テリー素材(テリークロス)徹底ガイド:種類・特性・着こなし・ケアとサステナビリティ
はじめに — テリーとは何か
テリー(terry)は、表面にループ(ループパイル)を持つ布地の総称で、日本語では「テリークロス」「テリー素材」「タオル地」とも呼ばれます。吸水性に優れ、肌触りが良いことからタオルやバスローブに古くから使われてきましたが、近年はファッション分野でも素材感を生かしたアイテムが増え、スウェットやドレス、セットアップ、ビーチウェアなど幅広い用途で注目されています。
構造と基本特性
テリーは織物(タオル地)とニット(フレンチテリー/ループバック)の両方に存在しますが、いずれもループ構造が特徴です。
- ループ(ループパイル):繊維が輪のように立ち上がることで表面積が増え、吸水性と保温性を高めます。
- 吸水性:綿など親水性の繊維を使うことで高い吸水力を発揮します。タオル用途では最重要の特性です。
- 肌触り:ループ構造によりソフトでクッション性があり、着用感や触感が良好です。
- 重量感と保温性:ループの高さや密度、素材の太さで生地の重さや保温性が変わります。厚手は保温性が高く、薄手は通気性と速乾性に優れます。
テリーの種類
- タオル地(テリークロス、ウォーブンテリー):従来のタオルに使われる織物のテリー。ループが両面または片面に形成され、ループが切られていない未剪毛の状態で吸水性を確保します。
- ベロアテリー(テリーベロア):ループの一部を刈り込んで毛羽立たせ、毛足を作ったもの。表面がなめらかで光沢感が出るためファッション用途に適します。
- フレンチテリー(ループバックニット):裏面に短いループが残り、表面はフラットなニット生地。スウェットやスウェットシャツに多く用いられ、伸縮性と柔らかさが特徴です。
- パイル(ループ/カットパイル)のバリエーション:ループの高さ(ロングパイル/ショートパイル)、ループを刈ったかどうか(カットパイル=ベルベット調/未刈=タオル調)などで表情と機能が変わります。
素材(原料)と混紡の選択肢
伝統的には綿(コットン)が主流ですが、最近は機能性や環境配慮からさまざまな素材が用いられます。
- 綿(コットン):吸水性、肌触り、耐久性のバランスが良いためタオル・バスローブ・フレンチテリーに最も多く使われます。
- リサイクルコットン/オーガニックコットン:サステナブル志向の製品で増加。環境負荷低減に寄与しますが、品質は原料や紡績方法に依存します。
- ポリエステル混紡/マイクロファイバー:速乾性や軽さを向上させるための混紡が一般的。スポーツウェアや旅行用のタオルで使われますが、マイクロプラスチック流出に注意が必要です。
- バンブー(竹繊維)やモダール:抗菌性や柔らかさをうたうことが多く、肌触りが滑らかです。ただし原料処理の方法で環境負荷が変わります。
生産方法(織り/編み)と加工
テリーの製法は大きく分けて織物とニットの二通りです。織物はパイル織機でループを作り出し、ニット(フレンチテリー)は編みの工程で裏面にループを残します。さらに加工で以下のような変化が付けられます:
- 刈り込み(シアリング)でベルベット調にするベロア加工
- 染色やガーメントダイで個性的な発色を出す方法
- 抗菌・防臭・速乾などの機能加工(ただし寿命や環境影響を確認する必要あり)
ファッションにおけるテリーの歴史とトレンド
テリーはもともと実用性重視のタオル用途から発展しましたが、20世紀中盤以降スポーツウェアやリゾートウェアに取り入れられ、さらにはライフスタイルブランドやハイファッションでも採用されるようになりました。近年は以下のようなトレンドが見られます:
- リラックス志向の高まりでフレンチテリーのスウェットやセットアップが人気
- ビーチやリゾートから街着へと転用されたテリー素材のドレスやシャツ、ショーツ
- ヴィンテージ/スポーツミックスの流行によりタオル地ポロやテリー素材のスニーカーアクセサリの採用
- サステナビリティを訴求するブランドがオーガニックやリサイクル原料のテリーを採用
スタイリングのポイント(実践)
テリー特有のボリューム感や質感を生かした着こなしのコツは以下の通りです。
- トップスにフレンチテリーを選ぶ場合はボトムスをシャープに:ワイドスウェットには細めのパンツやタイトスカートを合わせるとバランスが取りやすい。
- ワンピースやセットアップは素材感を主役に:シンプルな色・カットでテリーの触感を見せるのが効果的。
- レイヤードで質感のコントラストを作る:テリー×デニムやテリー×レザーで表情の違いを楽しむ。
- 季節感の調整:厚手のテリーは秋冬のルームウェアや外出着に、薄手のループバックは春〜初夏の軽装に適する。
ケアとメンテナンス(長持ちさせるコツ)
テリーは吸水性を維持するために日常ケアが重要です。以下の点に留意してください。
- 洗濯時はネットに入れるか裏返して優しく洗う。高温での洗濯や激しい摩擦はループを痛めます。
- 柔軟剤は吸水性を低下させることがあるため、頻繁な使用は避けるか低濃度にする。
- 漂白剤の使用は色落ちや繊維劣化を招くため、必要時は表示に従う。酸素系漂白剤が比較的安全。
- 乾燥は低温のタンブル乾燥か陰干し。直射日光による色褪せやループの硬化を避ける。
- 毛羽立ち・糸の引き裂きが起きた場合はハサミで切らず、引っ張らずに糸を整える。ひどい場合は補修すること。
購入時のチェックポイント
良いテリーを選ぶための実用的なポイントをまとめます。
- GSM(重さ/g/m2):同じ大きさなら重いほど厚手でしっかりした感触。タオルやバスローブは高め、衣料は用途に合わせて選ぶ。
- ループの密度と高さ:密度が高く均一なループは吸水性と耐久性が高い。
- 素材表示:綿100%か混紡か、オーガニック認証の有無などを確認。
- 縫製と仕上げ:縫い目の処理や端部の始末が丁寧かどうかで長持ち度が変わる。
- 用途に合った加工:抗菌・速乾加工は便利だが、加工の持続性や環境影響をチェック。
サステナビリティと環境面の注意点
テリー素材の環境負荷は原料と加工方法で大きく変わります。綿製のテリーは栽培時の水消費や農薬使用が問題になることがあり、リサイクル素材やオーガニック原料の採用は環境負荷低減に寄与します。一方、ポリエステルなど合成繊維を含む製品は洗濯時のマイクロプラスチック放出が懸念されます。
購入時は素材表示やブランドのサステナビリティ情報を確認し、長く使える品質のものを選ぶこと、廃棄時にリサイクルやアップサイクルを検討することが重要です。
まとめ — テリー素材を取り入れる意義
テリーは機能性(吸水性、保温性、快適な肌触り)と独特の質感を併せ持つ素材で、タオルやバスローブに留まらずファッションアイテムとしても魅力的です。選ぶ際は用途に応じた種類(タオル地/フレンチテリー/ベロア等)、素材の原料、ケアのしやすさ、サステナビリティを総合的に判断すると良いでしょう。正しく扱えば長く快適に使える素材ですので、日常のワードローブやリゾートスタイルにぜひ取り入れてみてください。
参考文献
- Terrycloth - Wikipedia
- Terry toweling - Encyclopaedia Britannica
- What Is Terry Cloth Fabric? — The Spruce
- Cotton Incorporated — Cotton and textiles reference
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