キヤノン PowerShot S120 徹底解説:性能・描写・活用テクニックから中古での価値まで

はじめに — PowerShot S120 の位置付け

キヤノン PowerShot S120(発表:2013年)は、携帯性と画質のバランスを重視した小型高級コンパクト機として登場しました。Sシリーズは長年にわたりコンパクトながらもマニュアル操作やRAW撮影を可能にし、スナップや旅行用サブ機として定評があります。本稿ではS120の主要スペックを整理し、描写性能、操作性、動画性能、現代の使用における実用性、中古購入時の注意点まで深掘りします。

主要スペックの整理

  • 発売時期:2013年(発表は2013年6月)
  • センサー:1/1.7型 CMOS(有効約1210万画素)
  • 画像処理エンジン:DIGIC 6
  • レンズ:換算24-120mm相当、光学5倍ズーム、開放F値広角側F1.8(望遠側F5.7)
  • 液晶:3.0インチ タッチパネル(約922kドット)
  • フォーマット:JPEG / RAW(CR2)
  • 動画:フルHD(最大60pまで対応)
  • ISO感度:標準域から高感度(上限は12800相当の拡張設定)
  • 連写・AF:高速連写モードや複数のAFモードを搭載
  • サイズ・重量:携帯性重視の小型ボディ(実測でおよそ100×59×30mm、重量はバッテリー・カード込みで約200g台)
  • その他:マニュアル操作、プログラムAE以外に絞り優先・シャッター優先・マニュアルなどを搭載

デザインと操作性

S120のボディは金属感のある仕上げで高級コンパクトらしい質感を持ちます。グリップは控えめで、薄型ボディゆえに片手での長時間ホールドは疲れることがありますが、ポケットや小さなバッグに収まる携帯性は大きな魅力です。タッチパネルは直感的な操作が可能で、特にメニュー操作やAFポイントの選択で利便性を感じられます。一方で物理ダイヤルやボタン類は抑えられており、素早く細かい設定変更を行うには慣れが必要です。

レンズと光学性能 — 24-120mm相当、広角F1.8の強み

広角側のF1.8は、同クラスのコンパクト機としては大きなアドバンテージです。室内や暗所での手持ち撮影、背景をやわらかくぼかした表現などに寄与します。望遠側はF5.7と暗くなるため、手ぶれや被写体ブレに注意が必要ですが、日中スナップや旅行の風景撮影では十分に実用的です。

光学性能としては中心部のシャープネスは良好で、絞り開放付近でも実用に耐える画質を出します。周辺光量落ち(周辺減光)や倍率色収差は絞りや補正である程度抑えられますが、極端に解像を求める向きには制約があります。広角端での歪み補正やシャープネスは画像処理エンジン(DIGIC 6)による補正も効いているため、JPEG撮って出しでも満足度が高いのが特徴です。

センサーと画質の実力

1/1.7型・約1210万画素のセンサーは高解像ながらも、画素ピッチは限られるため大判クロップや過度なトリミングには弱い一面があります。とはいえ、DIGIC 6の高性能ノイズ処理と組み合わせることで、同クラスにおける総合的な描写性能は高く、色再現や階調にも優れます。

RAW現像を行うと、JPEGとは異なる粘りのある階調や白飛び/黒つぶれの回復が可能です。特にハイライトやスキントーンの処理ではRAWが有利で、露出をややアンダーに振っておいて現像で補正するワークフローが効果的です。

高感度域と実用性

S120はISO感度の拡張で高い数値を設定できますが、実用的な高感度限界は機材と用途によります。webや小さいプリントならISO1600〜3200でも十分ですが、細部の解像感やノイズ耐性を重視するならISO800前後での運用がおすすめです。ノイズリダクションの強弱やシャープネスの調整は現像ソフトで細かく補正可能です。

オートフォーカスと連写性能

AF性能はシーンにより安定感があります。コントラスト方式のAFが主体で、低照度や被写体コントラストが低い場面では迷いが生じることがありますが、画面中央のAFは比較的確実です。連写に関しては高速度撮影モードが用意され、スナップや動きのある被写体にも対応できます。ただしバッファ制約や追従性は一眼レフやミラーレスに及びません。

動画性能 — フルHD 60pのメリット

当時としてはフルHD/60p対応は魅力的で、滑らかな映像表現が可能です。コンパクトボディゆえに手持ち撮影が中心となるため、手ぶれ補正(IS)を活かしたスナップ動画に向いています。オーディオは内蔵マイクに限られるため、本格的な収音が必要な場合は外付け録音機との併用を検討してください。

現代で使うための設定と実践テクニック

  • RAW+JPEGで撮る:後処理での階調やノイズ対策を確保するため。
  • 広角F1.8を活かす:背景をぼかしたポートレートや室内スナップで被写界深度表現を活用。
  • 手ぶれ対策:望遠側や低速シャッターではISOを上げるか、シャッタースピードを確保する。
  • 露出補正を活用:反射や逆光ではプラス/マイナス補正で白飛び黒つぶれを回避。
  • ライブビューでの拡大確認:ピントの追い込みは撮影直後に拡大して確認する習慣を。

競合機との比較 — 特にソニーRX100シリーズとの違い

当時のライバルはソニーのRX100シリーズ(とくに初代RX100)でした。RX100は1.0型センサーを搭載しており、同じクラスではより高い高感度耐性やボケ味が期待できます。一方でS120はより小型で広角24mmスタートかつF1.8の明るい広角が特徴で、室内や旅行スナップでの扱いやすさに秀でます。画質のみで比較するとRX100に分がある場面もありますが、携帯性や操作感、コストを含めた総合的な満足度は用途次第です。

アクセサリーと運用上の工夫

  • 外付けストラップや小型ハンドストラップで落下防止とホールド性を向上。
  • 予備バッテリー(NB-6L相当)を持つ:CIPA基準での撮影枚数は限られるため長時間撮影には必須。
  • 小型三脚やミニ一脚:夜景や低速シャッター撮影で有効。
  • リモート撮影やセルフタイマーを活用したセルフィー/集合写真。

中古市場での価値と購入時のチェックポイント

S120は発売から年月が経過しているため中古で入手しやすく、機能的には現代でも十分使えるモデルです。購入時のチェックポイントは以下の通りです。

  • 動作確認:電源、ズーム、AF、再生、タッチパネルの反応。
  • 外観:レンズ周りのキズやカビ、液晶のドット抜け。
  • バッテリー持ち:実使用での撮影枚数確認。劣化しているなら予備や交換を検討。
  • シャッター回数(目安):仕様上明確な寿命はないが、酷使された個体は要注意。

総評 — どんなユーザーに向くか

PowerShot S120は「常に携帯して気軽に高画質を得たい」ユーザーに向きます。広角F1.8という強みと堅実なJPEG性能、RAW対応による柔軟な後処理が魅力です。1インチセンサー機に比べると高感度耐性やトリミング耐性で劣る場面はありますが、街歩き、旅行、夜のスナップ撮影などの用途では今なお有用な選択肢です。中古市場ではコストパフォーマンスも高く、初めての高級コンパクトやサブ機を探す人にはおすすめできます。

参考文献