ツイーター徹底解説:種類・構造・選び方とクロスオーバー最適化ガイド
ツイーターとは何か — 高音域を担うドライバーの役割
ツイーター(tweeter)はスピーカーシステムで高音域(主に2kHz以上)を再生する専用ドライバーです。人間の可聴帯域は概ね20Hz〜20kHzとされ、高域側の明瞭さ・定位感・空気感を担うのがツイーターの役割です。家庭用オーディオ、スタジオモニター、PAシステムにおいて、低音を担当するウーファー、中域のミッドレンジと協調して周波数応答をフラットにするために不可欠です。
ツイーターの主な種類
- ドーム型ツイーター(ダイナミック/モービルコイル):最も一般的。布(シルク)、金属(アルミ、チタン)、ベリリウム等の素材がある。特に布ドームは滑らかな高域、金属ドームは切れの良さ、ベリリウムは高剛性で広帯域かつ低歪みが特徴。
- リボンツイーター:薄い金属板を振動させる方式で高感度・低質量のためトランジェント特性に優れる。指向性が狭く、保護(ヘッドルーム)と取り扱いに注意が必要。
- ホーン型ツイーター:コンプレッションドライバーにホーンを組み合わせ、高効率かつ指向性制御が可能。PAやシアター用途で多用される。音圧を稼ぎやすい反面、指向性が強くなる。
- 平面駆動・プラズマ/エレクトロスタティック:McIntosh等のエレクトロスタティックやパネル型は非常に低歪で高解像。エネルギー効率、設置空間、アンプ適合など制約がある。
- ピエゾツイーター:高域専用で安価・耐久性が高いが音色の好みが分かれる。主に簡易スピーカーや補助用途に使われる。
素材・構造が音に与える影響
ツイーターの素材や構造は周波数特性、歪み、指向性、出力(感度)に直接影響します。ドームの質量が小さいほど高域の追従性は良く、共振点や“ブレークアップ”周波数が高い素材(ベリリウム等)はより延びた高域が得られる一方、材料コストが高く扱いが難しい。
磁気回路の設計、ボイスコイル径、ダンピング(フェロフルードの使用など)も重要です。フェロフルードはボイスコイルの冷却とダンピングを兼ね、長時間大音量での安定性を高めます。
クロスオーバー設計と位相整合
ツイーターと他のドライバーを組み合わせる際、クロスオーバーは最も重要な設計要素の一つです。一般的なクロスオーバー周波数はツイーターの下限に合わせて2kHz〜4kHz程度が多く、クロスオーバーのスロープ(12dB/oct、18dB/oct、24dB/octなど)によって位相特性や接続のしやすさが変わります。
位相ずれがあるとオン軸でのピークやディップ、音像ぼやけが生じます。クロスオーバー設計では位相整合(ネットワークの次数、シリーズ/パラレルや時定数の調整)、物理的なツイーターの位置(前進/後退)や遅延(デジタルディレイや時間整合)で最適化します。デジタル信号処理(DSP)を用いると、位相/振幅補正、EQ、リミッティング、ハイパス保護を精密に行えます。
設置・指向性とリスニングルームでの振る舞い
ツイーターは高域の指向性(ビーム特性)が周波数とドライバー径で変化します。小口径ドームは比較的広い拡散、高域での指向性制御が難しい大型ドライバーやホーンでは狭い指向性になります。リスニングポジションにおけるオフ軸応答も音色や残響感に大きく影響します。
設置時の基本:ツイーターは耳の高さに合わせる、リスニングポイントに対してツイーターが直接向くようトーイン(角度)を調整する。ディフューザーや吸音材を適所に用いると反射による高域の硬さや延びの不自然さを改善できます。
測定と評価 — 何をチェックするか
- 周波数特性(オン軸/オフ軸):フラットで滑らかな応答が理想。ピークやディップは位相・共振・クロス設定の警告。
- インピーダンス曲線:共振周波数や負荷特性の把握に有用。ツイーターは一般に高域で安定だが、ネットワークの影響で複雑になる。
- 歪み(THD):特に高レベルでの連続歪み、スプリアスを確認。リボンやベリリウムは低歪特性を持つことが多い。
- 瞬時応答(トランジェント)とワーターフォール(残響):共振の持続や余韻が長いと音が濁る。
選び方の実践的ガイドライン
- 用途を明確にする(リスニング、モニタリング、PA)。PAは高能率ホーン系、近接モニターは滑らかなドーム系が向く。
- クロスオーバーと組み合わせるウーファー/ミッドの特性を考慮。ウーファーと被せる周波数帯域はウーファーのディップやツイーターの下限に依存。
- 部屋の音響特性を考える。狭い部屋や反射が多い部屋では柔らかめの高域を選ぶと有利。
- 測定データ(周波数応答、偏差、指向性プロット)を確認する。メーカーの公称スペックだけでなく実測データが重要。
よくあるトラブルと対策
ツイーターからの「き~ん」という高域ノイズや破損、出力低下は過負荷(クリッピングやDCオフセット)や物理的損傷が原因です。保護回路(パッシブ保護、ポリヒューズ、THDリミッタ)やハイパスフィルターを用いると保護になります。リボンや薄膜系は静電気や物理衝撃に弱いので取り扱い注意。
まとめ — ツイーター選びと最適化のポイント
ツイーターはスピーカーの“顔”であり、音像の明瞭さや空気感を左右します。素材・構造、クロスオーバー、設置、測定の四つをバランス良く最適化することが良い再生への近道です。用途と部屋を踏まえ、測定データを参考にして選択・調整することをおすすめします。
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参考文献
- Tweeter - Wikipedia
- Crossover (audio) - Wikipedia
- SEAS — Speaker Components & Technical Articles
- Scan-Speak — Technical Articles
- Ferrofluid - Wikipedia


