5インチウーファーのすべて:特性・設計・選び方と実践ガイド
5インチウーファーとは
5インチウーファーは、コーン径がおおむね5インチ(約127mm)前後の低域/中低域を再生するスピーカーユニットです。家庭用ブックシェルフやカーオーディオ、小型モニターやポータブルスピーカーなど、限られた筐体スペースで良好な低域感と中域の解像度を両立しやすいことから広く使われています。物理的に大きすぎず、小さすぎないため、取り回しと音楽再生のバランスが取りやすいことが特徴です。
物理的構造と素材
一般的なウーファーの構成要素は、コーン(振動板)、サラウンド(エッジ)、ボイスコイル、ダストキャップ、ダンパー(スパイダー)、フレーム(バスケット)、マグネットです。5インチクラスでは、コーン素材に紙(パルプ)、ポリプロピレン、ケブラーやカーボンファイバーの複合材が用いられます。紙は自然な音色、ポリプロピレンは耐湿性と制動力、繊維強化材は剛性と低歪みを提供します。
サラウンドはフォームやゴム(天然/合成)で作られ、エッジ剛性が低音のレスポンスや耐久性を左右します。マグネットはフェライト(コスト重視)とネオジム(高磁束密度で小型化可能)に大別されます。ボイスコイル径や巻き数、コア材はパワーハンドリングや熱特性に影響します。
主要パラメータ(Thiele/Small とその他)
- Fs(共振周波数):ユニットが最も共振しやすい周波数。5インチでは機種によっておおむね40〜120Hz程度。
- Qts/Qes/Qms:共振の鋭さや減衰特性。システム設計で重要。
- Vas(等価空気室容積):ユニットの低域特性を表す指標で、エンクロージャの適正容積設計に用いる。
- Xmax(最大振幅):ボイスコイルがリニアに移動できる最大往復量。一般的に2〜6mm程度(片側)で、低域のダイナミック性能に直結。
- 感度(SPL、1W/1m):通常84〜92dB程度。高感度なら同じ入力で大きな音が出る反面、低域はユニットと箱の相性に依存。
- インピーダンス:4Ω、6Ω、8Ωが一般的。アンプとの相性を確認する必要あり。
エンクロージャ設計と音への影響
5インチユニットは箱設計の影響を受けやすく、システム全体の音質を左右します。主な方式と特徴は以下の通りです。
- 密閉(シールド)型:レスポンスが滑らかで位相管理がしやすく、低域の立ち上がりが早い。箱容積が小さくても比較的扱いやすいが、同じユニットでは低域の伸びは制限される。
- バスレフ(フロートポート)型:低域の伸びが得られるが、ポートチューニングに依存するため位相遅延や過渡特性の悪化、ポートノイズのリスクがある。
- トランスミッションラインやヘルムホルツ系の特殊箱:より深い低域や滑らかな応答を狙えるが設計と製作が難しい。
- インフィニティバッフル(車載の例):車体の大容積を利用して低域を稼ぐ方法。位相と応答の管理が課題。
設計時はT/Sパラメータを参照して、希望するローパス特性と箱容積を決めます。一般に5インチの密閉箱なら数リットル〜10リットル程度、バスレフだとやや大きめのチューニングが必要なケースが多いです(製品により大きく異なるため、メーカーの推奨を優先してください)。
クロスオーバーと帯域分割
5インチウーファーは中域の再生も担えるため、ツイーターとのクロスオーバー設計が重要です。多くの2ウェイシステムでは、クロスポイントを約2kHz〜3kHz程度に設定することが多いですが、ユニットの上限周波数(フルパワーでの歪み増加ポイント)や指向性、コンプライアンスによって最適点は変わります。
低域側では、サブウーファーと併用する場合にローカットをどこに設定するかが重要です。5インチの物理的制約を考えると、40Hz以下をサブウーファーに任せる設計が一般的です(40〜80Hzでハイパスをかける例が多い)。また、位相整合のためにフィルターの急峻さと位相回転を考慮して設計する必要があります。
実用的な性能指標とテスト
購入や設計の判断材料として次の測定値が役に立ちます。
- 周波数特性:オン軸とオフ軸の応答を確認。コーンサイズの影響で高域では指向性が出始める。
- インピーダンスと位相特性:クロスオーバー設計時に重要。
- 歪み(THD):低域の大振幅で歪みが増えるユニットもあり、音圧を上げる用途では注意が必要。
- 感度:アンプ出力の目安になる。
- 耐入力(RMS/ピーク):適正使用範囲と保護設計に関係。
用途別の選び方とチューニング例
- ブックシェルフスピーカー/リスニング:中高域の解像感と低域の自然さが重要。中庸な感度(86〜90dB)、Xmaxは中程度、密閉かややチューニングしたバスレフが好まれる。
- カーオーディオ(同軸/コンポーネント):小空間を前提に低域の立ち上がりとパワーハンドリングを重視。スピーカーの取り付け深さと車室の空洞(バッフル)を考慮する。
- スタジオモニター:周波数特性のフラットさ、低歪み、指向特性の安定が重要。密閉モニターが多い。
- マルチメディア/デスクトップ:小音量でも明瞭に聴こえる感度と、箱の容積制約を考えたチューニング。
よくある誤解と注意点
- 『大きいほど低音が出る』は必ずしも正しくない:箱設計、Qts、Xmax、ポート設計など他の要素で低域性能は大きく変わる。
- 感度が高ければ全て良いわけではない:高感度ユニットでも低域のコントロールが悪ければ音は膨らむ。
- メーカー公表値は測定条件に依存:感度やFs、Xmaxは測定方法が統一されていない場合があるため、同条件の公表データや実測レビューを参照することが重要。
設置と運用の実践テクニック
設置面ではバッフル剛性、取り付けトルク、ダンピング材の配置が音に効きます。車載ではドア内張りのビビリ対策やスピーカーバッフルの密着が重要です。室内スピーカーならスピーカーと壁面の距離、リスニングポジションの対称性、ルームチューニング(吸音・拡散)の基本的な実施で低域の不均衡は大幅に改善します。
エージング(エレクトロメカニカルな慣らし)については、コーンとサラウンドが馴染むことで特性が微妙に変化するという報告がある一方、測定上の差は限定的とも言われています。過大入力や長時間の最大近傍動作は避け、仕様内で使用することが最も重要です。
まとめ:5インチウーファーを選ぶ際のチェックリスト
- 使用目的(リスニング、カー、モニター)を明確にする。
- T/Sパラメータ(Fs、Vas、Qts)とメーカー推奨の箱容積を確認する。
- 感度、インピーダンス、Xmax、耐入力を確認しアンプやクロスオーバーと整合させる。
- コーン素材とサラウンド素材の特徴で音色・耐久性を比較する。
- 実際の測定データやレビューを参照し、可能なら視聴・試聴する。
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参考文献
- Loudspeaker - Wikipedia
- Thiele/Small parameters - Wikipedia
- Basic Loudspeaker Theory and Principles (Rane)
- SEAS - Technical Papers (speaker manufacturer)
- Dayton Audio - Technical Resources


