Toontrack徹底解説:EZdrummer・Superior Drummer・EZbassの特徴と制作ワークフロー
Toontrackとは:概要と位置づけ
Toontrack(トゥーントラック)は、主にドラム音源と関連ソフトウェアを手がけるスウェーデン発の音楽ソフトウェアメーカーで、プロ/ホームスタジオともに広く使われています。サンプルベースの仮想楽器を中核に、プリセット・MIDIライブラリ・拡張パックを組み合わせて即戦力となる音作りを提供する点が特徴です。特にドラム音源ではEZdrummer(使いやすさ重視)とSuperior Drummer(プロ向けの詳細な音作り)が旗艦製品として知られ、近年はEZbassやEZkeys、EZmixといったラインも揃え、トータルなリズム/アレンジ支援をしています。
主要製品の特徴と使い分け
- EZdrummer:使いやすさ重視の仮想ドラム音源。プリセットと大量のMIDIグルーブを備え、ドラマーではないユーザーでも短時間で“生っぽい”ドラム・トラックを作成できます。直感的なインターフェース、ドラッグ&ドロップでDAWにMIDIを流し込むワークフローが魅力です。
- Superior Drummer:より深い音作りとミキシング機能を提供するプロ向け音源。マルチマイク・レイヤードサンプリングや詳細なアーティキュレーション、個別のミキサー/エフェクトセクションなど、レコーディングスタジオでのドラム制作に近い自由度を持ちます。サンプルの質やミックス処理を重視する場面に適しています。
- EZbass:ベース音源で、ベースラインの自動生成やMIDIの整形機能を持ち、ギター/ピアノなどからのアレンジに合わせた素早いベース作成を支援します。音色のプリセットやアンプ/エフェクト処理も備え、ベース専用の作業フローを簡素化します。
- EZkeys / EZmix:EZkeysは鍵盤系の作曲支援とMIDIプレセットを持つピアノ音源、EZmixは設計済みのミックスチェーンを簡単に適用できるプラグインです。Toontrack製品群は相互に連携でき、相性の良いワークフローを実現します。
サウンドの設計思想と技術
Toontrackのサウンド設計は「高品位サンプル+実用的な操作性」が軸です。以下の要素がプロダクトに共通して見られます。
- マルチマイク・マルチレイヤー収録:スネア、キック、タム、シンバル等が複数のマイクポジションで収録され、ルーム音やオーバーヘッドを含めたバランス調整が可能です(Superior Drummer系では特に詳細)。
- ラウンドロビン/ベロシティレイヤー:同一ヒットのサンプルを複数用意するラウンドロビンと複数の強弱レイヤーにより、繰り返しでも機械的にならない自然な演奏感を生みます。
- 豊富なMIDIライブラリ:ジャンル別・ドラマー別のMIDIグルーブが用意されており、テンポやフィールに合わせた選曲で短時間にトラックを形にできます。EZdrummerには「Tap2Find」やグルーブブラウザ的な機能があり、リファレンスとなるフレーズを素早く探せます。
- 拡張パック(EZX/SDXなど):実際のスタジオで録音されたキットやジャンル特化のライブラリを追加購入でき、音色の幅を拡張できます。これによりポップスからメタルまで幅広いジャンルに対応可能です。
実践的ワークフローとテクニック
Toontrack製品を使う上での代表的なワークフローとコツを紹介します。
- スケッチ段階ではEZdrummerを使ってリズムと構成を固め、クオリティアップや最終ミックス段階ではSuperior DrummerやSDXで差し替えて細かく音作りする—この“段階的”な使い分けが効率的です。
- ドラッグ&ドロップでMIDIをDAWに持って行き、必要に応じてヒューマナイズ(タイミングや強弱の調整)を行う。MIDI編集でフィルやフレーズの切り貼りをして、より楽曲に合った表現に整えます。
- ミックス時は各マイクの位相チェックやアンビエンスの調整を忘れずに。特にドラムのキックとベースは低域で干渉しやすいため、EQで領域を分けるか、サイドチェーンで明瞭さを出す手法が有効です。
- 拡張パックを活用する際は、プリセットそのままではなく、曲のテンポや楽器編成に合わせてルーム量やEQ、コンプの設定を調整しましょう。SDXのような大規模ライブラリはマイクチェーンやルーム特性が個性的なので、状況に応じた最適化が必要です。
ジャンル別の向き不向き
Toontrackの音源はジャンルの幅が広いですが、得意・不得意の傾向はあります。
- ロック/ポップス:高品質なキットと直感的なプリセット群で非常に相性が良い。EZdrummer単体でも短時間で満足できる結果を得やすい。
- メタル/ハードコア:専用のSDXやEZX拡張が多数あり、スピード感とアタックの強いサウンド作りに対応。Superior Drummerと組み合わせれば生ドラム録音に近い詳細な調整が可能。
- ジャズ/アコースティック系:自然なブラシやスネアのニュアンスは収録されているが、完全に“生のドラマー”の繊細さを再現するのは難しい場合もある。録音やマイキングのニュアンスを細かく手直しすると良い。
長所と短所(実務的観点)
- 長所:使い勝手の良さ、豊富なMIDI/サンプル、段階的に使える製品ライン、充実した拡張パック、DAWとの連携の良さ。
- 短所:拡張パックを揃えるとコストがかさむ点、極端に個別のドラマーや独特なルームサウンドを求める場合には生ドラム録音に劣る点、学習コスト(特にSuperior系の細かい設定)は存在する点。
コミュニティとサポート資源
Toontrackは公式フォーラムやYouTubeチュートリアル、各種レビュー記事、MIDIパックのコミュニティシェアなどが充実しています。製品マネージャーからのインストーラーやアップデート提供も行われ、定期的なセールやバンドル提供で導入コストを抑えられることが多いです。学習リソースを活用してプリセットをカスタマイズすることで、よりオリジナルなサウンドを作れます。
導入を検討する人へのアドバイス
- まずはデモやトライアル(公式のデモ音源/動画も参考に)で音色とワークフローの相性を確認すること。
- 作業目的(簡単なデモ作成か、最終マスターに使うか)に応じてEZdrummerとSuperior Drummerのどちらを採用するか判断する。両者は段階的に併用するケースが多い。
- ジャンルに合わせたEZX/SDXの選定は重要。販売される拡張パックはそのキットやルームの個性が強いので、試聴して楽曲に合うものを選ぶ。
- 長期的にはMIDIライブラリや自分のプリセットを増やすことで生産性が上がるため、最初の投資を戦略的に行うことをおすすめします。
まとめ:Toontrackの立ち位置と活用法
Toontrackは「短時間で使える質の高いドラム/リズム制作環境」を提供するブランドです。初心者からプロまで幅広く対応できる製品ラインは、作曲の初期段階から最終的なサウンドメイクまで柔軟に使えます。コストや目的に応じてEZdrummer系で素早くアイデア出しを行い、必要に応じてSuperior Drummerや拡張ライブラリで音質を詰める、という段階的な導入が最も実用的です。
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参考文献
- Toontrack 公式サイト
- Toontrack - Wikipedia
- Sound On Sound:Superior Drummer 3 レビュー
- Sound On Sound:EZdrummer 2 レビュー
- Sound On Sound:EZbass レビュー
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