LFO入門と応用:音楽制作で使いこなすための総合ガイド
はじめに — LFOとは何か
LFO(Low Frequency Oscillator、低周波オシレーター)は、音そのものを直接発音するオシレーターとは異なり、主に他のパラメータを周期的に変化させるために用いられる信号源です。LFOは通常可聴域よりも低い周波数(約0.1Hz〜20Hz前後)で動作しますが、用途に応じてより遅いモジュレーションやオーディオ帯域での変調(オーディオレート)にも使われます。音楽制作においてはビブラート、トレモロ、フィルターの周期変化、パンの自動移動、リズミックなゲーティングなど、幅広い表現を可能にします。
LFOの基本パラメータ
レート(速度): 周波数を指定します。Hz表示のほか、ホストDAWのテンポに同期して分数(1/4、1/8など)で指定できることが多いです。
波形(ウェーブ形状): サイン、三角、ノコギリ、矩形(パルス)、ステップ(サンプル&ホールド)など。波形は変化の質を決めます。
デプス(強さ): モジュレーションの振幅。どれだけパラメータを動かすかを設定します。一般にビット深度やスイングのような量を調整するポイントです。
オフセット/バイアス: 出力を中心からずらす(ユニポーラー化)ことで、片側だけを変化させる用途に使えます。
フェーズ: 波形の開始位置。ステレオ的に左右で位相差を設定したり、複数LFOの位相関係をコントロールできます。
リトリガ/フリーラン: キーオンごとに波形を再スタートするか、継続的に走らせるか。音色ごとの挙動に影響します。
代表的な波形とその用途
サイン波: 滑らかで自然な揺れ。ヴィブラートや穏やかなフィルター変化に最適。
三角波: サインに似るが直線的。ゆっくりしたモジュレーションで均等な上昇・下降を作る。
ノコギリ/逆ノコギリ: 一方向に滑らかに移動して急激に戻る。フィルターブリープやワウ風の動き。
矩形/パルス: オン・オフがはっきりした結果に。トレモロ、ゲーティング、ディジタルなエフェクト。
サンプル&ホールド(ランダム): 値がランダムに保持される。シーケンス的な変化や不規則なモジュレーション。
ステップシーケンス: 値の段階的変化。ポリリズムや鍵盤トラッキングと組み合わせるとシーケンス的表現が可能。
LFOのモジュレーション先(実用例)
ピッチ: 低速で使うとビブラート、高速で音声帯にするとFM様のディストーションやパルス位相変調的効果。
アンプ(音量): トレモロ。リズミックなゲーティングでダンスミュージックのグルーヴを生む。
フィルター・カットオフ: 自然な動きで音色の温度感を変化。テンポ同期させればビルドやリズムの一部になる。
パン: 自動パンやステレオモーション。位相差を付ければ広がりを演出できる。
エフェクトパラメータ: ディレイのフィードバックやウェット量、リバーブのサイズなどを周期的に動かして動的な空間表現。
エンベロープとの違いと使い分け
エンベロープは時間軸上の一方向的な変化(アタック→減衰→サステイン→リリース)を扱い、主に音の立ち上がりや減衰を制御します。LFOは周期的で継続的な変化を与えるため、両者を組み合わせることで、音の一貫性を保ちながら動きを付けることができます。例えば、エンベロープでピークを作り、LFOでそのピークに揺らぎを与える、といった使い方です。
テンポ同期、位相、ポリモジュレーション
DAWにおけるLFOはテンポに同期できることが多く、これはリズムに沿った安定した動きを作る際に便利です。一方でフリーラン(非同期)にするとより有機的で演奏に合わせた揺らぎが得られます。位相はステレオイメージに影響し、左右で30〜180度ずらすだけで広がりや動きが得られます。モジュレーションマトリクスを持つシンセでは、複数LFOを組み合わせて複雑な動きを生成する“LFOによるLFO変調(シャッフル、スケールの変化)”も可能です。
オーディオレートLFOとその注意点
LFOを高速に上げると可聴域に入り、音色そのものに変化を与えることができます(リングモジュレーションやFM的効果)。これをオーディオレート変調と呼びます。ただし、ディジタル環境ではエイリアシング(高周波成分の折り返し)に注意が必要です。高品質なシンセやプラグインはアンチエイリアス処理や帯域制限を行う場合がありますが、意図的に粗いキャラクターを求める場面ではあえてエイリアシングを利用することもあります。
実装上のポイント(DAW・プラグイン・モジュラー)
リトリガの仕様を確認: キーオンでリセットされる場合とフリーランで持続する場合で音色が大きく変わります。
ビナリティ(バイポーラ/ユニポーラ): 出力が中心を跨いで上下するか、0から正方向のみかで使い道が変わります。フィルターのカットオフに直接かける際はユニポーラの方が扱いやすいことがあります。
スムージング(カーブシェイプ): 急激な変化はクリックノイズや不自然さを生むため、カーブを調整できると便利です。
複数段のモジュレーション: LFOのLFO(低速のLFOで別のLFOのレートやデプスを制御)で有機的で長周期の変化を作るテクニック。
クリエイティブな応用例とプリセット目安
パッドの幅を広げる: 左右で逆位相のゆっくりしたサイン波を使い、フェーズをずらしてステレオ感を増す。デプスは浅め(10〜30%)から調整。
ベースにグルーヴを与える: フィルターカットオフをテンポ同期の矩形或いはノコギリで動かし、16分音符や8分音符に合わせる。ドラムと同期させてグルーヴを一致させる。
リズミックゲーティング: 矩形波+急峻なカーブでトレモロを作り、サイドチェインの代替や併用でリズムの抜けを作る。
アンビエントの動き: サンプル&ホールドを超低速で使い、数十秒〜数分の間隔で値が変化するようにして、進行感のあるパッドを作る。
オートパン/コーラス的効果: 高速で浅いピッチや位相の揺らぎをかけるとコーラスやビブラートに近い効果が得られる。
モジュレーションワークフローと注意点
複数のモジュレーションを使う際は、どのLFOが最終的な音にどのように寄与しているかを可視化/聴覚的に把握することが重要です。モジュレーションの深さを過剰にすると音が不安定になったり、ミックスで埋もれる原因になります。まずはデプスを低めに設定し、徐々に上げていくのが安全です。また、DAWのオートメーションとLFOの使い分けも重要で、LFOは周期的な反復動作に、オートメーションは非周期的で一度きりの変化に適しています。
ハードウェア/ソフトウェアの事例
モジュラーシンセ(CV): LFOはCV信号としてほぼ無限にルーティングが可能。位相・波形・スロープを精密にコントロールできます。
ソフトシンセ: Serum、Massive、Phase Plantなどは複数のLFOとテンポ同期や波形モーフィング機能を持ち、複雑な動作をプログラムできます。
専用プラグイン: LFOToolのようにLFOをエフェクトチェーンで使いやすくしたツールもあります。サイドチェイン代替や細かな形状編集が可能です。
まとめ — LFOを使いこなすためのチェックリスト
目的をはっきりさせる(リズム、空間、揺らぎ、テクスチャ)。
レートはテンポ同期とフリーランで試してみる。
波形ごとの性質を理解して用途に合わせる(サイン=自然、矩形=切れ味、S&H=ランダム)。
デプスは少なめから増やす。過剰な変調はミックスで問題に。
複数LFOを重ねるときは位相とリトリガの挙動を確認する。
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