骨材とは何か?種類・特性・コンクリート設計での使い方を徹底解説

はじめに:骨材の重要性

骨材はコンクリートやモルタルの主要構成材料であり、体積の約70〜80%を占める。骨材の種類や性状は、ワーカビリティ、強度、耐久性、収縮・クラック挙動などコンクリートの多くの特性に直結するため、設計・施工・品質管理の観点から極めて重要である。本コラムでは骨材の定義、分類、物理化学的性質、試験方法、設計上の考慮点、再生骨材の利用までを詳しく解説する。

骨材の定義と役割

骨材とは、セメント糊体と混ぜてコンクリートやモルタルを構成する粒状の材料を指す。一般に細骨材(砂)と粗骨材(砕石・砂利)に区分される。骨材の主な役割は以下の通りである。

  • 体積の増加とコスト低減:セメント使用量を相対的に低減し経済性を向上させる。
  • 力学的骨組みの付与:骨材粒子間の接触による荷重伝達で圧縮強度に寄与する。
  • 寸法安定性の改善:収縮や熱膨張特性に影響を与える。

骨材の分類

骨材は原料や製造法、粒径で多面的に分類できる。代表的な分類を示す。

  • 原料別
    • 天然骨材:河川砂、海砂、砕石されていない自然の砂利・砂など。
    • 人工骨材(人造骨材):砕石、焼成スラグ、軽量骨材(膨張シェール、膨張ベントナイト等)。
    • 再生骨材:コンクリート廃材を破砕・選別したもの。
  • 粒径別
    • 細骨材:通常、最大寸法が4.75mm(JIS等の規定により変わる)以下のもの。
    • 粗骨材:4.75mmを超える骨材。最大寸法は設計や型枠寸法、鉄筋配筋によって選択される。
  • 形状・比重別
    • 普通骨材、軽量骨材、高比重骨材(放射線遮蔽コンクリートなどに使用)

骨材の主要特性とその評価指標

コンクリート設計で重要な骨材特性と代表的な評価方法を整理する。

  • 粒度(粒度分布、級配)
    • 目的:空隙率や単位水量、ワーカビリティ、ポンプ性に影響。
    • 評価方法:篩分試験(ふるい分析)と粒度曲線による判定。
  • 比重・密度(真比重、表面乾燥密度、ばら密度)
    • 目的:配合設計で体積計算に用いる。軽量骨材は比重が小さく、設計強度や断熱性に影響。
  • 吸水率・含水状態
    • 目的:混練時の有効含水量に影響するため、配合水量の補正が必要。
    • 吸水率が高い骨材はワーカビリティ低下や内部乾燥収縮に影響を与える。
  • 形状・表面性状(丸み、角張り、粗さ)
    • 目的:角張った骨材は空隙が大きくなり単位水量が増えるが、付着性が良く圧縮強度に寄与しやすい。
  • 強度・機械的耐久性
    • 目的:骨材自体の破砕抵抗、凍結融解耐性、摩耗抵抗などが長寿命コンクリートの要件となる。
  • 化学的性質(アルカリシリカ反応、硫酸塩反応など)
    • 目的:特定の鉱物組成を持つ骨材は化学的反応を起こし、膨張や劣化を招く可能性がある。事前の試験や選定が必要。
  • 不純物・有害物質(有機物、粘土、塩分など)
    • 目的:これらは付着不良、空洞、膨張や防食性低下の原因となる。洗浄や除去、試験での管理が必要。

代表的な試験方法と品質管理

現場や試験室で頻繁に行われる骨材試験を紹介する。JISや各国規格に基づくことが多いが、ここでは一般的な方法を述べる。

  • ふるい分け試験(篩分試験)
    • 目的:粒度分布を求めて配合や統合度(グラデーション)を評価する。砂利や砕石は規定のふるいを用いて級配を確認する。
  • 吸水率と含水状態の測定
    • 目的:乾燥質量、飽和表面乾燥質量、含水状態を把握し、混練時の有効水量を決定する。
  • 比重およびばら密度測定
    • 目的:骨材の質量から体積を計算し、配合設計に反映する。
  • 有害物質の検査
    • 有機物試験、粘土分試験、塩分量試験など。特に海砂は塩分(塩化物)による鉄筋腐食リスクを評価する必要がある。
  • アルカリシリカ反応(ASR)試験
    • 骨材中の反応性珪酸がコンクリート中のアルカリと反応してゲルを生成し膨張する現象。長期耐久性に重大な影響を与えるため、反応性骨材は事前に除外または対策が必要。

