが定番で、簡単にメジャーセブンスの色を出せます。

ボイシングの例(ピアノ)

  • オープンボイシング: 左手のルートと右手の3–7–10(9)で空間を作る
  • クローズボイシング: 1–3–5–7 を近接させて密度の高い響き
  • シェルボイシング: 3と7を中心にルートはベースへ任せる(クリーンな色彩)

ヴォイスリーディングと解決

和声の機能と解決感を演出するにはヴォイスリーディングが重要です。一般にドミナント側からの解決では、導音(7度)が主音へ向かい、Vの3度がIの3度へ滑らかに移るようにすると自然です。Imaj7内では、7度を保留して次のコードに向けてテンションとして活かす手法も多用されます。

作曲・編曲への応用例

・イントロや間奏でメジャーセブンスを多用すると、楽曲全体に穏やかな印象を与えられます。
・コード進行のトップにImaj7を置き、サビでIVやVIへ展開することでドラマティックな対比が作れます。
・モーダルな雰囲気(リディアン)を出したい場合は、Imaj7に#11を加えると効果的です。

練習課題と耳のトレーニング

1. メジャーセブンスのアルペジオを各キーで弾く(左右別に10回ずつ)。
2. ii–V–I の解決をImaj7まで必ず含めた形で演奏し、V7からImaj7にかけての7度の動きを耳で追う。
3. A/Bスペース(ボイシングの違い)で同一コードの響きの差を比較し、自分の好みを記録する。

よくある誤解と注意点

・C7(ドミナント7)とCmaj7(メジャー7)は根本的に異なるコードであることを混同しない。
・11度の追加は必ずしも美しく響くわけではなく、ボイシング次第で不協和に聞こえる場合がある。
・クラシック的な厳密な機能和声では、同時的な長7度の扱いが制約されるため、ジャンルごとの慣習を理解して使い分ける。

実例と参考的楽曲

ジャズのスタンダードやモダンポップスで多用されるため、多くの楽曲でメジャーセブンスを聴くことができます。スタンダード・ジャズのバラード(例: "Misty" など)や、近代ポップ・ロックのバラードでもしばしば登場します。

まとめ

メジャーセブンスコードは、豊かな色彩と程よい緊張感を同時に持つため、作曲・編曲・演奏において非常に有用な和音です。ジャンルや文脈によって使い方が変わるため、ボイシング、転回、テンションの扱いを実践的に身につけることが重要です。耳での識別、ハンズオンでの反復練習、実曲分析を組み合わせることで、自分の音楽表現に自在に取り入れられるようになります。

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参考文献