M-Audio BX8 徹底ガイド：音質・設置・選び方までプロが解説
エバープレイ編集部M-Audio BX8とは
M-Audio BX8は、同社が展開するBXシリーズに属する8インチウーファー搭載のパワード（アクティブ）スタジオモニターの総称・シリーズ名として認識されています。大口径のウーファーを備えることで低域の伸びや量感を得やすく、プロジェクトスタジオやホームスタジオでのミックスやマスタリング、映像制作やゲームオーディオなど幅広い用途で使われます。モデルには世代違い（D2、D3など）や入出力構成が異なるバリエーションがあるため、購入時には該当モデルの仕様確認が重要です。
デザインと接続性
一般的にBX8系は8インチのコーンウーファーと1インチ前後のドームツイーターを組み合わせた2ウェイ構成で、エンクロージャーはフロントポートを備えるタイプが多いです。入出力はバランス接続のXLRや1/4インチTRS、ステレオミニやRCAなどのアンバランス入力を備えるモデルもあります。背面パネルには音響補正用のトリム（ハイ/ローの調整）、電源スイッチや極性スイッチを搭載する場合があり、設置環境に合わせた簡易イコライジングや位相調整が可能です。
音質の特徴
8インチウーファー搭載という特性上、BX8は5インチや6インチモデルに比べて低域の再生に余裕があり、ベースやキックの質感を確認しやすいのが利点です。中域はボーカルやギターなどの再生に重要な帯域をカバーし、ツイーターは高域の空気感やアタックを表現します。ただし、低域が豊かな分、部屋の反射や定在波の影響を受けやすく、無処理の部屋では低域が膨らんで聞こえることがあります。
設置とルームチューニングのポイント
8インチクラスのモニターはより広いリスニング距離（ミッドフィールド的な距離）で能力を発揮する傾向がありますが、ホームスタジオでは近接配置（ニアフィールド）で使うことも多いです。設置時の注意点は次の通りです。
- スピーカーとリスナーの三角形を意識する（等辺三角形またはややリスナー側を近づける）。
- スピーカーの高さを耳の高さに合わせ、トゥーイン（内振り）で定位とステレオイメージを最適化する。
- 背面のポートがある場合、壁に近づけると低域が強調されるため、一定距離（数十センチ以上）を空ける。モデルによってはポートが前面にあることもあり、その場合は壁から離す影響が少ない。
- ルームトリートメント（吸音や拡散）を行い、特に初期反射と低域の定在波対策（ベーストラップ）を行うと、BX8の特性を活かしやすい。
キャリブレーションと測定
より正確なモニタリング環境を構築するためには実測によるキャリブレーションが有効です。測定用マイクとRoom EQ Wizard（フリーソフト）などを使い、周波数特性や位相異常を確認して必要に応じて再生レベルや簡易イコライザーで補正します。DAWやオーディオインターフェイスにEQ機能があれば、モニター用のルーム補正プリセットを作成しておくと便利です。
接続とゲイン構成
モニターの前段となるオーディオインターフェイスやミキサーとの接続は、可能な限りバランス接続（XLR / TRS）を選んでノイズを抑えます。モニター側のボリュームとインターフェイスの出力レベルの組み合わせは、ヘッドルームを確保しつつクリップしない設定にします。実務上はインターフェイス側は0dB付近に、モニター側で最終的なラウドネスを調整することが多いです。
用途別の使い方
BX8は以下のような用途で効果を発揮します。
- ミックス作業：低域情報を確認しやすく、バランス調整に適する。ただしルームの影響を考慮。
- マスタリングのチェック用：メインマスターの低域挙動を見るのに向くが、最終判断は複数のモニターで行うべき。
- 映像／ゲーム制作：低域の再現が重要な効果音やサウンドデザインに有利。
- リスニング用途：音楽鑑賞でも満足度は高いが、家庭用スピーカーと比べると音作りがあっさりしている。
メリット・デメリット
メリット：
- 8インチウーファーによる低域の再生力と余裕。
- コストパフォーマンスが良いモデルが多く、ホームスタジオで本格的な低域確認が可能。
- 汎用性が高く、音楽制作だけでなく映像やゲーム音響にも使える。
デメリット：
- 低域の影響を受けやすいため、ルームトリートメント無しでは正確なモニタリングが難しい。
- 8インチクラスはサイズが大きく、狭い部屋では設置が難しい場合がある。
- モデルや世代によって音色差があるため、同シリーズの他モデルと比較検討が必要。
ライバル製品との比較（概観）
同クラスのライバルとしてはYamaha HS8、KRK Rokit 8、JBL 3シリーズ（308P など）やAdam AudioのA8Xなどが挙げられます。一般的な傾向として、Yamahaはフラットでクリアな再生、KRKは低域が強めでポップ向け、JBLは広いスイートスポットとパンチ、Adamは高精度で解像度が高い、といった特徴があります。BX8はこれらの中で『価格対音質バランスの良さ』を求めるユーザーに支持されやすいポジションにあります。
購入前のチェックポイント
- モデルの世代（D2、D3など）とその違いを確認する。世代ごとに内部アンプや回路、ポート設計が変更されることがある。
- 入出力端子を確認し、自分のインターフェイスや機材と直接接続できるかをチェックする。
- 設置スペースと可搬性を考慮する。8インチクラスはサイズと重量があるため据え置き場所を確保すること。
- 試聴が可能なら必ず音源を持参して比較試聴する。自分の制作ジャンルでの再生感を確認することが重要。
長所を活かす使いこなしテクニック
BX8の長所を最大限引き出すための実用的なテクニックをいくつか紹介します。
- ベースやキックのバランスを見るときは、サブベースの有無を意識して他のモニターやヘッドフォンでもクロスチェックする。
- 定位やステレオ幅の確認にはモノラル化ツールを使い、中央帯域の位相やレベルをチェックする。
- 長時間の作業ではリスニングレベルを一定に保ち、休憩を挟んで耳の疲労を防ぐ。低域の感じ方は疲労で大きく変わる。
よくある誤解
・「大きなウーファー＝良いモニター」：確かに低域の情報量は増えますが、正確さは設置環境と部屋の処理に大きく依存します。・「同一シリーズなら音は同じ」：シリーズ内でもサイズや内部設計で音色は変わるため、用途に応じたサイズ選択が必要です。
総合評価と結論
M-Audio BX8は、8インチクラスの強みである低域の表現力を活かしつつ、比較的手ごろな価格帯で提供されるモデルが多いことから、プロジェクト／ホームスタジオでの第一歩として非常に有用です。ただし、正確なモニターワークを行うにはルームチューニングと適切な設置が不可欠であり、ミックスの最終判断では複数のモニターやヘッドフォンでのクロスチェックを推奨します。購入前には試聴と仕様の確認を行い、自分の制作環境に合った世代・入力端子・サイズを選ぶことが成功の鍵です。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。
また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery
参考文献
- M-Audio 公式サイト
- M-Audio - Wikipedia
- Sound On Sound（製品レビューやモニタリング関連記事）
- Sweetwater（楽器・機材の製品情報ページ）
- Thomann（楽器店の製品ページ・仕様確認に便利）
投稿者プロフィール
