チューダー(Tudor)の歴史・名作・技術解説|ブラックベイからペラゴスまで
はじめに — チューダー(Tudor)とは
チューダー(Tudor)は、ロレックスの創業者ハンス・ウィルスドルフ(Hans Wilsdorf)がより手頃な価格で信頼性の高い腕時計を提供する目的で設立したブランドです。高い耐久性や実用性を重視しつつ、ロレックスとは異なる独自のデザインや価格帯で市場に位置づけられています。近年は「Black Bay(ブラックベイ)」や「Pelagos(ペラゴス)」といった人気モデルの登場で、コレクターや一般愛好家の注目を集めています。
ブランドの歩み(主要年表と背景)
- 1926年:「TUDOR」の商標が登録され、ブランドの種がまかれました。
- 1946年:ハンス・ウィルスドルフがモントル・チューダー社(Montres Tudor SA)を設立し、本格的に展開を開始しました。以降、ロレックスの信頼性を受け継ぎつつ別路線の製品開発を行います。
- 1950〜1960年代:オイスターケースを採用した「Oyster Prince」や、潜水時計「Tudor Submariner(チューダー サブマリーナ)」を展開。多くの軍や専門組織に採用されました。
- 1960年代後半〜1970年代:「スノーフレーク(Snowflake)針」と呼ばれる直線的な時針・分針を採用。視認性向上と個性的なデザインが特徴です。
- 2012年:「Heritage Black Bay」が発表され、ヴィンテージ雰囲気を現代的に再解釈したデザインで商業的成功を収め、ブランドの再評価が始まりました。
- 2015年以降:自社製ムーブメント(MT系)の導入を開始。2015年のNorth Flagなどから順次、製造能力と技術を高めていきます。
ロレックスとの関係:独立したブランドだが深い縁がある
チューダーはロレックスと同じ創業者を持ち、かつてはケースや部品にロレックス製の要素(オイスターケースやねじ込みリューズなど)を取り入れていました。ただしムーブメントは長年にわたりETAなど外部メーカーの汎用ムーブメントを採用することで価格を抑えてきました。近年は自社製ムーブメントを導入し、製品の差別化と技術的自立を進めています。所有構造としてはモントル・チューダー社はロレックス創業者に由来する基盤のもとにありますが、ブランドとしては独自の方針で運営されています。
デザインの特徴とアイコン要素
- スノーフレーク針:1960年代にフランス海軍(Marine Nationale)向けの採用から有名になった太く角張った形状の針。視認性が高く、チューダーのアイコンとなっています。
- ヴィンテージの意匠を現代化したデザイン:ブラックベイシリーズに見られる飽きの来ないベゼル形状やダイアルの「ギルト(燻し金)」調の仕上げなど。
- 素材と仕上げの進化:チタン採用のペラゴス、ブロンズケースを用いたモデルなど、素材実験も積極的です。
代表的なモデルとその魅力
- Heritage Black Bay:2012年の登場以来、チューダー復権の顔となったシリーズ。ヴィンテージサブマリーナの意匠を継承しつつ、現代的なサイズと仕上げで幅広い層に支持されています。ブラックベイ 58はより小ぶりでクラシックなプロポーションを備え、特に人気です。
- Pelagos:チタンケース、500m防水、ヘリウムエスケープバルブなど実用性を極めたダイバーズ。軽量で耐食性が高く、非常に実用的な仕様を持ちます。
- Submariner(ヴィンテージ):チューダーのサブマリーナ系は長年にわたり各国の軍隊でも採用され、実用性での評価が高いです。コレクター間での人気も根強い。
- North Flag / Ranger / Heritage Chrono:それぞれ冒険・探検やレーシング由来のデザインで、チューダーの幅広いラインナップを示します。クロノグラフ系は従来のヴィンテージスタイルを現代解釈したものが多いです。
ムーブメントの変遷と技術
チューダーは長くETAなど汎用ムーブメントを採用してコストパフォーマンスを実現してきましたが、2015年のNorth Flagを皮切りに自社製ムーブメント(MTシリーズ)を導入しました。MT系は耐磁性、精度、パワーリザーブの向上を目的として設計されており、MT5602、MT5612、MT5621などモデルごとに異なる仕様を持ちます。
またクロノグラフではMT5813(ブラックベイ クロノなど)を採用しています。これはブレゲやB01系の技術協力のもと開発されたとも報じられており、外装だけでなくムーブメント面でもブランドの評価を高めています。なお、MT系の多くはクロノメーター規格(高精度)と高い信頼性を目指して設計されています。
ミリタリーとの関わりとフィールド実績
チューダーのダイバーズウォッチは、特にフランス海軍(Marine Nationale)をはじめとする公的組織に長年採用された実績があります。こうした軍用採用は現場での信頼性と耐久性が評価された結果であり、ヴィンテージのモデルがコレクターズアイテムとして高値で取引される要因にもなっています。
市場価値とコレクション性
近年のブランド再評価により、チューダーの一部モデル(特に初期のブラックベイや希少なヴィンテージ)は中古市場での人気が上昇しています。チューダーはロレックスほどの超プレミア価格には至らないものの、コストパフォーマンスの高さから新規ユーザーの取得力が強く、結果として中古需要も安定しています。投資目的での購入は慎重さが必要ですが、実用時計としての満足度は高いと言えます。
購入・メンテナンスのポイント
- 購入時:正規販売店での購入を推奨します。保証やアフターサービスの観点で安心です。
- ムーブメント選び:ETA搭載モデルはメンテ費用や交換部品の流通性で有利な面がありますが、自社製ムーブメント(MT系)搭載モデルは精度やパワーリザーブで優れています。
- 防水性の維持:ダイバー系モデルは定期的な防水検査を受けること。海で使う場合は特に注意が必要です。
- メンテナンス周期:機械式時計として定期的なオーバーホール(一般に4〜6年)が推奨されます。
まとめ — チューダーの現在地と魅力
チューダーはロレックスの信頼性を血統に持ちながら、独自のデザインと現代的な技術導入で確立したブランドです。ヴィンテージの遺産をうまく活かしつつ、ブラックベイやペラゴスの成功で新たなファン層を獲得しました。価格帯と品質のバランスの良さから、初めて機械式高級時計を選ぶ人にも非常に魅力的な選択肢となっています。
参考文献
- TUDOR(公式サイト)
- Rolex:Hans Wilsdorf(ロレックス | ハンス・ウィルスドルフ)
- Wikipedia: Tudor (watch)
- Hodinkee: Introducing the Tudor Black Bay(ブラックベイ紹介記事)
- Fratello Watches: The history of Tudor’s Snowflake hands
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