キヤノン EOS 5D Mark IV 徹底ガイド:性能評価・運用テクニックとメリット・デメリット

はじめに

キヤノン EOS 5D Mark IV(以下 5D Mark IV)は、2016年に発表されたフルサイズ一眼レフの代表機種です。プロユースを想定した堅牢なボディと、約3040万画素の高解像センサー、動画性能の強化などで、発売当初から幅広い写真・映像用途で高く評価されました。本コラムでは公式仕様に基づき、画質・AF・動画性能・実戦運用・長所短所・買いどき判断までを詳しく解説します。

主要スペック(要点)

  • センサー:フルサイズ(35mm)CMOS 約3040万画素
  • 画像処理エンジン:DIGIC 6+
  • ISO感度:標準100–32000(拡張 50–102400)
  • 連写性能:最高約7コマ/秒
  • AFシステム:61点AF(最大41点がクロスタイプ)
  • ライブビュー/動画AF:デュアルピクセル CMOS AF対応
  • 動画:4K(4096×2160)対応(撮影時は約1.64×のクロップ)
  • モニター:3.2型液晶、約162万ドット、タッチ操作対応
  • 記録媒体:CFカード+SDカード(UHS-I対応)
  • 通信:Wi-Fi/NFC、内蔵GPS
  • シャッター耐久:約150,000回(キヤノン公称)
  • 電池:LP-E6/LP-E6N互換、バッテリーグリップ対応

画質とセンサーの特徴

3040万画素センサーは高解像であり、クロップ耐性やトリミングに強い点が魅力です。高画素化の一方で、DIGIC 6+によるノイズ低減処理により高感度域での実用性も確保されています。ダイナミックレンジは同世代のフルサイズ機と同等クラスで、ハイライト回復やシャドウの階調保持はRAW現像でさらに伸ばせます。

風景や商業撮影、スタジオでの大判プリントを想定する用途では、十分なディテールと色再現が得られます。高画素は被写体ブレや手ブレに敏感になるため、三脚・十分なシャッタースピード・適切なIS(手ブレ補正)付きレンズの活用が重要です。

オートフォーカスと連写性能

5D Mark IVのAFは61点(最大41点がクロスタイプ)という構成で、中央部の追従性能が高く、スポーツやウェディングなど決定的瞬間を捉える場面でも安定しています。ただし、最新のミラーレス機に比べると被写体検出の進化や低輝度での追従性は劣るため、高速で予測の必要な被写体ではテストと設定調整(AFモード、ケースごとのAF領域設定)が重要です。

連写は最高約7コマ/秒で、報道やイベント、連続する動きの撮影に使えます。バッファ容量やカードの書き込み速度によって連続撮影枚数は左右されるため、RAWで長時間連写する場合はCFカードの速度とバッファの設計を考慮してください。

動画性能(実用面の注意点)

動画面では4K(4096×2160)撮影に対応した点が大きな特徴ですが、内部録画では約1.64倍のクロップが入るため、広角が必要な撮影では注意が必要です。内部記録は8bit 4:2:0が基本で、より高品位な色深度やサンプリングを求めるなら外部レコーダー(HDMI出力で4:2:2 8/10bit対応機器)との組み合わせが有効です。

一方、デュアルピクセル CMOS AFによるライブビュー・動画AFは非常に滑らかで、特にレンズのフォーカス駆動と合わせることで自然な追従が可能です。動画撮影時は発熱や記録メディアの容量にも注意し、長時間撮影には冷却や記録管理の運用設計が必要です。

操作性・ボディと耐久性

5D Mark IVは堅牢なマグネシウム合金ボディに防塵・防滴構造を備え、プロの現場での使用に耐える設計です。各種ダイヤルやカスタムボタンが充実しており、ワークフローに合わせたカスタマイズが可能です。タッチ対応の背面液晶は撮影設定やライブビュー時のピント操作で便利に機能します。

運用上のメリットとデメリット

  • メリット
    • 高画素フルサイズでプリントやトリミング耐性に優れる
    • 堅牢なボディとプロ仕様の操作系で信頼性が高い
    • デュアルピクセルAFによりライブビューや動画で高精度な被写体追従が可能
    • 内蔵GPSやWi-Fiなど現場運用に便利な通信機能を搭載
  • デメリット
    • 4K撮影時のクロップや内部8bit記録は、動画重視の最新基準から見ると制約がある
    • ミラーレス機に比べてAFの進化やボディ内手ブレ補正(IBIS)がない
    • 記録メディアがCF + UHS-I SDの組み合わせで、UHS-IIやCFexpressに比べると転送速度面で劣る

レンズ選びとシーン別おすすめ

5D Mark IVのポテンシャルを引き出すには、被写体に応じたレンズ選びが重要です。以下は代表的な組み合わせ例です。

  • ポートレート:EF 85mm F1.2/F1.4、EF 50mm F1.2/F1.4 — 背景ボケと高解像を活かす
  • 風景・商業:EF 24-70mm F2.8、EF 16-35mm F4 — 高画素を活かした解像表現
  • 報道・スポーツ:EF 70-200mm F2.8、EF 24-70mm F2.8 — 決定的瞬間を狙うための機動性と明るさ
  • 動画:シネマレンズや静音AFを備えたレンズ、外部マイク/レコーダーを併用

実戦での運用ポイント・チューニング

・AFの個別設定:被写体やシーンに応じてAFケースや追従速度、予測範囲を調整する。特に動体撮影ではテスト撮影で最適設定を探る。
・ホワイトバランスと色設定:高画素機は色の微妙な差が出やすい。シーンによってカスタムWBやRAW現像での調整を前提に撮影する。
・記録設定:重要な撮影ではRAW+JPEGでの同時記録や、メモリカードの冗長化(CFとSDの使い分け)を検討する。
・動画運用:4Kクロップを踏まえたレンズ選定と外部録画機の活用を計画する。長時間記録時は発熱対策と大容量メディアの準備が必要。

5D Mark IVは今買いか?(実用的な判断基準)

現時点での買い時判断は用途に依存します。高画素フルサイズで頑丈なボディを求め、光学ファインダーでの撮影やレガシーEFレンズ資産を活用するプロやハイブリッド撮影者には今なお有力な選択です。一方で、最新の高速AFやボディ内手ブレ補正、より効率的な動画ワークフロー(10bit/4:2:2内部収録、フルフレーム4K)を重視する場合は、ミラーレスの上位機や最新モデルを検討する価値があります。

メンテナンスと長期運用の注意点

高画素機はセンサーの清掃やピント精度が画質に直結します。定期的なセンサークリーニング、レンズの絞り連動やAF微調整(必要ならばサービスでの点検)を行ってください。バッテリーは予備を複数用意し、長時間撮影や寒冷地では温度管理も重要です。また、ファームウェアは公式の最新版を確認しておくと機能改善や互換性向上が見込めます。

まとめ

キヤノン EOS 5D Mark IVは、発売から年数が経過してもなお、解像力・信頼性・多用途性で輝きを放つ一台です。静止画では高画素と豊かな階調、動画ではデュアルピクセルAFによる滑らかな追従が特に優れています。弱点としては4K撮影時のクロップや最新ミラーレスが持つ先進AF機能・IBISの不在などがありますが、EFマウントの資産を活かしたいユーザーや堅牢な光学ファインダー機を必要とする現場では非常に有力な選択肢です。

参考文献