アルミガラスクロス徹底ガイド:構造・性能・施工・用途まで建築・土木で使う際の実務ポイント
アルミガラスクロスとは
アルミガラスクロスは、ガラス繊維で織ったクロス(ファブリック)にアルミ箔をラミネート(貼合)した複合建材です。ガラス繊維の優れた耐熱・機械的性質と、アルミニウム箔の高い反射性・気密性を組み合わせたもので、断熱・遮熱・防火・気密・防湿など複数の機能を発揮します。外観は銀色の布状素材で、薄く柔軟なため曲面や配管・ダクトの巻付け、シーム処理がしやすいのが特徴です。
構造と製法(種類)
基材:ガラス繊維クロス(織物)を用います。Eガラス系の短繊維を紡糸して織った布が一般的で、編み方や織り密度で強度と柔軟性が変わります。
表面処理:ガラスクロスは表面にシリコーン・アクリル・フッ素系などのコーティングを付与して、耐候性や耐摩耗性、離型性を持たせる場合があります。
ラミネート層:片面あるいは両面にアルミニウム箔を熱接着または接着剤で貼り合わせます。箔の厚さ(例えば数μm〜数十μm)や表面仕上げ(光沢、マット、発泡アルミ等)により性能が変わります。
付加機能:耐熱用のシリコーン粘着剤や、自己粘着テープ付き、ガラスクロスにステンレスやポリエステルの補強糸を組み込んだ製品など、用途に応じたラインナップがあります。
主な物性・性能(実務で押さえる点)
耐熱性:ガラス繊維自体は高温に強く(短時間で数百度にも耐える種類があります)が、アルミ箔や接着剤、コーティングが耐熱上の弱点になることがあります。製品ごとの最高使用温度は必ずデータシートで確認してください。
反射性・放射抵抗:アルミ箔により放射熱を反射する性能をもち、遮熱材として有効です。表面の粗さや酸化状態により放射率は変化します。
気密・防湿性:アルミ層が水蒸気透過を低減し、湿気の移動を抑制します。ただし継手や貫通部分でのシール処理が不十分だと効果は低下します。
耐火性:ガラス繊維は不燃材であり、アルミニウムも燃えることはありませんが、接着剤や表面コーティングが燃える場合があるため、施工部位の防火性能は材料単体・施工後両方で評価する必要があります。
機械的性質:引張・引裂き強度が高く、配管巻き付け時の扱いやすさに優れますが、端部のほつれやカット面でガラス繊維の飛散が起こることがあります。
主な用途(建築・土木分野での適用例)
ダクト・配管の断熱・遮熱:冷暖房ダクトや温水・蒸気配管の表面処理・巻付け材として使用されます。防露防止や外装保護の役割も果たします。
屋根・外壁の遮熱下地:屋根下地や外壁通気層内での遮熱材として用いられ、室内温度の上昇抑制に貢献します。
防火被覆・防炎カーテン:不燃性を活かして、配管や構造部材の被覆材、工事現場の防火カーテンなどに用いられます。ただし製品仕様での火認定が必要です。
機器の断熱・遮熱:ボイラ周辺、炉扉の裏当て、加熱設備の保温や遮熱板として使用されます(高温用はシリコーン接着タイプなど)。
復旧・補修:既設ダクトや配管の局所補修、断熱性能劣化部分の巻き替えなど、メンテナンス用途にも適します。
施工のポイント(現場での注意点)
下地処理:表面の油分・水分・ほこりを除去する。凹凸がある場合は平滑化が必要です。
重ね代とシーリング:製品ごとの推奨重ね代(一般的に50mm以上を推奨するケースが多い)を確保し、アルミテープやアルミコーキングで気密・防湿処理を行います。
固定方法:バンド(ステンレスバンド等)や縫製、接着剤で固定。高温部では耐熱バンドや耐熱接着剤を選択すること。
貫通部の処理:ダクト貫通や配管貫通部は特に漏れやすいため、アルミテープ、シリコーンシーラント、専用ガスケットで確実にシールします。
