ピアジェ(Piaget) — 歴史・技術・名作モデルを徹底解説
ピアジェとは
ピアジェ(Piaget)はスイスの高級時計・ハイジュエリーブランドで、1874年にジョルジュ=エドゥアール・ピアジェ(Georges-Édouard Piaget)が創業したのが始まりです。創業地はジュラ地方のラ・コート・オ・フェ(La Côte-aux-Fées)。当初は高精度なムーブメント(エボーシュ)の製造を中心に事業を展開し、のちに自社名義の時計とジュエリーの制作に進出しました。
創業から現代までの歩み
ピアジェは19世紀後半に小規模な作業場で創業しましたが、品質の高いムーブメントの供給で評判を築き、20世紀中頃には自社ブランドでの時計製造に注力しました。1950年代以降、特に薄型ムーブメントの開発により国際的な注目を集めます。家族経営を経て、1988年にリシュモン(Richemont)グループの傘下に入ることで資本・国際展開が強化されました。
ムーブメントの革新 — 超薄型への挑戦
ピアジェの最もよく知られた特徴の一つは「超薄型ムーブメント」の開発です。代表的なマイルストーンは以下の通りです。
- キャリバー9P(1957年):手巻きの超薄型ムーブメントとして発表され、厚さ2mm前後という薄さを実現しました。これにより薄型ドレスウォッチの製作が可能になり、ピアジェの名を広めました。
- キャリバー12P(1960年):自動巻きでマイクロローター(ローターをムーブメント内に組み込む方式)を採用した超薄型キャリバーです。自動巻きでありながら薄さを保つという技術的達成は、当時の時計業界に大きな衝撃を与えました。
- 近年の薄型記録:ピアジェは21世紀に入っても薄さの記録を更新してきました。例として、ケースとムーブメントを一体化した設計で薄型化を極めたモデルや、極薄機構を追求した限定コレクションなど、技術力と設計力を示すモデルを発表しています(例:Altiplanoシリーズにおける薄型モデル群や、アルティプラノ・アルティメイト・シリーズなど)。
デザインとジュエリー技術
ピアジェは単なる時計メーカーではなく「ハイジュエラー」としての側面が強いブランドです。ゴールドやプラチナを主体としたケース作り、希少な宝石を用いたセッティング、ブレスレットの芸術的なデザインなど、ジュエリー職人の技術が時計製造に深く組み込まれています。
- 宝石のセッティング技術:密集セッティング(フルパヴェ)や、独自のカッティングと組み合わせた複雑な石留めで、時計全体を宝飾品として昇華させます。
- 一体型ブレスレットの美学:1960〜70年代に発展したゴールド製の一体型ブレスレットは、ピアジェのアイコン的表現の一つです。装着感と見た目の連続性を重視した設計が特徴です。
- ジュエリーウォッチの伝統:ダイヤモンドやカラー・ジェムをふんだんに用いた女性用のラグジュアリーウォッチはピアジェの得意分野で、レッドカーペットなどハイジュエリー需要に応えています。
代表的なモデルとコレクション
ピアジェのラインアップにはドレスウォッチからハイジュエリーウォッチ、スポーティモデルまで幅広く存在します。主要なコレクションを挙げると:
- Altiplano(アルティプラノ):超薄型ドレスウォッチを中心としたコレクション。ムーブメントの薄さとエレガントなデザインを重視しています。
- Polo(ポロ):1970年代末に誕生したスポーティ・ラグジュアリーライン。現代でもピアジェのアイコンモデルの一つとして位置付けられています。
- Limelight / Possession(リミットライト/ポセション)などのハイジュエリーライン:女性向けにデザインされた宝飾時計・ジュエリーを含むコレクション。高い装飾性が特徴です。
- ハイコンプリケーションや限定モデル:トゥールビヨン、永久カレンダー、ミニッツリピーター等、ハイエンドの複雑機構モデルも製作しており、マニュファクチュールとしての能力を示しています。
製造体制とマニュファクチュール性
ピアジェはムーブメント設計・ケース製作・宝飾仕上げまで自社内もしくはグループ内の専門工房で行う「マニュファクチュール」です。ジュラ地方のアトリエ(La Côte-aux-Fées)と、ジュネーブの拠点を中心に、高度な職人技術を保持しています。これは、設計から組立、仕上げ、宝石のセッティングに至るまで一貫した品質管理を可能にしています。
購入時・コレクター目線でのポイント
ピアジェを購入・コレクションする際に押さえておきたいポイントは以下です。
- ムーブメントの種類と由来を確認する:自社製キャリバー(9P、12Pなど)や現代の自社ムーブメントかどうかで価値観が変わります。
- 素材と宝飾の品質:ゴールドの刻印、宝石の品質・グレード、セッティングの技術を確認してください。ハイジュエリーウォッチは鑑定書や証明書が重要です。
- シリアル・証明書・サービス履歴:正規の保証書やサービス履歴があるかで中古市場での価値や信頼性が変わります。
- ヴィンテージモデルの流通:1960〜70年代のゴールドケースや薄型ドレスウォッチはコレクター人気が高く、状態次第で評価が上がります。
メンテナンスと長期的な視点
高級機械式時計として、定期的なオーバーホール(通常3〜5年が目安)や防水機能の点検、宝飾パーツのチェックが必要です。特に超薄型ムーブメントや宝飾時計は精密で取り扱いに注意が必要なため、正規サービスセンターでのメンテナンスを推奨します。パーツの供給や技術サポートが重要なので、購入時には正規販売店での購入や、保証書の確認が安心です。
ピアジェの位置づけと今後
ピアジェは「超薄型技術」と「高い宝飾力」を武器に、他ブランドとは一線を画すポジションにあります。時計としての機械的価値に加え、ジュエリーとしての審美性を併せ持つピアジェの作品は、いわゆる時計愛好家だけでなくハイジュエリーマーケットの顧客にも支持されています。今後も技術革新(薄型技術や新素材の導入)とハイジュエリーの融合がブランドの核になると考えられます。
まとめ
ピアジェは1874年創業以来、ムーブメント製造からスタートして「薄さの美学」と「ジュエリー職人の技」を融合させてきたブランドです。キャリバー9Pや12Pに代表される超薄型ムーブメント、AltiplanoやPoloといった象徴的なコレクション、そしてハイジュエリー技術に裏打ちされた装飾性は、ピアジェを特別な存在にしています。購入やコレクションを検討する際はムーブメント由来、素材・宝飾の品質、サービス体制を重視すると良いでしょう。
参考文献
- Piaget 公式サイト
- ウィキペディア(日本語): ピアジェ(企業)
- Hodinkee: Piaget 関連記事
- A Blog To Watch: Piaget タグ記事
- Richemont(リシュモン)公式サイト
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