オリンパスのカメラ史と現状:PENからOMへ、マイクロフォーサーズが切り拓いた小型高性能路線
概要:オリンパスのカメラ史を一望する
オリンパスは「小型化」「高性能化」「堅牢性」を軸に、フィルム時代からデジタルまで一貫して特徴あるカメラを世に送り出してきました。本稿では、創業から代表的な製品群、技術的特徴、マイクロフォーサーズ(MFT)規格への貢献、そして近年の経営再編とその後の展開までを整理し、現在のユーザーや購入検討者に向けた実践的な視点まで深掘りします。
オリンパスの歴史と代表モデル
オリンパスは光学機器メーカーとしての長い歴史をもち、カメラ分野でもいくつかの象徴的な機種を輩出してきました。特に代表的なのが1959年発表の「PEN(ペン)」、1972年発表の小型一眼レフ「OM-1」、そしてデジタル時代における「PEN(デジタル)」「OM-D」シリーズです。
・PEN(1959):ハーフサイズ(35mmフィルムを半分に使う)という独自のフォーマットで、小型軽量を追求したモデル。スナップ用途で高い支持を集めました。
・OMシリーズ(1972〜):設計者・松谷芳久(よしひさ)らによる設計で、従来よりも小型で扱いやすい一眼レフを実現。OM-1は高性能ながら携帯性に優れる点で評価されました。
・デジタルPEN/OM-D:フィルム時代の思想を受け継ぎ、ミラーレス化による小型化と機能面の充実で人気を獲得。
マイクロフォーサーズ(MFT)とオリンパスの役割
2008年、オリンパスはパナソニックとともに「マイクロフォーサーズ」システム(略称 MFT)を立ち上げました。これはフォーサーズの思想を引き継ぎつつ、ミラーレス構造に最適化した規格です。MFTの特徴はセンサーサイズがAPS-Cやフルサイズより小さいため、レンズ径やボディが小型化しやすいこと。一方でセンサー面積が小さいことによる高感度ノイズや浅い被写界深度の表現には制約があります。
オリンパスはMFTの普及において大きな原動力となり、PENやOM-Dシリーズを通じて“小型で高機能”のイメージを確立しました。安全な防塵防滴設計や高性能な手ブレ補正(IBIS)など、フィールド撮影での使い勝手に注力した点が評価を受けています。
光学系とレンズラインナップ(M.Zuiko)
オリンパスのレンズは「M.Zuiko(M.ズイコー)」のブランド名で展開され、広角から望遠まで豊富なラインナップを揃えています。特徴としては以下が挙げられます。
- 小型軽量設計を優先したモデルが多く、携帯性に優れる。
- 高解像でありながらボディとのバランスが良く、旅行やスナップに適するレンズ群が充実。
- 一部のプロ向け望遠や明るい大口径レンズも存在し、用途に応じた選択が可能。
また、マウントアダプターを使えば旧OMレンズや他社レンズも利用可能で、レンズ資産を活かせる点も魅力です。
ボディ側の強み:IBIS(ボディ内手ブレ補正)と堅牢性
オリンパスのミラーレスは、特に手ブレ補正(IBIS)性能で高い評価を受けています。5軸補正の搭載により低速シャッターでの手持ち撮影や長焦点域での補正効果が大きく、暗所や望遠撮影でも実用的な撮影が可能です。さらに上位機種ではボディ側の防塵防滴性能を強化し、過酷な環境での撮影ニーズに応えています。
動画性能と使い勝手の進化
かつては写真性能が主体でしたが、近年は動画機能も着実に進化しています。高い手ブレ補正との組み合わせにより、手持ちでのスムーズな撮影が得意分野です。4K撮影やプロ向けの映像機能を備えたモデルも登場し、vlogや映像制作にも対応できる性能を持ちます。ただし、画質面ではフルサイズセンサー搭載機と比較するとボケ味や高感度耐性に差が出る場面があるため、用途に応じた評価が必要です。
オリンパスからOMへ:経営再編とその影響
2020年、オリンパスは医療機器事業に注力する方針をとり、カメラを含む映像事業を日本産業パートナーズ(Japan Industrial Partners, JIP)に譲渡することを発表しました。新会社は「OM Digital Solutions(オーエム デジタル ソリューションズ)」として再編され、2021年1月に正式に事業を引き継ぎました。
この再編により、ブランド名としての“オリンパス・カメラ”はOM系の新体制に移行しましたが、カメラ製品自体は継続して供給されています。M.ZuikoレンズやOM-D/PENシリーズの開発・販売はOM Digital Solutionsが担当し、従来のユーザーや供給網は大きく途切れることはありませんでした。
オリンパス(OM系)の強みと限界の整理
強み:
- 小型・軽量で携帯性に優れるシステムを提供。
- ボディ内手ブレ補正(IBIS)や防塵防滴などフィールドでの使い勝手が高い。
- 豊富なM.Zuikoレンズ群とアダプターでの互換性。
限界:
- センサーサイズ(MFT)の物理的制約による高感度ノイズやボケの表現には限界がある。
- フルサイズを基準にした画質追求や被写界深度の浅い描写を重視するニーズには完全には応えられない場合がある。
ユーザー別の選び方アドバイス
旅行・スナップ中心の一般ユーザー:小型軽量で機動力が高く、画質も日常用途で十分です。防塵防滴ボディはアウトドアにも最適。
風景・マクロ・ストリート:コンパクトな設計と高性能な広角・中望遠レンズで充実した選択肢があります。手ブレ補正が効くため低速シャッターでの撮影がしやすいです。
ポートレート・浅い被写界深度を重視するユーザー:ややフルサイズ寄りの機材のほうが有利ですが、明るい大口径レンズを工夫することでMFTでも十分に対応できます。
映像制作・動画重視:IBISと動画機能の進化によりOM系は有力な選択肢。ただし、シネマ的な浅い被写界深度を重視する場合はフルサイズ機を検討してください。
中古市場・資産価値と買い時
オリンパス(OM系)製品は小型軽量という特性から中古需要も高く、特にPENやOM-Dの人気モデルは流通量が安定しています。レンズ資産(M.Zuiko)は堅実な設計が多く、中古でも使い勝手が良い点が評価されています。新製品発表直後は旧機種の価格が下がる傾向にあるため、予算重視なら型落ちモデルの検討も合理的です。
今後の展望
OM Digital Solutions体制下でも、MFTの強みを活かした製品開発は継続される見込みです。市場全体ではフルサイズミラーレスの勢いが強いものの、固定化しないユーザーニーズ(旅行やアウトドア、軽量システムへの需要)は根強く、オリンパス由来の設計思想は引き続き価値を持ちます。クリエイター向けには高性能IBISや独自の色味設計、レンズ群の充実で差別化を図ることが期待されます。
まとめ:オリンパス(OM系)の魅力と選び方の要点
オリンパスは「小型で高機能」なカメラを長年追求してきたブランドであり、その思想はMFTで結実しました。旅行やフィールドワーク、スナップ撮影においては他に替えがたい機動力と実用性を持ちます。一方で、より大きなセンサーを必要とする表現(浅い被写界深度や最高感度画質)ではフルサイズ機に軍配が上がることも事実です。用途を明確にした上で、OM系のボディとM.Zuikoレンズ群を組み合わせることで、効率的で楽しい撮影体験が得られるでしょう。
参考文献
- Olympus Corporation - Wikipedia
- Olympus Pen - Wikipedia
- Olympus OM system - Wikipedia
- Micro Four Thirds system - Wikipedia
- OM Digital Solutions - Wikipedia
- OM Digital Solutions(公式サイト)


