Bass House徹底解説:起源・特徴・制作テクニックと注目アーティスト

Bass houseとは何か

Bass houseは、ハウスの4つ打ちを基調にしつつ、ダブステップやUKガラージ、エレクトロ、ベースミュージック由来の重低音やグロウル、歪んだベースサウンドを組み合わせたエレクトロニックダンスミュージックの一派です。2010年代中盤にクラブ/フェスティバルシーンで注目を集め、フロア向けのパワフルなサウンドと、作曲・音作りのための細かいサウンドデザインが特徴となっています。

起源と歴史的背景

Bass houseは厳密にはひとつの瞬間で生まれたジャンルではなく、複数のシーンが交差して形成されました。ハウス(House)の四つ打ちのリズム感、UKガラージや2-stepに見られるスウィング感、ダブステップに由来する重低音やグロウル・ワブルのサウンドデザインが融合した結果として登場します。2010年代前半〜中盤にかけて、プロデューサーたちがクラブの音響やフェスティバルの大音量環境に合わせた“より強烈な低域”と“タイトなキック”を求めたことが普及の大きな要因でした。

音楽的特徴(サウンドの要素)

  • テンポ:一般的に120〜130 BPM前後(特に125〜128 BPM付近が多い)。これは踊りやすさを残しつつ低域のパンチを際立たせるためのレンジです。
  • キック&ベース:ハウスの固い4つ打ちキックに、サブベース(サイン波)と中域を担う歪んだベースレイヤーを重ねる手法が基本。キックは短くタイトに処理し、サブベースと干渉しないようにサイドチェインを強めにかけることが多いです。
  • ベースサウンド:リースベース、FMシンセ、ウェーブテーブルから作ったワブルやグロウル、サチュレーション/ディストーションで荒々しく加工したサウンドが多用されます。
  • ハーモニーとコード進行:シンプルでループ志向。ボーカルチョップや短いフレーズをフックに使うことが多いです。
  • ドロップ:ベースが主役となる“ベースドロップ”を採用し、ドロップ直前にフィルターやブレイクを挟んでダイナミクスを作ります。

制作テクニック(サウンドデザインとミックス)

Bass houseの制作ではレイヤリングと処理が重要です。以下は典型的なワークフローとテクニックです。

  • レイヤリング:サブベース(低域)+中域を担当する歪んだベース+モジュレーションを含む上音域のベースを重ねて幅と存在感を作ります。
  • フィルタリングとEQ:低域はサブベースに任せ、中域のベースはローエンドをカットして干渉を防ぎます。ハイパス/ローパスの自動化で動きを出すのが定番。
  • サイドチェイン/コンプレッション:キックとベースの干渉を避けるためにサイドチェインを積極的に使い、リズムを前に出します。
  • 歪みとサチュレーション:中域〜上域に歪みを加えて聴感上のボリュームと存在感を作ります。マルチバンドで部分的に歪みをかけるとコントロールしやすいです。
  • モジュレーション:LFOでフィルターや位相を動かすことでワブル感や生き物のようなベースを作ります。
  • リサンプリングとグリッチ処理:一度生成したベースをオーディオに書き出し、再度加工(ピッチシフト、グリッチ、逆再生、タイムストレッチ)して独自性を付与する手法も多用されます。
  • ミックスとマスタリング:低域はモノラル化してセンター安定を図り、マルチバンドコンプレッサーでダイナミクスを整えた上でラウドネスを確保します。

代表的なアーティストとレーベル

ジャンルの顔としてはAC Slater(Night Bass主宰)が挙げられます。Night BassはBass houseを中心にプロモートし、多くのプロデューサーを輩出しました。その他、Jauz、Joyryde、Chris Lorenzo、Habstrakt、MalaaやJoyryde周辺のプロデューサーもこのスペクトルで活躍しています。大手のダンスミュージックメディアやプレイリストでの露出を通じて、フェスやクラブのメインステージでも演奏されるようになりました。

シーンの広がりとサブジャンル化

Bass houseはその汎用性の高さから多くの派生を生みました。よりグルーヴ寄りの“garage-influenced bass house”、ダブステップ寄りに重さを増した“heavy bass house”、あるいはハウスのメロディ性を残した“future bass寄りのハイブリッド”など、プロデューサーごとに音像が分岐しています。これによりプレイリストやフェスのブッキングカテゴリーでも細分化が進んでいます。

クラブ/フェスにおける表現とダンス文化

Bass houseは大音量での空気圧や床に伝わる低域の体感を重視するため、クラブやフェスのサウンドシステムとの相性が良いジャンルです。ダンサーは低域のパンチとスナップに合わせて動き、短いフックやリフレインがフロアの一体感を高めます。またDJプレイでは曲のビルドとドロップを繋げるスムーズなエネルギーマネジメントが重要視されます。

現在のトレンドと将来展望

近年はベース音響の多様化とともに、より精巧なサウンドデザインや他ジャンルとのクロスオーバーが進んでいます。ポップスやヒップホップのプロダクションにもBass house的要素が取り入れられ、メインストリームとの境界が曖昧になってきました。テクノロジーの進化により、リアルタイムでのモジュレーションやハードウェアシンセの利用が増え、より複雑でダイナミックなベースが出現することが予想されます。

制作に挑戦するための実践的アドバイス

  • テンポ設定:まず125〜128 BPM付近を基準にしてみて、グルーヴ感を確認する。
  • レイヤー処理:サブ(サイン)+歪み系(中域)+テクスチャ(上域)の三層で設計。
  • モニタリング:低域の確認は高品質ヘッドフォンかサブウーファーで行い、スマホや車でもチェックしてバランスを取る。
  • プリセットに頼りすぎない:プリセットは出発点として有効だが、EQやフィルター、LFOで自分のサウンドに合わせて改変することが重要。
  • 参照トラック:クラブで効果的だった曲を分析し、キックの位相、ベースのピーク周波数、全体のラウドネスをチェックする。

まとめ

Bass houseはハウスの躍動感とベースミュージックの圧力を兼ね備えたジャンルであり、クラブやフェスで高い効果を発揮します。制作面では細かなサウンドデザインとミックス技術が求められ、ジャンルの多様化により今後も進化が続く分野です。初心者はまずテンポ、キックとベースの関係、レイヤリングとサイドチェインに注目して作品制作に取り組むと良いでしょう。

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参考文献