骨材がコンクリート性能に与える影響

骨材の選択は混凝土(コンクリート)の諸特性に直接影響する。主要な影響を整理する。

  • ワーカビリティ(施工性)
    • 丸い粒はスムーズに配合材内を移動しやすくポンプ・打設性が向上する。一方、角張った骨材は内部摩擦が増え流動性が低下する。
  • 強度(圧縮強度、引張・曲げ強度)
    • 粗骨材の強度・付着性はコンクリート圧縮強度に寄与する。一般に粒子形状が良好で表面粗面があると強度が向上する。
  • 耐久性(凍害、化学攻撃、磨耗)
    • 凍結融解に対しては骨材の吸水率や凍害耐性が影響する。化学攻撃(硫酸塩、ASR等)への抵抗性も骨材組成に依存する。
  • 収縮・クラック
    • 乾燥収縮は骨材の剛性により抑制される。高比重や低吸水の骨材を用いると収縮低減に寄与する。
  • 熱物性・音響特性
    • 熱伝導率や比熱は骨材の種類で変化し、コンクリートの断熱性に影響する。また多孔質骨材は音響吸収性にも影響する。

配合設計における骨材の扱い方

配合設計(単位セメント量、骨材量、骨材級配、水セメント比の決定)では骨材の性状を正確に反映させることが重要である。配合設計の実務ポイントは次の通り。

  • 骨材の含水率を考慮して有効水量を補正する。吸水率が高い骨材は混和材の挙動にも影響する。
  • 最大粒径は配筋間隔や型枠寸法、面仕上げに応じて決定する。大粒径は単位セメント量を減らすが、表面仕上げや隙間充填に影響する。
  • 骨材の級配調整で単位水量を最適化し、ワーカビリティを確保する。過度に細骨材が多いと水要求量が増える。
  • 特殊目的(軽量、遮音、遮蔽など)の骨材は性能評価と設計の両面で慎重に検討する。

再生骨材と持続可能性

近年、建設廃材の再利用や資源循環が重視され、コンクリートの再生骨材利用が進んでいる。再生骨材利用のポイントは以下である。

  • 長所:天然資源の節約、埋立ごみ削減、CO2排出の低減の可能性。
  • 課題:付着モルタルの残存に伴う吸水率増加、強度低下のリスク、異物混入の管理、長期耐久性の確認が必要。
  • 実務対策:適切な破砕・選別・洗浄プロセス、品質試験(吸水率、比重、塩化物含有量、SCMとの相互作用等)、再生骨材向けの配合最適化。

現場運用上の注意点とトラブル対策

骨材管理は現場品質に直結する。代表的な注意点と対策を示す。

  • 含水率管理:日々変動するため、定期的に含水率を測定し配合作業前に補正を行う。
  • 分級のばらつき:供給ロットにより粒度が変化することがあるため、在庫混合や頻繁なふるい分析で変動を把握する。
  • 有害物質混入:粘土や有機物、塩分の混入は重大な劣化要因。調達先の信頼性確認と受入検査を徹底する。
  • 特殊環境(海岸、凍結地域):海砂使用時は塩化物除去や除塩処理、凍結融解地域では凍害耐性評価を実施。

ケーススタディ:骨材選定が性能に与えた影響

いくつかの代表例を簡潔に示す。

  • 粗骨材の硬質化による耐磨耗性向上道路舗装で高硬度の砕石を使用した結果、表層の摩耗量が低減し耐用年数が延びた。
  • 海砂の塩分未除去による鉄筋腐食塩分管理不足で内部腐食が進行し、早期の補修を要した例が報告されている。
  • 再生骨材の適切な処理と配合最適化により、非構造部材での利用が可能となり資源循環率が向上した事例。

まとめ:設計と品質管理で骨材を制する

骨材はコンクリートの基礎をなす不可欠な要素であり、その選定と管理は構造物の性能と長寿命化に直結する。粒度、吸水率、比重、形状、化学組成といった多様な特性を正確に評価し、配合設計や現場管理に反映させることが求められる。再生骨材など持続可能な材料の利用も増加しており、適切な試験と処理により実用的な選択肢となる。

参考文献