誘導灯・非常照明設備の点検項目を徹底解説|作動原理・点検内容・故障事例を建築設備の専門視点で紹介


誘導灯・非常照明設備とは

誘導灯・非常照明設備は、火災や停電時に避難経路を確保するための設備で、建築基準法および消防法により設置が義務付けられています。

  • 誘導灯:避難口・避難方向を示す
  • 非常照明設備:停電時に照明を確保する

これらは建物利用者の避難行動に直結する生命安全設備のため、定期的な点検が不可欠です。


点検は「機器点検」と「総合点検」の2種類

消防設備点検と同様に、

  • 機器点検(半年に1回)
  • 総合点検(1年に1回)
    の2種類に分けて行います。

1. 誘導灯・非常照明設備の機器点検項目(半年に1回)

機器点検では、外観・状態・簡易動作の確認が中心になります。


① 外観の損傷・汚れ・破損確認

  • 誘導灯パネルのひび割れ
  • 本体の変形・破損
  • 汚れ・焼けによる視認性の低下
  • 埃の付着による放熱不良

誘導灯は視認性が最重要のため、外観不良は早期交換が必要です。


② 常時点灯状態の確認

誘導灯は停電時以外でも常に点灯している必要があります。

点検内容

  • 点灯しているか
  • 点灯色の異常(LED劣化など)
  • チラつき・暗さがないか

③ バッテリーの状態確認

誘導灯・非常照明設備の内部には蓄電池が搭載されています。

点検内容

  • バッテリーの交換期限確認
  • 腐食・液漏れの有無
  • 外観劣化(膨張など)

④ 充電ランプ・異常表示の確認

  • 充電ランプが正しく点灯しているか
  • 自己診断機能の異常表示の確認

⑤ 設置場所の適正確認

  • 避難方向に向いているか
  • 障害物により視認性が阻害されていないか
  • 設置高さが基準通りか

2. 誘導灯・非常照明設備の総合点検項目(1年に1回)

総合点検では、停電を想定し実際に設備を作動させて性能を確認します。


① 非常点灯試験(停電試験)

非常照明設備で最も重要な項目です。

試験内容

  • 停電状態にし、非常点灯へ切り替わるか
  • 規定時間(20分以上など)点灯が継続するか
  • 明るさが基準値を満たすか
  • チラつきや異音が発生しないか

② 誘導灯のバッテリー動作確認

  • 停電時にバッテリー作動で点灯するか
  • 点灯時間が基準値以上か
  • 徐々に暗くなる場合はバッテリー劣化の可能性

③ 制御装置・電源回路の確認

  • 自動切替装置の正常動作
  • 分電盤の回路確認
  • 過電流保護装置の作動チェック

④ LED基板・電源ユニットの確認

LED式誘導灯は長寿命ですが、基板故障が発生する場合があります。

点検内容

  • LEDの不点灯・暗さ
  • 基板の過熱跡
  • 電源ユニットの異常

誘導灯・非常照明設備でよく発生する不具合

現場の点検でよく見られるトラブルは次の通りです。

  • バッテリー劣化による停電時の消灯
  • LED基板の故障
  • パネルの黄ばみ・劣化
  • 常時点灯しない(電源ユニット不良)
  • 埃の蓄積による発熱
  • 施工後の天井改修による誤配線・断線

これらは非常時に機能しない重大な危険を招きます。


点検を怠るリスク

誘導灯・非常照明設備の点検不足は、火災時に以下の深刻なリスクを引き起こします。

  • 避難経路の確保ができず重大事故に発展
  • 消防法・建築基準法違反による行政処分
  • 建物管理者の責任問題
  • 建物の資産価値低下
  • 保険金の減額・不支給リスク

非常照明は“最後の命綱”であり、正常な動作が求められます。


まとめ

誘導灯・非常照明設備は、火災・停電時に人命を守る極めて重要な安全設備です。

  • 機器点検(半年に1回):外観・常時点灯・バッテリー・表示ランプの確認
  • 総合点検(1年に1回):停電試験・バッテリー動作・連動装置の確認

これらの点検を確実に実施することで、災害時に確実に避難経路を確保でき、建物の安全性が大幅に向上します。


参考文献