Tannoy(タンノイ)を深掘り:デュアルコンセントリックの歴史・音響原理・使いこなしガイド
概要
Tannoy(タンノイ)は、英国発祥のスピーカーブランドで、特に「デュアルコンセントリック(Dual Concentric)」と呼ばれる同軸型ドライバーで世界的に知られています。放送・録音現場や劇場、コンサートホール、そしてオーディオ愛好家のリスニングルームまで、幅広い用途に採用されてきた歴史があり、指向性の整った音場再現や位相整合性を重視する設計思想が特徴です。本稿では歴史的背景、技術の中身、音響特性、実際の設置や運用・選び方まで、できる限り詳しく解説します。
歴史と背景
Tannoyは20世紀前半に英国で創業し、公衆アドレスや放送用スピーカーの分野で成長しました。ブランド名はやがて一般名詞化するほど普及し、特に第二次世界大戦後から放送局や映画館で広く使われたことが、今日のプロフェッショナル評価につながっています。戦後に確立された同軸(コンセントリック)ドライバーの採用と改良により、Tannoyは“音の真ん中に高域を置く”という独自アプローチを確立しました(詳しい沿革は参考文献を参照してください)。
デュアルコンセントリック(Dual Concentric)とは何か
デュアルコンセントリックは、ウーファーの磁気中心または音響中心に高域ユニットを配置する“同軸”の一種です。ポイントソース(点音源)に近い放射を実現することで、リスニングポイントでの位相整合やイメージング(音源定位)を改善します。具体的な利点としては次の点が挙げられます。
- 位相特性の改善:低域と高域の放射中心が一致するため、クロスオーバー周波数付近での位相ズレや位相補間の問題が起きにくい。
- 優れたステレオイメージ:両チャンネルの中央定位が安定し、ボーカルやソロ楽器のフォーカス感が高まる。
- 一定の指向性:周波数ごとの放射中心の変化が小さく、部屋による影響が比較的一貫する。
ただし同軸にも課題はあり、高域をウーファーの中央に置くことで回折や干渉が生じやすく、設計と高次回折対策(位相プラグやホーン処理など)が重要になります。Tannoyはこれらの課題を独自のフェイズプラグ設計やホーン形状で解決してきました。
設計上のポイントと振動学的配慮
Tannoyの同軸ドライバーは、単にツイーターをウーファーの中心に置く“同軸”とは一線を画す細かな設計が施されています。たとえば:
- 位相プラグとホーン形状:高域の波面を整え、ウーファコーンやセンター部からの干渉を低減する。
- 磁気回路の最適化:ツイーターとウーファーの相互作用を最小化して高出力時の歪みを抑える。
- 振動対策(キャビネット):内部定在波の管理、補強リブや吸音材の配置、ポート設計などで低域のコントロールを行う。
これらの要素が積み重なり、Tannoyならではの「密度感ある中低域」と「繊細な高域のディテール」が同居する音作りを実現します。
音響特性と実際の聴感
実聴での特徴を整理すると以下の点がよく挙げられます。
- 定位の明瞭さ:音像の芯がはっきりしており、ボーカルやピアノの前後感が掴みやすい。
- 広がりと奥行き:ポイントソース的な放射によりホールトーンの再現が自然に感じられる。
- 低域の質感:密度感ある低域の表現が得意。ただしキャビネット容量やポート設計に依存し、機種ごとに重心の傾向は異なる。
- 高域の自然さ:位相整合が良いため、高域の歪感が少なく、楽器の倍音構造が明瞭に聞こえる。
測定値上ではオン軸/オフ軸の一貫性が評価されることが多く、部屋の影響を受けにくい利点がある一方、リスニングポジション外での周波数特性の変化を完全に打ち消せるわけではありません。実際の鳴りは設置環境(壁との距離、床、ルームアコースティック)にかなり左右されます。
用途別の向き不向き
Tannoyのスピーカーは次のような用途で特に力を発揮します。
- スタジオモニター:位相整合と定位の明瞭さからミックスやマスタリングで信頼できる参照になる。
- リスニングルーム:音楽の定位感や奥行きを楽しみたいオーディオファンに適する。
- PA/劇場用途:広い空間での音のまとまりや語音明瞭度が求められる場で有効。
逆に、小さなワンルームで極端に低音の量感だけを求める場合や、超低域のサブウーファー依存のサウンドを好む場合は機種選択やラウドネス設計で調整が必要です。
セッティング、アンプとの相性、ルームチューニング
同軸の利点を引き出すための基本的な注意点:
- 対称配置とリスニング三角形:左右対称に配置し基本的なステレオ三角形を保つ。中央定位が明瞭になる。
- 軸方向と高さの調整:ツイーター位置が耳の高さに来るようにし、リスナーに向けて少しトゥイークすると定位が安定する。
- アンプの余裕:ダイナミックな信号に対してクリアに駆動できるアンプを選ぶ。高能率モデルもあるが、低能率のモデルにはより強力な増幅が望ましい。
- ルームコントロール:低域の定在波対策(ベーストラップ)、初期反射の吸音や拡散で音場の解像度が向上する。
アンプとの相性はニュアンスがあり、Tannoyの暖かみのある中低域は管球アンプとの相性が良いと感じるリスナーもいますが、透明度や瞬発力を重視する場合はソリッドステートのクリーンな出力が合うこともあります。結局は好みとシステム全体のバランスです。
メンテナンスと長期使用のポイント
長く良好な状態で使うための基本:
- ユニットの保護:コーン紙やエッジは経年劣化する。高湿度や直射日光は避ける。
- 端子・接点の確認:アンプ側との接続が緩んでいないか、端子の酸化がないかを定期チェックする。
- キャビネットの扱い:特にヴィンテージ機では内部のダンピング材が劣化している場合があり、必要なら専門店でのリストアを検討する。
モデルと選び方(概要)
Tannoyはプロ用からハイエンドコンシューマーまで幅広いラインナップを展開してきました。選び方の基本は次の通りです。
- 用途を明確にする(モニター、ホームリスニング、PA)
- 部屋の大きさに応じた能率と低域再生の能力を選ぶ
- 視聴で定位感、音色、ダイナミクスを確認すること。デモ曲は普段よく聴く曲やスタジオでのリファレンス曲を使うのが有効
中古市場では年代やモデルでサウンド傾向がかなり異なることがあるため、購入前に必ず聴き比べ・チェックを行ってください。
批評的視点:長所と短所
長所:
- 定位と位相整合に優れ、音場再生が自然。
- プロフェッショナル用途での信頼性と実績。
- 設計上の工夫により、リスナーにストレスの少ない聴感を提供する。
短所・注意点:
- 同軸ゆえの回折や干渉の影響を完全に回避するのは難しい(設計次第)。
- 機種によっては低域の出し方にクセがあり、部屋との相性が顕著に出る。
- ヴィンテージ品はリストアや交換部品の確認が必要。
まとめ:Tannoyの魅力と向き合い方
Tannoyは単なるブランド名以上に「同軸ドライバーを軸に据えた音作り」という明確な思想を持つメーカーです。そのため、定位や音場の自然さ、位相一貫性を重視するリスナーやエンジニアにとって非常に魅力的な選択肢となります。一方で、最適なパフォーマンスを引き出すには適切な設置、アンプ選び、ルームチューニングが不可欠です。購入時は必ず実機での試聴を行い、自分の部屋や音楽趣向に合うかを確認してください。
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