Bowers & Wilkins 603 S2 徹底レビュー — 音質・設計・導入ガイド
Bowers & Wilkins 603 S2とは:概要と位置付け
Bowers & Wilkins(以下B&W)が展開する600シリーズは、エントリーからミドルクラスのリスニング環境で高い評価を得てきたラインナップです。その中で603 S2(603 S2 Anniversary Edition を指すことが多い)は、フロアスタンディング型スピーカーとして“音楽を楽しく正確に鳴らす”ことを重視したモデルです。リビングルームでのホームオーディオから小〜中規模のオーディオルームまで幅広く対応できるバランスの取れた設計で、コストパフォーマンスの高さが魅力です。
設計のポイント:ドライバー構成とキャビネット
603 S2は3ウェイ構成を採用し、それぞれの帯域を専用ドライバーが受け持つことで分解能と位相感の良さを目指しています。ツイーターは高域の伸びとディテール再生を重視した設計で、中域はボーカルやアコースティック楽器の自然さを保つためにチューニングされています。低域については、キャビネットの容積とバスレフポートの設計で押し出しの良い低音を確保しつつ、過度に膨らまないよう配慮されています。
さらにB&Wが長年培ってきた素材と製造精度は、このクラスでも明確に聴き取れます。特にキャビネットの剛性、内部吸音の最適化、そしてポートの流速制御(フローポート類似の対策)などは、低域のタイトさと全体のクリアネス向上に寄与します。
音質特性:長所と短所
長所としては、第一に「中高域の透明感と解像感」が挙げられます。ボーカルのフォーカスが良く、アコースティック楽器やピアノの余韻の表現に優れています。高域はシャープすぎず耳あたりの良い明瞭さがあり、長時間のリスニングでも疲れにくい性格です。ステージの奥行き感や定位もこのクラスとしては上出来で、音像は明確に空間に描かれます。
低域は量感があり、ポップスやロックなどの一般的な音楽ジャンルで満足度が高い反面、ウルトラロー(非常に低い伸び)や超高出力でのコントロールを求めると限界が見えることがあります。これはキャビネットサイズや内部設計の物理的制約に由来するため、深追いする場合はサブウーファーの併用を検討すると良いでしょう。
短所としては、極端に伸びた超低域再生や、より高級なモデルで得られるような“空気感”の細かな再現性では差が出ます。また、アンプとの相性による音色の変化が分かりやすい点も留意が必要です(中高域の明るさがアンプの色付けで強調されることがある)。
設置とルームチューニング:最適化のコツ
- 壁からの距離:後方壁に近すぎると低域が膨らみやすい。最初は壁から50〜80cm程度離して設置し、聴感で調整するのがおすすめです。
- トゥーイン(内振り):フロントステージの定位を整えるため、ツイーターがリスニング位置を向くように軽く内振りにして試聴してください。音像の芯が固まる角度を探ることが重要です。
- 床振動対策:フローリングではスパイクやインシュレーターを用いることで低域の締まりが改善する場合があります。
- サブウーファー併用:より深い低域が欲しい場合は、サブウーファーで20〜40Hz帯域を補うと自然に拡張できます。クロスオーバーは80Hz前後から調整するのが一般的です。
アンプとの相性と推奨セッティング
603 S2はアンプの特性がダイレクトに出やすいスピーカーです。クリーンでダイナミクスに余裕のあるアンプ(定格出力がしっかりあり、電流供給能力が高いもの)との組み合わせが望ましいでしょう。真空管アンプを使うと温かみのある音色になりますが、中高域の明瞭さがやや柔らかくなるので、元の性格を保ちたいならソリッドステート系やクラスDの高品質アンプも良い選択です。
プリアンプやDACのグレードアップも音質向上に貢献します。特にデジタルソースを中心に聴く場合、ノイズフロアや精度がスピーカーの解像感を引き出す鍵になります。
リスニングジャンル別の適性
- 爵士・アコースティック系:中高域の自然さと定位感が活きるため非常に相性が良い。
- ボーカルもの:ボーカルのニュアンスが明瞭に出るため、歌ものに最適。
- ロック・ポップ:ドラムやベースのアタック感がしっかり出るが、極低音の量感にこだわる場合はサブウーファー併用を推奨。
- クラシック:オーケストラのスケール感は部屋と組み合わせ次第。小~中編成は得意だが、大編成の迫力再生は部屋とセッティングが重要。
ライバル機との比較
同価格帯のライバルにはKEFのQシリーズやMonitor AudioのBronzeシリーズなどがあります。KEFはより均一で広がりのある高域と点音源的な定位感、Monitor Audioは低域の力感と金属的な明瞭さが特徴です。603 S2は“音楽性と使いやすさのバランス”で優れており、特にボーカルやアコースティック音楽を好むリスナーに訴求力があります。
試聴時のチェックリストとおすすめの試聴トラック
試聴時は以下のポイントをチェックしてください:瞬発力(ドラムのアタック)、中域の自然さ(ボーカルの息遣い)、高域の滑らかさ(シンバルの余韻)、低域の締まり(ベース・キックの立ち上がり)。
おすすめトラック(ジャンル横断)
- ジャズ:アコースティックピアノやダブルベースの再生で中低域のバランスを見る
- ポップ/ロック:ドラムとベースの一体感を確認
- クラシック:弦楽器群の分離とステージ再現をチェック
メンテナンスと長期使用のポイント
定期的にホコリを払うこと、ポートやバッフルに大きな障害物を置かないことが基本です。スピーカーケーブルや端子は接触不良が音質劣化を招くため、時折クリーニングして緩みがないか確認してください。また長時間の高レベル再生はドライバーやクロスオーバーに負担をかけることがあるため、適切な音量での運用を心がけましょう。
総評:どんなリスナーに向いているか
Bowers & Wilkins 603 S2は、費用対効果が高く「音楽をしっかり楽しみたい」リスナーに向いています。中高域の解像感とボーカルの再現性が魅力で、リビングルームで使うオールラウンドスピーカーとして強くおすすめできます。一方で、超低域の深さや極めて高い分解能を求めるオーディオファイルは、上位モデルやサブウーファーの併用を検討すると満足度が上がるでしょう。
購入前のアドバイス
- 試聴は必須:自室環境と機器の相性で印象が大きく変わるため、可能な限り自分の機器や近い環境で試聴すること。
- 予算配分の検討:スピーカーに合わせてアンプやDACにもある程度の投資をすることで、総合的な満足度が向上します。
- 将来的な拡張:部屋が広い場合や低域を重要視する場合は、サブウーファー導入も視野に入れる。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery
参考文献
- Bowers & Wilkins 603 S2 Anniversary Edition - 公式製品ページ
- What Hi-Fi? Review: Bowers & Wilkins 603 S2 Anniversary Edition


