SLRとは?一眼レフカメラの仕組み・歴史・メリットと選び方ガイド
SLR(Single-Lens Reflex)とは何か
SLR(エスエルアール)は「Single-Lens Reflex(単一レンズ反射)」の略で、撮影レンズを通した光を鏡(レフレックスミラー)で光学ファインダーに導き、撮影者がレンズで見えている像を直接確認できるカメラの総称です。フィルム時代から続く基本設計で、同じ「一眼レフ」に分類されるカメラはフィルム式とデジタル式(一般にはDSLR:Digital SLR)に大別されます。
基本構造と光学経路の仕組み
SLRの核心は鏡(ミラー)とプリズム(ペンタプリズムまたはペンタミラー)、およびフォーカスや絞りの挙動を直接確認できる光路です。以下が典型的な光路の流れです。
- 被写体の光がレンズを通る
- フロントにある可動式のミラーで上方へ反射される
- ペンタプリズム(または軽量化したペンタミラー)で像を反転補正してファインダーへ送る
- シャッターを切るとミラーが跳ね上がり、光が撮像面(フィルムまたはイメージセンサー)に到達する
この方式により、ファインダーで見ている像はレンズが実際に捉えるものと一致します(視差が生じない)。また、被写界深度の確認(絞りを絞った状態の像確認)や、フィルム時代のTTL(through-the-lens)露出計測、TTLストロボ制御なども可能です。
ペンタプリズムとペンタミラーの違い
光路補正に使われるのがペンタプリズム(高価だが明るく正確)かペンタミラー(樹脂製で軽量・安価だが視野が暗め)かの違いです。プロや上級機には一般にペンタプリズムが採用され、初心者向けや廉価機ではペンタミラーが用いられることが多くなっています。
露出計測とAFの進化
SLRはレンズを通した露出計測(TTL測光)を早期に採り入れました。測光方式はセンター重視、スポット、評価測光(マトリックス測光)などがあり、メーカーごとにアルゴリズムを発展させてきました。
オートフォーカス(AF)もSLRで大きく進化しました。初期のAFはレンズ内モーターやボディの駆動系、専用AFセンサー(ミラーを利用して光を分岐し位相差検出を行う)を用いました。1980年代半ばのキヤノンEOSやミノルタの開発はAF一体型システムの普及を促進し、以降の進化で高速連写や低光量下のAF性能が飛躍的に向上しました。
フィルムSLRからデジタルSLR(DSLR)への変遷
歴史的には、35mm画幅のSLRは20世紀前半にルーツを持ち、Kine Exakta(1936年頃)が35mm一眼レフの先駆けとされます。その後、ニコンF(1959年)などがプロ用システムとして確立しました。
デジタル化は1990年代後半から本格化し、1999年のNikon D1などが本格的なプロ向けDSLRとして登場。以降、センサー性能の向上、画像処理エンジン、ライブビュー、動画撮影機能の追加によりDSLRは幅広い用途に対応するようになりました。
SLRのメリット
- ファインダー像がレンズの見えと一致するため、構図や被写界深度の確認が容易
- 光学ファインダーは原理的に表示遅延が無く、ライブビューに比べ低消費電力
- 多くのメーカーが長年にわたり確立した交換レンズとアクセサリーのエコシステムが存在する
- 機械的シャッターや大型マウントが可能なため、光学性能を極めやすい(高耐久、耐候性の高い機種も多い)
SLRのデメリット
- ミラーやプリズムを含むため、カメラは大型で重量が増す傾向がある
- ミラー跳ね上げに伴う「ミラーショック」やシャッター音が発生する(静音を要する場面では不利)
- 光学ファインダーは被写体情報(ヒストグラムや一部AFエリア表示など)を表示できないため、ライブビューに比べ情報量が劣る
- ミラー機構のメンテナンスが必要になる場合がある
現代におけるSLRの位置づけ(ミラーレスとの比較)
近年はミラーレス(ミラーレス一眼)が急速に普及し、特に小型軽量化、高速な像面位相差AF、ボディ内手ブレ補正(IBIS)や電子ビューファインダー(EVF)の進化により、多くのユーザーが移行しています。とはいえ、SLR/DSLRは独自のレンズ群、堅牢性、長時間動作のバッテリー持ち、一部の光学的な描写特性(レンズと光路の関係)を好むユーザーにとって依然として魅力的です。
SLR/DSLRを選ぶ際の実用ポイント
- 用途を明確にする(風景、ポートレート、スポーツ、動画など)— 動画重視ならミラーレスの方が有利な場合が多い
- レンズ資産とマウント互換性を確認する— 交換レンズ群の豊富さはシステムの寿命を左右する
- ファインダーの見え方(明るさ、アイポイント)、操作系のフィーリングを店頭で必ず確認する
- 同期(フラッシュ同調速度)、シャッターメカニズム、耐久性(シャッター耐久回数)も重要な選択要素
- 中古市場を活用する(フィルムSLRの名機や旧型DSLRはコストパフォーマンスが高い)
メンテナンスと注意点
SLRはミラー機構やシャッター駆動など可動部が多いため定期点検が推奨されます。特に古いフィルムSLRを使用する場合はミラーの剥離、シャッター幕の劣化、光学系のカビや曇りに注意してください。デジタルの場合はセンサー清掃時にミラーやフォーカシングスクリーンに触れないよう慎重に扱う必要があります。
よくある誤解
- 「SLRの方が必ず画質が良い」— 画質は主にレンズとセンサー(あるいはフィルム)の性能による。ミラーレスでも同等以上の画質を得られることが多い。
- 「ミラーレスはプロ用途に向かない」— 現在は多くのプロがミラーレスを採用しており、用途次第でミラーレスは十分プロ対応可能である。
まとめ
SLRは「レンズで見ている通りの像」を確認できるという点で長年写真家に支持されてきた設計です。歴史的な資産や光学的な直感性、豊富なレンズ群が最大の強みであり、現在はミラーレスとの棲み分けが進んでいます。新規購入時は用途、レンズ資産、携行性、将来性を総合的に判断することが重要です。
参考文献
- Britannica: Single-lens reflex camera
- Wikipedia: Single-lens reflex camera
- Nikon: History
- Canon: History of Canon cameras
- Wikipedia: Minolta Maxxum 7000 (AF一体型の歴史的節目)
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