AIDMAとは何か──購買プロセスを深掘りしてデジタル時代の実践へつなげる方法
AIDMAとは:基本概念と歴史的背景
AIDMAは、Attention(注意)→ Interest(興味)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)の頭文字をとった、消費者の購買プロセスを段階的に説明するモデルです。伝統的な広告・販促のフレームワークとして長く使われ、広告が消費者の行動に至るまでの心理的変化を整理するのに有用です。AIDMAは、AIDA(Attention, Interest, Desire, Action)を拡張して“Memory(記憶)”の段階を加えたもので、特にマスメディア中心の購買プロセスで有効だとされてきました。
AIDMAの各段階の意味と狙い
Attention(注意):ターゲットに広告や情報を認知させる段階。広告露出、設置、サムネイル、見出し、ファーストビューなどが重要。
Interest(興味):注意を引いた後に「もっと知りたい」と思わせる段階。製品の特徴、ベネフィット、ストーリーテリングが働く。
Desire(欲求):興味が欲求へと発展する段階。差別化ポイント、価値訴求、社会的証明(口コミ・レビュー)で購買意欲を高める。
Memory(記憶):購買行動に至るまで情報が保持される段階。テレビCMや雑誌広告、ブランディング施策などで保持される「想起」が重要。
Action(行動):実際の購買や問い合わせ、資料請求などのコンバージョンに至る段階。購買導線の最適化、CTA(行動喚起)、購入しやすさの設計が必要。
各段階での具体的施策(オフライン/オンライン)
AIDMAの各段階で有効な施策と計測指標をまとめます。
Attention:テレビCM、屋外広告、検索広告のインプレッション、SNSでのリーチ。指標はインプレッション数、リーチ、視認率。
Interest:記事コンテンツ、ランディングページ、動画の中盤。指標はクリック率(CTR)、滞在時間、ページビュー。
Desire:比較コンテンツ、デモ、ウェビナー、限定オファー。指標は資料請求数、ホットリード数、コンバージョン率。
Memory:リマーケティング広告、ブランドステートメント、メールの継続配信。指標はブランド想起率、検索ボリュームの変化、メール開封率。
Action:購入フローの最適化、決済方法の多様化、購入時の割引。指標は購入数、カゴ落ち率、CPA(獲得単価)。
実践での組み立て方:施策設計ワークフロー
施策を設計する際は、まずターゲットとなる顧客のジャーニーと接点(タッチポイント)を洗い出します。次にAIDMAの各段階に対応するタッチポイントをマッピングし、担当チャネルとKPIを設定します。最後に施策実行→データ収集→改善のサイクルを回します。
例:新製品ローンチの場合
Attention:ティザー広告、SNS広告で認知拡大(KPI:リーチ、CTR)
Interest:製品説明動画や詳しいランディングページで関心を深掘り(KPI:滞在時間、資料ダウンロード)
Desire:限定キャンペーンやレビュー掲載で購買意欲を高める(KPI:クーポン利用数、問い合わせ)
Memory:フォローアップメールやリマーケティングで想起を維持(KPI:リターゲティングCTR、ブランド検索増加)
Action:購入導線最適化でコンバージョン(KPI:CVR、LTV)
デジタル時代におけるAIDMAの限界と補完
AIDMAは記憶(Memory)を前提としたモデルで、マスメディアからの影響が強い時代に有効でした。しかし、スマートフォンと検索行動が普及した現代では、消費者が能動的に情報を検索・比較するため「検索(Search)」や「共有(Share)」などが重要になります。そのため、AISAS(Attention, Interest, Search, Action, Share)などのモデルが提案され、AIDMA単体では説明できない行動が増えています。
それでもAIDMAが有用な点は、ブランディングと想起の重要性を明示するところです。購入までの時間が長い商品や高関与カテゴリーでは、記憶されることが購入に直結します。
AIDMAを現代のマーケティングで活かすための具体的アプローチ
ハイブリッド戦略:マスとデジタルを組み合わせ、Attentionは広く獲得、Interest〜Desireはデジタルで深掘り、Memoryは継続的なブランド接触で維持する。
タッチポイントごとのクリエイティブ最適化:Attention段階は短尺で視覚的に訴求、Interestは情報量を増やしたコンテンツ、Desireは口コミや事例を活用。
データドリブンな想起施策:検索量やブランドリフト調査、ソーシャルリスニングでMemoryの状態を評価し、リマーケティングやメール施策で補強。
測定と因果の設計:広告露出から購入までの因果関係を検証するため、ランダム化テストやマーケティングミックスモデリング(MMM)を活用。
KPI設計とツール例
AIDMAを運用する際は段階ごとにKPIを設定し、ダッシュボードで可視化します。代表的なツールは次の通りです。
認知・到達:広告配信プラットフォーム(DSP、SNS広告)、メディアプランニングツール
興味・関心:Google Analytics、Heatmap(ヒートマップ)、動画の視聴解析
欲求・検討:MA(マーケティングオートメーション)、CRM、問い合わせ管理システム
記憶・想起:ブランドリフト調査ツール、検索トレンド解析、リマーケティング配信ツール
行動・購入:ECプラットフォーム、決済システム、コンバージョントラッキング
実務でよくある課題と解決策
課題:AttentionはあるがActionに繋がらない
解決策:ランディングページと購入導線の最適化、購入障壁(送料や決済方法)の検証、A/Bテスト実施。課題:認知はあるが想起が弱い(Memory不足)
解決策:継続的なブランド接触(メール、SNS、OOH)、ブランドメッセージの一貫性確保。課題:デジタル接点での“検索”行動を捉えられない
解決策:SEO・検索広告の強化、コンテンツマーケティングで検索ニーズに応える。
現実的なケーススタディ(簡易)
BtoC家庭用家電メーカーが新モデルを発売するケース:
Attention:テレビCMとYouTubeでティザー広告を流し、製品の存在を周知(KPI:リーチ)。
Interest:公式サイトで技術解説動画と比較表を提供(KPI:動画視聴完了率、滞在時間)。
Desire:店頭体験イベントとユーザーレビューを同時に露出(KPI:イベント参加者数、レビュー数)。
Memory:購入見送り層に対してフォローアップメールとリマーケティングで想起(KPI:リターゲティングCTR、ブランド検索)。
Action:ECサイトでの限定値引きとワンクリック購入導線を用意(KPI:CVR、平均注文額)。
まとめ:AIDMAをどう位置づけるか
AIDMAは購買プロセスの理解と施策設計に役立つフレームワークです。特にブランド想起が購買に影響する製品・サービスではMemoryの概念が重要になります。一方で、デジタルでは検索や共有行動が加わるため、AISASなどのモデルと併用するか、AIDMAを現代的に拡張して使うことが推奨されます。最終的には、明確なKPI設計と継続的な実験(テスト&ラーニング)で、各段階の効果を検証し最適化していくことが成功の鍵です。
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