砕石完全ガイド:種類、製造・品質管理、施工上の注意点と再利用(建築・土木向け)
はじめに — 砕石の重要性と本稿の目的
砕石は建築・土木工事で最も広く使われる材料の一つです。道路の路盤、コンクリート骨材、排水層、基礎材、盛土工、舗装材など用途は多岐にわたり、プロジェクトの耐久性や施工性、経済性に直結します。本稿では砕石の定義・種類、製造工程、物理的・化学的性質、品質管理・試験方法、施工上のポイント、環境・リサイクル面まで、実務者や発注者、設計者が押さえておくべき知識を詳しく整理します。
砕石とは何か:定義と分類
砕石とは天然岩石を破砕して得られる粒状材料の総称です。天然の礫(れき)や玉石とは異なり、人工的にクラッシャーなどで粉砕したことにより角ばった形状を持つ点が特徴です。一般的な分類は以下の通りです:
- 一次砕石(粗砕)・二次砕石・三次砕石:破砕段階による分類。
- 粒度別:細粒、細骨材(サンド)、中骨材、大骨材など。
- 岩種別:花崗岩、安山岩、玄武岩、石灰岩、チャートなど。岩種により強度や風化特性が異なる。
- 用途別:コンクリート用骨材、道路用基層材、路盤用砕石、排水材、造成材など。
製造工程:採取から仕上げまで
砕石の製造は採石場での採取から始まり、選別・破砕・ふるい分け・洗浄・品質調整を経て完成品となります。主な工程は次の通りです:
- 採石:露天掘りで適正な原石を切り出す。地質調査で風化や割れ目、品質の均一性を確認する。
- 一次破砕・二次破砕:原石を徐々に小さくして所定の粒度帯にする。クラッシャー(ローラー、円錐、ジャーク等)を使用。
- ふるい分け(篩分):複数のフルイで粒度ごとに分級。粒度配分は規格に合致させる。
- 洗浄・脱水:含泥量や微粒分が多い場合は洗浄し、必要に応じて水分を絞る。
- 貯蔵・出荷:ロット管理、品質検査を行い、現場へ供給。
物理的性質と規格(品質指標)
砕石の性能を評価するための主要な物理指標は以下です。これらの値は設計や用途選定に直接影響します。
- 粒度(gradation):ふるい分けで得られる粒度曲線。均一すぎると締固めが困難で、幅が広すぎると空隙が多くなる。
- 粒形(角形・丸み、フレーク成分):角ばった砕石は摩擦・締固めに有利だが、作業性で丸石が有利な場合もある。
- 吸水率・比重:骨材としての体積計算やコンクリート配合設計に影響する。
- 細粒分(含泥量、砂・シルト):過剰な細粒は接触面を悪化させ、締固めや排水性を阻害する。
- 強度・耐摩耗性(LA値など):舗装用や踏み固めが求められる用途では重要。LA(ロサンゼルス摩耗試験)値が参照されることが多い。
- 化学性(風化、アルカリ骨材反応の可能性):コンクリート骨材ではアルカリシリカ反応(ASR)の有無をチェックする。
主な試験と品質管理
工事品質確保のため、現場と採石場での適切な試験が不可欠です。代表的な試験を紹介します:
- ふるい分け試験(粒度試験):製品が設計指定の粒度範囲にあるか確認。
- 含泥分試験(洗浄・沈降法など):細粒分が許容値以下か確認。
- 吸水率・比重測定:コンクリート配合計算に用いる。
- LA摩耗試験:耐摩耗性を評価。舗装用骨材では低いLA値が望まれる。
- 長期風化試験や化学性試験:風化しやすい岩種やASRの懸念がある場合に実施。
用途別の選定ポイント
用途ごとに要求特性が異なります。代表的な用途と選定ポイントは次の通りです:
- コンクリート骨材:寸法安定性、比重、吸水率、汚れや有機物の混入がないこと、ASRに対する安全性。
- 道路路盤・舗装基層:締固め性、耐摩耗性(LA値)、排水性と粒度分布。
- 盛土・造成材:均一な締固め性、圧縮特性、凍結融解に対する耐久性。
- 排水層・ろ過材:粒度が明確で粗すぎず細かすぎないこと、目詰まりしにくいこと。
施工上の注意点
砕石の取り扱い・施工次第で性能は大きく変わります。実務上よくある注意点を挙げます:
- 保管場所:土や有機物と混入しないよう、地面から離して保管。雨水溜まりや凍結を避ける。
- 散布・締固め:設計厚に応じた盛厚と転圧回数を守る。湿潤状態の管理が重要で、過度な水分は締固めを悪化させる。
- 粒度管理:異なるロット混入時は粒度曲線の連続性を確認し、施工後の層内不連続を避ける。
- 排水設計:水が滞留すると凍結や強度低下を招くため、適切な勾配と透水層を確保する。
- 安全対策:粉じん飛散や落石、騒音対策を実施する。現場では防塵シートや散水を行う。
環境・リサイクル(再生砕石)の動向
近年、資源循環やCO2低減の観点から再生砕石(コンクリート廃材やアスファルト廃材を破砕して得られる骨材)の利用が拡大しています。再生砕石は資源節約と廃棄物削減に寄与しますが、品質は天然砕石と異なるため次の点に留意が必要です:
- 混入物管理(コンクリートスラグ、アスファルト、有機物等)
- 含水率や微細分が多くなりやすいので洗浄や乾燥処理が重要
- 強度や長期安定性のための供試・試験が必要
- 用途に応じた適合性評価(非構造用途と構造用途での要件の違い)
公共工事では再生資源利用のガイドラインや条件が整備されつつあり、品質確保のための受入基準やトレーサビリティが重視されています。
トラブル事例と対策
実際の現場で起きやすい問題とその対策をまとめます:
- 目詰まりによる排水不良:粒度の偏りや細粒の多さが原因。対策は洗浄・粒度調整やフィルター層の設置。
- 軟弱化・沈下:締固め不足や不均一な締固め。施工管理(転圧管理、含水比管理)で改善。
- 粉じん・環境苦情:散水・防塵ネット・覆い保存で軽減。
- 凍上・凍結障害:凍結融解に強い材料選定、凍結深さを考慮した設計で回避。
設計者・発注者への実務的アドバイス
設計・調達段階で品質トラブルを減らすための実用的なチェックポイント:
- 必要性能を明確化:用途ごとの粒度、LA値、含泥量、吸水率などを仕様書に具体的に記載する。
- サンプル試験・受入試験の規定:ロットごとの受入検査や現場での簡易確認手順を明文化する。
- 再生砕石の利用:費用メリットだけでなく、必要な前処理(洗浄、選別)と用途制限を明示する。
- 調達ルートの多様化:供給が偏らないよう複数の供給元を確保し、安定供給を図る。
今後の技術動向とまとめ
砕石分野では、より高性能化した破砕機械、粒度制御技術、洗浄・乾燥工程の効率化、AIによる品質管理、自動化された採石・在庫管理システム、そして再生骨材の高品質化技術が進展しています。設計者や施工者は材料の本質的特性を理解し、適材適所で砕石を選定・管理することが、長期的な構造物の品質確保とライフサイクルコスト低減に直結します。
参考文献
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