レフレックス(一眼レフ)徹底解説:仕組み・歴史・メリット・ミラーレスとの比較と選び方
はじめに:『レフレックス』とは何か
「レフレックス(reflex)」はカメラの世界では一般に一眼レフ(Single-Lens Reflex、略してSLR/一眼レフ)を指します。一眼レフは、撮影レンズを通して入った光をミラーで光学ファインダーに反射(リフレクト)して観察できる構造を持ちます。光学的に被写体を直視できるため、被写体の明るさやボケ具合、構図をリアルタイムで確認できるのが最大の特徴です。
歴史の概略
一眼レフの起源はフィルム時代にさかのぼります。小型35mmフォーマットの初期の例としては、1930年代の機種(例:Ihagee Kine Exaktaなど)があり、その後の数十年で光学系やフィルム露出計、TTL(レンズを通した測光)などの技術が発展しました。1980年代には自動露出や自動焦点(AF)機構が一般化し、1990年代〜2000年代にかけてはデジタル化が進行、プロ・ハイアマチュア向けのデジタル一眼レフ(DSLR)が市場を支配しました。2008年以降、ミラーレス一眼が台頭し始め、現在は用途や好みに応じて両者が選ばれています。
基本的な仕組み(光学経路とミラー機構)
一眼レフの特徴はミラーと光学ファインダー(ペンタプリズムまたはペンタミラー)による光学経路です。主な流れは次の通りです。
- レンズを通った光はボディ内の可動ミラーに当たり、上方へ反射される。
- 反射された光はペンタプリズム(または軽量化されたペンタミラー)を経由してファインダーへ届き、撮影者はレンズで見ている像を光学的に確認できる。
- シャッターボタンを押すと、ミラーが跳ね上がり(ミラーパップ)、その隙間からセンサー(またはフィルム)に光が届き露光される。
この機構により、撮影時以外は常に光学ファインダーで像を確認できる一方、シャッターとミラーの動作による「ミラーショック(振動)」「ブラックアウト(ミラーが跳ね上がっている間ファインダーが見えない)」などの物理的制約が生じます。
ペンタプリズムとペンタミラーの違い
- ペンタプリズム:ガラスの塊で作られる高価で明るい視野。上位機で採用されることが多く、ファインダー像がクリアで見やすい。
- ペンタミラー:樹脂と鏡面の構成で軽量・低コスト。エントリーモデルや廉価機種でよく使われるが、像はやや暗く・鮮明さで劣る。
AF(オートフォーカス)と露出計測の仕組み
従来の一眼レフでは、ミラーが光を反射することで位相差検出用のAFセンサーに光を導く仕組みが広く採用されてきました。これにより高速な位相差AFが可能になり、動体追従性に優れます。デジタル時代になると、ライブビューや動画撮影時にはミラーが跳ね上がるため、コントラスト検出やセンサー上の位相差検出(オンセンサーフェーズ検出)が併用される機種が増えています。
露出計もTTL(Through The Lens)方式が主流で、レンズを通った光量をそのまま計測するため、精度の高い自動露出制御が可能です。
長所(メリット)
- 光学ファインダー:遅延がなく自然な見え方。特に明るい屋外で見やすい。
- 豊富なレンズ群とアクセサリ:歴史的背景から各社のマウントに豊富なレンズ資産がある。
- 高速で信頼性の高い位相差AF(特に従来型のAFモジュールを持つ機種)。
- バッテリー持ちが良い:光学ファインダーは電子表示に比べ消費が少ない。
- 堅牢性と操作感:専用グリップや物理ダイヤルの操作感を好むユーザーが多い。
短所(デメリット)
- 機構が複雑で大型になりがち。ミラー・プリズム部のため小型化が制約される。
- ミラーショックや機械的寿命(ミラー・シャッターの耐久、シャッター回数)に起因する振動・メンテナンスが必要。
- 動画撮影ではミラーの動作が邪魔になり、ライブビュー時のAF性能は機種依存。
- フランジバック(マウントからセンサーまでの距離)が長く、光学的には有利だがボディ設計上の制約がある。
一眼レフとミラーレスの違い(現代の比較)
近年はミラーレス(ミラーレス一眼、MILC)が急速に普及しています。主な相違点はミラーと光学ファインダーの有無です。ミラーレスは電子ビューファインダー(EVF)を用い、撮影前から露出や色味がプレビューできる点が強みです。対して一眼レフは光学ファインダーの自然さと伝統的なレンズ資産、機械的信頼性が魅力です。
技術的には、ミラーレスの普及でオンセンサー位相差検出(デュアルピクセルや像面位相差)が進み、動体AFや動画性能が飛躍的に向上しています。一方で一眼レフは高倍率光学ファインダー、電池持ち、既存レンズ群の活用という強みが残っています。
実務上の選び方・チェックポイント
- 使用目的:風景・ポートレート・スポーツ・動画など用途で必要なAF性能や連写、耐候性が変わる。
- ファインダーのタイプ:光学(明るさ・遅延なし)を重視するか、EVFのプレビュー性を重視するか。
- レンズ資産と将来性:既存のレンズを使いたい場合はマウント互換性とアダプタの可用性を確認する。
- 機械的耐久性:シャッター耐久(シャッター寿命)やミラー機構の状態は中古購入時の重要項目。
- 携行性:一眼レフはどうしても大きく重くなりがち。持ち歩き頻度を考慮する。
メンテナンスとトラブル対策
一眼レフは精密な機械部品を含むため、定期的な点検と清掃が重要です。センサーのゴミ対策は重要で、交換レンズの取り扱いやボディキャップ装着、屋外でのレンズ交換時の注意が必要です。ミラーやペンタプリズムは衝撃や強い振動で不具合を起こすことがあるため、落下や強い衝撃は避けるべきです。ミラーショック対策としては、ミラーアップ(ミラーを先にロックしてからシャッターを切る)機能や電子先幕シャッターを活用します。
よくある誤解
- 「一眼レフは画質が必ず優れている」:画質はセンサーやレンズ、画像処理の組合せで決まります。ミラーレスでも同等以上の画質を出す機種は多数あります。
- 「ミラーで像を見ているから撮れる画は常に同じ」:実際にはレンズの絞りや露出、光学収差などで見え方と撮れている写真が微妙に異なることがあります。
- 「ミラーがあるからAFが速い」:伝統的に位相差AFは有利でしたが、近年の像面位相差やデュアルピクセル技術によりミラーレスも高速AFを実現しています。
将来展望
カメラ市場はミラーレス優位へと移行していますが、プロ機や特定用途(スポーツ、報道、光学ファインダーを好む撮影者)では依然として一眼レフが使われ続けています。技術面ではセンサー上のAF向上やシャッターレス撮影(電子シャッター)の発展が進み、ボディの小型化・高性能化が一層進むと考えられます。
まとめ
「レフレックス」、すなわち一眼レフは、ミラーと光学ファインダーを活かした独自の撮影体験を提供してきたカメラ構造です。光学的な見え方、豊富なレンズ群、安定した位相差AFという利点は今もなお有用であり、用途や好みに応じて選ぶ価値があります。一方でミラーレスの台頭により、機能面や携行性での比較検討が必要になっています。購入や使用の際は用途、レンズ資産、ファインダーの好み、動画性能などを総合的に判断してください。
参考文献
Single-lens reflex camera - Wikipedia (English)
Minolta Maxxum 7000(初期のAF一眼レフ) - Wikipedia
Digital single-lens reflex camera - Wikipedia
Micro Four Thirds - Wikipedia(ミラーレス普及の一例)
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