連写可能枚数の完全ガイド:バッファ・カード速度・実測テクニックで失敗しない選び方
連写可能枚数(バースト深度)とは何か
「連写可能枚数」とは、シャッターボタンを押し続けたときにカメラが一時的に撮影した画像を内部バッファに保持できる枚数のことです。英語では“burst depth”や“buffer capacity”と呼ばれ、フレームレート(fps)とは別の指標です。フレームレートは1秒あたりの撮影枚数、連写可能枚数はそのフレームレートを何秒間維持できるかを決めます。
なぜ連写可能枚数が重要か
スポーツや野生動物、決定的瞬間を狙う撮影では、連続して多くのコマを切ることでベストショットを得やすくなります。重要なのは「ピークfps」よりも「持続して撮れる秒数」です。たとえば30fpsで0.5秒しか撮れないカメラと、10fpsで10秒撮れるカメラでは、狙いたい被写体やシーンに応じて後者が有利になることがあります。
メーカー仕様の読み方と注意点
メーカーが公表する仕様にはいくつかの落とし穴があります。多くは最も有利な条件(圧縮JPEG、AF/AE固定、特定の高速メモリーカード使用、温度条件など)で測られています。RAWでの連写可能枚数は通常短く、RAW+JPEGや無圧縮RAWだとさらに短くなります。したがって、仕様値を見る際は「どのフォーマットでの数値か」を必ず確認してください。
連写を制限する主な要因
- バッファ容量(RAM相当): 撮った画像を一時保存する内部メモリ。容量が尽きると撮影速度が落ちます。
- イメージプロセッサの処理速度: 格納・圧縮・メタデータ付加などの処理能力が継続撮影を左右します。
- ファイルサイズ(RAW/JPEG・圧縮率・画素数): 大きいファイルほどバッファを早く消費します。
- カード書き込み速度: バッファからカードへ書き出す速度が遅いとバッファ解放が遅れ、連写可能枚数は短くなります。
- シャッター方式(機械式/電子式)とセンサー読み出し: 電子シャッターは高fpsを実現できますが、ローリングシャッター歪みや発熱の問題が起こることがあります。
- フォーカス/露出処理(AF/AE): 継続追従AFや高速AF計算を行うほどプロセッサ負荷が増え、実効fpsや持続時間に影響します。
- バッテリー・発熱: 長時間の高速撮影でバッテリー消費と発熱が進み、性能を制限するカメラもあります。
実際に連写可能枚数をテストする方法(再現性のある手順)
信頼できる実測データを得るには次の手順を推奨します。
- カメラを工場出荷直後か、撮影用にフォーマットしたカードを使用する。
- 最高性能のメモリーカード(カメラが対応する最大規格)を1枚用意する。カードの余白を大きく取る。
- 撮影設定を明確にする(RAW/JPEG、連続H/M/L、AFモード、手ぶれ補正オン/オフ、電子シャッター/機械シャッター)。
- AF/AEの継続追従をオンにするか固定にするかを記録する(実戦に合わせる)。
- リモートやタイマーでシャッターボタンを押し、音やカメラの表示で連写終了までの時間を測る。撮れた枚数は画像をPCで確認してカウントする。
- 同条件で複数回(3回以上)測定して平均値を取る。
重要なのは「フォーマット(RAW/JPEG)」「カード種別」「AF動作」の3点を揃えることです。仕様表と違いが出る要因を潰していけば、実務での期待値が掴めます。
連写可能枚数を伸ばす具体策
- ファイルサイズを小さくする: JPEG(高圧縮)を使う、RAWなら圧縮RAW(ロスレスまたは可逆圧縮)を選ぶ。解像度を落とせるなら有効です。
- 高速メモリーカードを使う: UHS-II/UHS-III、CFexpressなど、カメラが対応する最速規格を使用する。カードの持続書き込み速度(sustained write)を重視する。
- カード設定を最適化する: デュアルスロット機は「バックアップコピー(同時書き込み)」にしていると遅くなるため、テスト時や実戦では『プライマリへのみ書き込む』設定にする。
- 電子シャッターの活用: ブラックアウトなしで高速fpsを出せる機種がある。ただしローリングシャッターやフリッカー、発熱に注意。
- AF/AEの設定を見直す: 必要以上に高負荷なAF設定は避ける。シングルAFやAF追従の頻度を下げるなど。
- バッテリーはフルにしておく、冷却対策を考える: 長時間の高速連写では温度管理が重要。
カメラ選びで重視すべきポイント
連写が必要なユーザーがカメラを選ぶ際、次の項目を優先的に確認してください。
- 持続連写秒数(仕様に「何枚/何秒」かが明記されているか)—ピークfpsだけでなく持続時間機能を評価。
- フォーマット別の数値(RAW / JPEG / RAW+JPEG)—運用フォーマットの数値を重視。
- メモリーカード規格の対応(UHS-II、CFexpress等)と実効書き込み速度。
- AF追従性能とEVF/OVF挙動—連写時の被写体追従能力が重要。
- 発熱対策と冷却仕様、バッテリー持ち。
よくある誤解と注意点
- 「高fps=たくさん撮れる」ではない: 高fpsでもバッファが小さければ一瞬で止まります。長時間の連写が必要なら持続性を重視。
- メーカーの“最大枚数”は理想値: 実戦ではAFや高温などで差が出ます。
- カードのランク表示だけで選ばない: カードの継続書込速度(sustained write)が重要で、ベンチマーク値を確認すること。
実戦での運用例
野鳥撮影なら、連写fpsはそこそこ(10–20fps)で良いが、持続秒数は長め(数秒〜十数秒)が望ましい。サッカーなど動きが短期間に高頻度なら、30fpsなどの高fpsで短時間に多く切れる機種が有利な場合があります。状況により「高fps短時間」か「低fps長時間」を選ぶ判断が必要です。
まとめ
連写可能枚数は「何枚撮れるか」という単純な数値以上に、撮影スタイルとワークフローに影響します。仕様値は参考情報として重要ですが、運用フォーマット・メモリーカード・AF設定などで実際の結果は大きく変わります。購入前には自分の運用条件での実測データを確認するか、レンタルや店頭試し撮りで確かめることをおすすめします。
参考文献
- DPReview — Buffer (用語解説)
- Cambridge in Colour — Image File Sizes and Storage
- B&H Explora — How to Choose Memory Cards for Your Camera
- ProGrade Digital — What is CFexpress?
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