下層路盤(サブベース)を徹底解説:設計・材料・施工・維持管理の実務ポイント

下層路盤とは何か:定義と位置づけ

下層路盤(サブベース)は、舗装構造において基層(ベースコース)の下に配置される路盤層の一つで、一般に「下層路盤」と呼ばれます。路盤構成は上から表層(アスファルト混合物など)、基層(上層路盤)、下層路盤、さらにその下に締め固められた盛土や天然地盤(路床)が続きます。下層路盤は舗装全体の荷重支持、排水、凍結抑制、施工性確保など複数の機能を担います。

下層路盤の主な役割

  • 荷重分散:車両荷重をより広い範囲で路床に伝達し、地盤沈下や局部的損傷を抑える。
  • 排水機能:毛細管上昇を抑え、表層への水の滞留を避けることで凍害や早期劣化を防止。
  • 施工性の向上:均一な支持層を作ることでローラーや機械の施工を安定させる。
  • 凍結・融解の緩衝:透水性や凍結特性の適切な選定により、凍上や凍結融解損傷を低減する。

材料の種類と特徴

下層路盤に用いられる材料は目的や設計方針により異なります。代表的な材料は次の通りです。

  • 砕石(粗粒性材料):高い強度と透水性を有し、荷重支持と排水性の両立が可能。粒度調整と締固めで所定の強度を出す。
  • 安定処理土(セメント安定、石灰安定など):細粒分が多い地盤でも強度を確保できる。乾燥収縮や長期強度変化を考慮する必要がある。
  • 再生材(リサイクル砕石、再生アスファルト混合物など):資源循環の観点から採用が増加。材料の品質ばらつきに注意。
  • 天然砂・砂利混合:安価だが耐荷重性や透水性で制約があり、適切な選別と層厚設計が重要。

設計指針と設計パラメータ

下層路盤の設計は、交通荷重、下部地盤の支持力(CBR、動的ばね係数など)、排水条件、気候(凍結深さ)を考慮して行います。従来の経験設計に加え、最近は力学的設計(弾性解析や弾性-塑性解析、メカニスティック・エンピリカル)も普及しています。

代表的な設計パラメータ:

  • 厚さ(一般的な目安):道路種別や交通量により幅があるが、一般道路でおおむね150〜500mm程度。幹線や重交通ではさらに厚くすることがある。
  • CBR(California Bearing Ratio):下層路盤が路床を保護するための基準として用いられる。下層路盤材料自体の設計では、必要な支持力に応じて材料選定と厚さを決定する。
  • 透水係数:排水性を確保するための設計指標。透水性が低いと水が滞留し凍害や強度低下を招く。
  • 締固め度:最大乾燥密度に対する達成率で、一般に表層側ほど高い基準が要求されるが、下層路盤でも所定の締固め度を満たす必要がある。

施工方法と注意点

施工は材料調達、敷均し、散布(必要時安定材)、締固めの順で行います。下層路盤は基層・表層の施工前に確実に完成させる必要があります。

  • 地盤整正:路床の不陸・軟弱部の除去・改良を行い均一な支持を準備する。
  • 敷均しと層厚管理:一層あたりの厚さを適切に区切り、転圧が有効に働くようにする。厚すぎる敷厚は締固め不良の原因。
  • 転圧:ローラー選定(振動ローラー、静荷重ローラー等)と締固めパターンが品質に直結する。含水比の管理も重要で、最適含水比付近での締固めが効果的。
  • 表面保護と養生:安定処理土では湿潤・乾燥管理や初期の交通制限が必要。洗掘や雨水流入に対する一時的な養生も実施する。

品質管理と試験方法

品質管理は舗装長寿命化の鍵です。主要な検査と試験は以下の通りです。

  • 受入試験:材料の粒度試験、含水比、試験片強度(安定材混合時)など。
  • 現場密度試験:軽度貫入試験やプレート載荷試験、ベーン試験(細粒土)などを適宜実施。
  • CBR・動的載荷試験:設計時・設計検証に用いる。舗装の長期性能評価では反復載荷試験やレジリエントモジュラス(弾性係数)を用いることがある。
  • 平坦性・厚さ測定:レーザー器具やプロファイラで表面の不陸を確認し、所定の厚さが確保されているか確認する。

排水・凍結対策

下層路盤は排水性能を持たせることで、舗装の凍害や坑道を防ぎます。透水性材料を用いるか、適切な勾配や横断排水を計画します。寒冷地では凍結深さに対する配慮が必要で、透水性を高めると同時に下層の保温や凍結抑制材の導入を検討します。

特に注意すべき点:

  • 毛細管上昇の抑止:細粒分の侵入を防ぐフィルター布や層間の粒度分級を行う。
  • 凍上対策:低温では水が凍ることで容積膨張が生じるため、凍結深さより厚く凍結影響を受けない層厚を確保するか、透水性と空隙率で影響を緩和する。

環境配慮と再生材の活用

近年、資源循環やCO2削減の観点から再生材や副産物を活用した下層路盤が注目されています。再生砕石、再生アスファルト、スラグ等を使用することでコスト低減と環境負荷低減が期待できますが、材料ごとの長期挙動やばらつき、化学的影響(硫酸塩等)を評価する必要があります。また施工時の粉塵・騒音対策、周辺環境への流出防止策も重要です。

維持管理と補修の考え方

下層路盤は見えない層であるため、表層や基層の劣化を通じて問題が顕在化します。早期に水が浸入すると下層の強度低下や凍上・沈下を誘発します。維持管理では以下を重視します。

  • 表層のひび割れ補修とシール:クラックからの雨水浸入を防止する。
  • 排水施設の清掃・維持:側溝やマンホールの詰まりを解消し、路盤への浸透を防ぐ。
  • 局部補修:沈下や空洞が発見された場合は早めに剥ぎ取り再施工を行う。簡易補修では注入工法(グラウト等)も選択肢となる。

設計・施工での実務上のポイント

  • 設計段階で現地地盤調査を十分に行い、CBRや弾性係数による荷重伝達評価を実施する。
  • 材料のばらつきに対する許容を明確にし、発注仕様で品質管理基準(粒度、含水比、締固め度)を明示する。
  • 施工中は天候による含水比の変化に注意し、必要に応じて乾燥や散布処理を行う。
  • 長期維持を考え、透水性・排水性を確保しつつ、凍結地域では氷結に対する予防設計を行う。

まとめ

下層路盤は舗装構造の中で重要な機能を担う不可視の要素です。正しい材料選定、適切な厚さ設計、厳格な施工管理、そして排水対策と維持管理が組み合わさることで舗装全体の耐久性が確保されます。近年は再生材利用や力学的設計手法の導入により設計の自由度が高まる一方で、材料品質や長期挙動の評価がますます重要になっています。実務では設計基準や現地条件を踏まえ、トータルで最適化することが求められます。

参考文献