アンダーワールドシリーズ徹底解説:吸血鬼vsライカンの世界観・制作秘話と評価
イントロダクション:冷たい美学と女戦士の神話
「アンダーワールド」シリーズは、2003年の第1作公開以来、ゴシックな美術とハードなアクション、そして吸血鬼(バンパイア)と狼人間(ライカン)の永い抗争を軸に、独自の世界観を築いてきました。シリーズの顔であるセレーネ(演:ケイト・ベッキンセール)は、女性主人公がアクション映画の中心を張る先駆けの一人としても評価され、ファッション性の高いレザースーツや青みがかった映像美は多くの模倣を生みました。本稿では制作背景、各作品の特徴、テーマ分析、評価と影響、そして今後の見通しまでを詳しく掘り下げます。
制作の起源と主要クリエイター
シリーズの原案は、俳優兼作家のケヴィン・グレビアックス(Kevin Grevioux)を中心に、監督のレン・ワイズマン(Len Wiseman)や脚本協力者らとともに練られました。グレビアックスは元々コミックやキャラクター造形に長けており、吸血鬼とライカンの種族設定や古代の支配者たちといった世界観の骨格を作り上げました。レン・ワイズマンは映像面でのヴィジョンを担い、第1作(2003)と第2作(2006)はワイズマンの監督作としてシリーズのトーンを確立しました。
シリーズにおける世界観と神話構築
アンダーワールド世界は単なる「吸血鬼対狼男」ではなく、階級や宗教にも似た厳格な血統システム、遺伝学的要素(ウイルスやハイブリッドの概念)、そして古代から続く権力闘争を含みます。吸血鬼は長寿で冷徹、王族を中心とした階級社会を築き、ライカンは抑圧された労働階級として描かれることが多いです。第3作『Rise of the Lycans』では、その起源譚を掘り下げ、人間とライカンの境界がいかにして揺らいだかを描いています。
映像美・スタイリング・音楽
シリーズは一貫して寒色系のカラーパレット、夜間の都市や廃墟を思わせるセット、光沢のある黒いコスチュームを特徴とします。レン・ワイズマンの演出はスピード感あるカメラ運びとクールな編集で、ファッション誌的なルックをアクション映画に持ち込みました。音楽面ではクリストファー・ヤング(Christopher Young)らが手がけたスコアや、エレクトロ/インダストリアル系のサウンドトラックが作品の雰囲気を補完しました。
主要キャラクターと配役
- セレーネ(Selene) — ケイト・ベッキンセール:ヴァンパイアの戦士で、シリーズを通して主人公を務める。
- マイケル・コーヴィン(Michael Corvin) — スコット・スピードマン(Scott Speedman):第1作で登場する人間で、後にヴァンパイアとライカンのハイブリッドとなる。
- ヴィクター(Viktor) — ビル・ナイ(Bill Nighy):古代のヴァンパイア支配者で、種族間の権力を象徴する存在。
- ルシアン(Lucian) — マイケル・シーン(Michael Sheen):第3作で詳細が描かれるライカン側の指導者。
各作の概観と特徴
Underworld(2003)
シリーズ第1作は、セレーネがライカンに家族を失った復讐心から物語が始まるサイコロジカルな導入部です。人間の青年マイケルとの出会いを通じて、種族間の禁断の交わりと裏切りの構図が明らかになります。世界観とビジュアルスタイルを確立した作品で、興行的にも成功を収めました。
Underworld: Evolution(2006)
第2作は前作の謎を拡大し、血統やウイルスの起源に踏み込むことでスケールを大きくしました。アクションと神話的要素を拡張した一方で、プロットの複雑化により評価は賛否分かれましたが、ファンにはシリーズらしい展開と大掛かりな戦闘シーケンスが受けました。
Underworld: Rise of the Lycans(2009)
第3作はシリーズ初の前日譚(プリクエル)。監督はパトリック・タトポロス(Patrick Tatopoulos)が務め、ルシアンとソーニャ(Sonja)との悲恋、ライカンの反乱が主要テーマです。政治的抑圧と階級闘争の物語として高く評価され、シリーズに深みを与えました。
Underworld: Awakening(2012)
第4作はシリーズの時間軸を進め、セレーネが長い眠りから目覚めた後の世界を描きます。人間側のレヴェナント化やハンターの活動、そしてセレーネと彼女の娘(イブ)に関わる新たな局面が示され、ホラーとSF的要素が強化されました。
Underworld: Blood Wars(2016)
第5作はシリーズの続編として、ヴァンパイアとライカン双方から追われるセレーネの戦いを描きます。監督はアンナ・フォースター(Anna Foerster)。シリーズのアクションコアを維持しつつ、政治的陰謀や裏切り、アイデンティティの問いがテーマとなっています。
評価と興行の流れ
シリーズは批評家からの評価は分かれるものの、コアなファン層を獲得し続けました。映像スタイルや主人公の魅力、そして種族間のドラマは支持される一方、脚本の緩急やシリーズ後半の新要素導入に対しては批判も多く見られます。興行的には低~中規模の予算で大きな利益を上げる作品もあり、フランチャイズとしての採算性は一定の成功を収めています。
社会文化的影響と批評的論点
アンダーワールドは女性アクションヒーロー像の一つの象徴となりました。冷徹で強靭なセレーネ像は、従来の男性中心のアクション映画に対する重要なカウンターでした。また、吸血鬼とライカンという二項対立を通して、階級や権力、差別といった社会問題のメタファーを提示している点も評価されます。一方で、ストーリーテリングの弱さやシリーズ全体での一貫性の欠如、過度のスタイリングに対する批判も根強いです。
シリーズの今後と可能性
2016年以降、新作の動向は断続的に語られてきましたが(リブートや続編の企画など)、確定した続編は長らく発表されていません。フランチャイズとしては、ゲーム、コミック、ノベライズなどのメディアミックス展開の余地があり、原作世界の未開拓なエピソード(起源譚や派閥抗争の細部)を掘り下げることで再び注目を集める可能性があります。
結論:欠点を補う独自の魅力
アンダーワールドシリーズは、完璧な映画シリーズではないものの、独特の美学と強烈な主人公像、そして吸血鬼とライカンという古典的モチーフを現代的に再解釈した点で確固たる存在感を持ちます。ビジュアルや音楽、コスチュームによる統一された世界観は多くのクリエイティブに影響を与え、今後のリブートや拡張の余地も大きいと言えるでしょう。
参考文献
Underworld (film series) — Wikipedia
Underworld: Evolution (2006) — Wikipedia
Underworld: Rise of the Lycans (2009) — Wikipedia
Underworld: Awakening (2012) — Wikipedia
Underworld: Blood Wars (2016) — Wikipedia
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