端部の処理:切断面からの繊維飛散を防ぐため、端部はコーティングやテープで被覆しておく。作業者は保護手袋・防塵マスク・保護メガネを着用してください。
性能評価・試験(確認しておくべき項目)
最高使用温度・短期許容温度:接着剤や被覆の耐熱温度を必ず確認。
燃焼試験(炎の伝播、発煙性):製品単体及び施工状態での燃焼・発煙試験結果を確認すること。建築用途では地域の防火規制に適合するか確認が必要です。
水蒸気透過率・透湿抵抗:結露リスクがある場合は、防露設計上重要な指標です。
耐候性・紫外線劣化:屋外露出が想定される場合は、アルミ箔の酸化やコーティングの劣化を考慮します。
機械的強度(引張・引裂):現場の応力に耐えられるか確認します。
メリットとデメリット
メリット:軽量で柔軟、施工性が良く、放射熱反射・防湿・ある程度の防火性能を兼ね備える。既存設備への巻付け・補修が容易。
デメリット:継手管理が不十分だと性能が落ちる。アルミ箔の穴や傷で防湿性が低下する。接着剤やコーティングにより耐熱・防火性が変わるため、用途に応じた製品選定が必須。
他素材との比較(実務的観点)
アルミ箔単体:より優れた気密性はあるが、機械的強度と施工性ではアルミガラスクロスに劣る。
グラスウール等の柔軟断熱材:熱伝導による断熱(導熱抑制)はグラスウールに優れる場合があるが、表面の仕上げや耐候性、防湿処理が必要。アルミガラスクロスは表面保護(反射・気密)と保護被覆に適する。
高温用セラミック繊維:非常に高温に強いがコストと取り扱いの難しさがある。アルミガラスクロスは中温域でのコストパフォーマンスが高い。
選定チェックリスト(仕様書作成に役立つ項目)
最高使用温度(連続/短期)
アルミ箔の厚さ・仕上げ(光沢/マット/発泡)
片面/両面ラミネート、コーティング種類
接着方法(熱圧着、接着剤)および粘着タイプか否か
推奨重ね代・固定方法・シーリング材の指定
耐候性試験、燃焼試験の結果(必要に応じて第三者試験成績書)
環境・廃棄、リサイクルに関する情報
施工時の安全・環境配慮
切断や加工時にガラス繊維の粉塵が発生するので、N95相当の防塵マスク、保護手袋、保護眼鏡を着用してください。
アルミ箔は薄く鋭利になることがあるため、手や周辺の仕上げ材を傷つけないよう注意する。
廃材処理:ガラス繊維を含む廃材は自治体の規定に従って廃棄。リサイクルされるケースもあるため、メーカーの回収プログラムを確認すると良い。
メンテナンスと寿命
外気に長期間曝露される場合、アルミ箔の酸化やコーティングの劣化で見た目や一部性能が低下します。ダクトや配管被覆として用いる場合は、年次点検で継手のシール状態、破れ・めくれの有無を確認し、必要に応じて補修(テーピング、再巻付け)を行ってください。屋外での露出がある場合は、上から追加の外装材や保護板を設けることで寿命を延ばせます。
実務的な活用例と注意点(ケーススタディ)
冷凍機配管の防露対策:内部の蒸気移動を抑えるためにアルミガラスクロスで巻き、重ね目をアルミテープで密封する。接続部は専用のシール材で処理しないと結露原因となる。
屋根裏の遮熱施工:天井裏のルーフィング代替として用いる場合、湿気の逃げ道を確保する通気設計と合わせることが重要。単に箔を貼るだけでは結露を誘発する可能性がある。
まとめ
アルミガラスクロスは、軽量で柔軟、遮熱・防湿・一定の防火性能を併せ持つ便利な建築資材です。設計段階では使用温度・燃焼特性・継手の気密処理を重視して製品を選定し、施工段階では重ね代・シール処理・固定方法を厳守することが性能発現の鍵となります。メーカーのデータシートや第三者試験結果を必ず確認し、用途に応じた仕様設計と安全対策を行ってください。
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