ワウペダル完全ガイド:歴史・仕組み・使い方・選び方まで徹底解説
はじめに — ワウペダルとは何か
ワウペダル(wah-wah pedal)は、ギターをはじめとするエレクトリック楽器の音色を人の声のように「ワウ」と変化させるエフェクターです。主にフットコントロールでフィルターの共振周波数をスイープし、強調される帯域が前後に動くことで独特の泣き声のようなサウンドを生みます。ロック、ファンク、メタル、ソウルなど幅広いジャンルで使用され、演奏表現の拡張に寄与する重要なエフェクターです。
歴史的背景と発展
ワウ効果自体は、ミュートされたトランペットやミュート・トロンペットで得られる“ワウワウ”に類似した人為的な発声からヒントを得ています。エレクトリック楽器用のフットコントロール型ワウペダルは1960年代中盤から後半にかけて商業製品として登場し、以降さまざまなメーカーが製品化しました。1960年代後半から1970年代にかけてはジミ・ヘンドリックスなどのプレイヤーがワウを多用し、エフェクトの代名詞的存在となりました。
ワウの基本的な仕組み(回路と音響の原理)
ワウペダルの核心は「共振帯域(ピーク)」を持つ可変フィルターです。足で踏むペダルが可変抵抗(ポテンショメータ)や光学式センサーを動かし、その変化がフィルターの中心周波数(Fc)を上下に動かします。結果としてある周波数帯が強調されたり抑えられたりして、「ワウ」という時間変化する音色が得られます。
技術的には以下のような要素が関わります:
- 可変フィルター回路:多くは共振(ピーキング)を伴うバンドパスまたはピーク型イコライザ。
- コントロール機構:従来型は物理的なポテンショメータ、近年は光学式(フォトセル)やエンベロープ(自動制御)もある。
- バッファ/アンプ段:フィルターの前後で信号レベルやインピーダンスを整え、音量低下やトーンの変化を最小化する。
主要な種類と派生
- スタンダード(フットワウ): 足で踏むクラシックなワウ。ポテンショメータでセンター周波数を変化させるタイプが多い。
- エレクトロ・オプティカル: ポットの摩耗を避けるため、光学センサーで位置を検出する方式。摩耗寿命やガリ(ノイズ)問題が少ない。
- オートワウ(エンベロープ・フィルタ): ピッキングの強さ(エンベロープ)に応じて自動的にフィルターが動く。ファンクや70年代のシンセ的効果に向く。
- デジタル/モデリング: DSPでワウ回路をモデル化。多彩なパラメータやプリセットが利用できるが、アナログ特有の挙動を好むプレイヤーもいる。
著名モデルとサウンドの違い
代表的なワウとしては、Dunlop(Cry Baby)シリーズ、VoxのV845/V847系、FulltoneやMorleyなどがあります。これらは回路設計やフィルター特性(Q値、中心周波数のレンジ)、スイープ・レンジの違いにより音色が異なります。
- Cry Baby(Dunlop): もっとも普及したモデルのひとつ。扱いやすくパンチのある「定番」サウンド。
- Vox V845系: やや太い低域とナチュラルなピーク感が特徴で、クラシックなサウンドを好む向き。
- Morley: 多くが光学式で、滑らかな操作感。特殊なスイッチングやボリューム機能を備えるモデルもある。
- Fulltoneやアナログ系ハイエンド: Qやブースト、クリアさにこだわったモデルが多く、ソロワークやレコーディング向けの微調整が可能。
どの位置に置くべきか(シグナルチェインの考え方)
ワウはシグナルチェインにより挙動が変わります。古典的な使い方は歪み(ファズ/ディストーション/オーバードライブ)の前に置くこと。そうすることでワウが入力信号の音色を変え、歪み器の反応が変化して独特の発音が得られます。一方、歪みの後に置くと、歪みで作られた倍音に対してフィルターをかけられるため、より劇的で金属的なワウが得られます。どちらが正解というより音楽的目的次第です。
演奏テクニックと表現
ワウはただ踏めば良いというものではなく、タイミング、速度、踏み加減で表現が大きく変わります。以下の点に注意すると効果的です:
- 踏む速度:ゆっくり動かすと哀愁やロングトーンが効果的、速く動かすとリズミカルなアクセントになる。
- ニュアンス:つま先(toe)側でのトーンは明るく鋭く、かかと(heel)側は太く低域が強調される。
- 片手弾きとの連携:右手のピッキングや左手のミュートと合わせることで“しゃくり”や“語りかける”ような表現が可能。
- リズム・フレーズへの応用:ファンクやR&Bではギターのリズム楽器としてワウを正確に合わせるテクニックが重要。
メンテナンスとトラブル回避
ワウペダルは物理的可動部があるためメンテナンスが必要です。ポット(可変抵抗)の接点が劣化すると「ガリガリ」ノイズが出ることがあります。定期的に接点復活剤(コンタクトクリーナー)を使用するか、光学式に改造するのも手です。スイッチやジャックの接触不良、電池液漏れにも注意してください。
- バッテリー消耗:多くは9V。電池終盤はノイズ増加やゲイン低下が起こる。
- ポット交換:ガリ多発ならポット交換で改善。専門業者に依頼するか自信があればDIY。
- 電源ノイズ:ボード上での電源配線改善やアイソレーションを検討。
よくある改造(モディファイ)と注意点
プレイヤーは好みのレスポンスに合わせてQ値やセンター周波数の範囲を変更する改造を行うことがあります。代表的な改造はQの強化(ピークを鋭くする)、ミドルブースト、電圧供給の変更(電圧を上げてヘッドルームを稼ぐ)など。ただし回路や電源に負荷をかける改造は元の音質を損ねることや機材故障のリスクがあるため、信頼できる技術者に依頼するのが安全です。
選び方の指針(初心者〜上級者)
- 初心者:Cry BabyやVoxの定番モデルは扱いやすく音作りが簡単。耐久性と汎用性が高い。
- 中級者:Qやブースト機能が付いたモデルや光学式のMorleyなど、操作性やメンテナンス性を重視。
- 上級者/レコーディング:Fulltoneやハンドメイド系、モデリング機器で細かいパラメータ調整が可能な製品を検討。
代表的な使用例(有名プレイヤーと楽曲)
ジミ・ヘンドリックスはワウをエモーショナルなソロに多用し、ワウの使用をポピュラー音楽の中心に押し上げました。その他、エリック・クラプトンやジミー・ペイジなどロックの巨匠、さらにメタル系ではカーク・ハメットのようなプレイヤーがソロでワウを多用しています。ファンクやR&Bでは自動ワウ(エンベロープ)やテンポに合わせたリズムワウが定番です。
まとめ — ワウの魅力と今後
ワウペダルは単なるエフェクト以上にギタリストの表現手段となる道具です。回路設計や物理機構の違いがサウンドに直結するため、自分の音楽性に合ったモデル選びと使い方の工夫が重要になります。デジタル技術の発達でモデリングや多機能化も進んでいますが、アナログ特有の挙動を好むプレイヤーが多いのも事実です。用途(ライブ、レコーディング、ジャンル)と手入れのしやすさを基準に選ぶと良いでしょう。
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参考文献
- Wah-wah pedal — Wikipedia
- Dunlop(Cry Baby)公式サイト
- Vox Amps 公式サイト
- Sound On Sound: Understanding Wah Pedals
- Mu-tron(エンベロープ系フィルター関連)


