Loudness Unit(LU)完全ガイド:LUFS/LKFSの仕組みと放送・配信での最適化方法

LU(Loudness Unit)とは何か

LU(Loudness Unit)は「ラウドネス(音の大きさ)」を扱う際に使われる相対的な単位で、1 LU は 1 dB に相当します。LU 自体は単独で絶対値を示すものではなく、基準レベル(たとえば放送での目標値)との差を表現するのに用いられます。絶対的なラウドネスを示す単位としては LUFS(Loudness Units relative to Full Scale)や LKFS(Loudness, K-weighted, relative to Full Scale)があり、LUFS と LKFS は同等の値を指す用語として扱われます(ITU-R BS.1770 系列で定義)。

LUFS / LKFS と LU の関係

LUFS/LKFS はサンプルデータに対する絶対的なラウドネス値(フルスケール基準)で、通常は負の値で表されます(例:-23 LUFS)。LU は相対差分を表す単位です。たとえば、あるトラックが -14 LUFS、別のトラックが -11 LUFS なら後者は前者より 3 LU(=3 dB)大きい、という見方ができます。つまり「LU」は音量差の説明に便利な単位です。

どのように測定されるか(概略)

現代的なラウドネス測定は、ITU-R BS.1770 系列の規格に基づいて行われます。測定には「K-weighting」と呼ばれる周波数重み付けフィルタが適用され、人間の聴感特性を考慮した重み付けがなされます。結果として、短時間〜長時間の平均的なラウドネスを算出でき、これが LUFS として表現されます。

測定の種類:Integrated / Short-term / Momentary

  • Integrated(統合ラウドネス):測定対象の全体を通して計算される平均ラウドネス。放送や配信の目標レベルと比較する際の代表値。
  • Short-term(短期、3秒):直近 3 秒間の平均ラウドネス。ダイナミクスの中で短いが聴感上意味のある変化を捉える。
  • Momentary(瞬時、400ms):直近 400 ms の平均。瞬間的なピークや素早い変化の把握に有用。

ゲーティング(無音・低レベルの除外)について

統合ラウドネスの計算では、無音や極めて低いレベルの部分が結果を引き下げないよう、ゲーティング処理が行われます。ITU の算出手順ではまず絶対ゲート(-70 LUFS)を用い、その後に相対ゲート(未ゲートの統合ラウドネスから -10 LU を下回る部分を除外)を適用します。これにより、極端に静かな箇所が平均を歪めるのを防ぎます。

True Peak(トゥルーピーク)とサンプルピークの違い

DAW やメータが表示する "sample peak"(サンプルピーク)はデジタルサンプル単位での最大値ですが、デジタル波形を再生・リサンプリング・コーデック変換するとサンプル間で波形が鋭くなり、本来存在しなかったインターサンプルピークが発生することがあります。これを評価するのが True Peak(dBTP)で、ITU-R BS.1770 系ではフィルタリングと補間を行って真のピークを推定します。多くの運用指針ではエンコード時のクリッピング防止のために -1.0 dBTP 前後を推奨しています(放送や配信先の要件により -1 ~ -2 dBTP が一般的)。

放送規格と目標レベルの代表例

放送業界ではラウドネス標準が整備されており、代表的なものは以下の通りです。

  • EBU R128(欧州): 推奨統合ラウドネス -23 LUFS(放送基準)および True Peak 最大 -1 dBTP の運用が一般的。
  • ITU-R BS.1770 系列 / ATSC(北米): LKFS を用いる。ATSC A/85 の運用で番組のノーマライズが進み、米国では CALM Act(通信機器の過度な広告音量を抑える法規)により同様の対応が義務化されています。

配信プラットフォームの事情(ストリーミング)

ストリーミングサービス各社はそれぞれラウドネス正規化(ユーザー体験を一定に保つための音量調整)を導入しており、ターゲットレベルはサービスにより異なります。近年、多くの音楽ストリーミングは -14 LUFS 前後を基準にする傾向がありますが、正確な値や運用(ラウドネスを下げるか上げるか、トゥルーピークの扱い等)はサービスごとに差があります。配信前のマスタリングでは、各プラットフォームでのノーマライズ動作とターゲットを確認して最適化することが重要です。

Loudness Range(LRA)とダイナミクス

LRA(Loudness Range)は EBU テクニカルガイドで提唱される指標で、トラックや番組のダイナミクス幅を定量化します。LRA が小さいと均一でコンプレッションされた音、LRA が大きいとダイナミックで広がりのある音という解釈が可能です。放送では不要に大きな LRA を避けるための調整がなされることが多いですが、音楽作品では表現意図に基づき LRA を活かすことが望まれます。

マスタリング現場での実務的ポイント

  • ターゲットを決める:配信先(放送/Spotify/YouTube 等)ごとに望ましい統合ラウドネス目標を決める。
  • True Peak を抑える:エンコード時のインターサンプルピークによるクリッピングを防ぐため、最終段で -1〜-2 dBTP の安全マージンを確保する。
  • ダイナミクスの維持:過度なリミッティングは LRA を縮め、音楽的表現を損なうことがあるため、目的に応じて最小限の処理を検討する。
  • メータを使い分ける:Integrated/Short-term/Momentary と True Peak を同時に監視して、総合的に判断する。

ツールとメータの選び方

ラウドネス測定には、ハードウェアやプラグインのラウドネスメータが使われます。重要なのは ITU-R BS.1770 準拠であること(K-weighting、ゲーティング、True Peak 推定を行えること)です。有名なメータツールには iZotope Insight、NUGEN VisLM、Youlean Loudness Meter、フリーの MeterPlugs、DAW 内蔵のラウドネスメータなどがあり、用途に応じて選択します。

実務上のワークフロー例

1) マスタリング前に配信先の目標を確認。2) ミックス段階でダイナミクスの傾向を把握(LRA を測定)。3) マスタリングで統合ラウドネス目標へ調整。4) 出力ファイルで True Peak を検査。5) 必要に応じて別ターゲット向けのバウンスを作成(配信各社向けに最適化)。

よくある誤解と注意点

  • ラウドネスが低い=音が小さいという単純な評価は誤り。音の主観的な「大きさ」は周波数バランスや音色、圧縮感にも左右される。
  • 単に LUFS を上げれば良い音になるわけではない。過度なリミッティングは質感を損なう。
  • プラットフォームが自動で正規化する場合でも、True Peak の管理は不可欠。エンコード後のクリッピングは不可逆である。

今後の動向と取り組み

ラウドネス標準は放送から始まりストリーミングへと広がり、ユーザー体験の均質化が進んでいます。今後もコーデックや配信形式の多様化に合わせて運用ガイドラインや推奨値は更新されるため、エンジニアや制作側は定期的に各プラットフォームの最新情報を確認し、ワークフローを見直すことが求められます。

まとめ

LU(Loudness Unit)はラウドネス差を表す相対単位で、LUFS/LKFS は絶対的なラウドネス指標です。ITU-R BS.1770 系と EBU R128 に基づく測定、True Peak の管理、LRA によるダイナミクス評価は現代の音響制作において不可欠です。放送とストリーミングでは目標値が異なるため、配信先に合わせた最適化とツールの適切な使用が高品質な音声制作の鍵となります。

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参考文献