第二種換気とは?住宅・建築での仕組み・設計・メリット・注意点を徹底解説

はじめに — 第二種換気の位置づけ

第二種換気は、建築物の換気方式の一つで、「機械給気+自然排気」を基本とする方式です。機械(ファン)で外気を室内に供給し、排気は窓や換気口など自然の流れに任せるため、第三種換気(機械排気+自然給気)とは給気・排気の役割が逆になっています。新築住宅や改修でよく検討される方式で、快適性とコストのバランスを取りやすいのが特徴です。

仕組みと構成要素

第二種換気の基本構成はシンプルです。主な要素は以下のとおりです。

  • 給気ファン(機械式): 屋外から外気を取り込み、ダクトや給気口を通じて居室へ送る。静圧や風量特性が設計上重要。
  • 給気経路(ダクト/給気口): フィルターや防虫網、調整ダンパーを含む。給気位置の選定が室内の空気分布に影響する。
  • フィルター: 花粉や塵を除去し、室内空気の質を向上させる。定期的な交換・清掃が必要。
  • 自然排気口(バス換気口・壁孔・開口部): 排気は屋内外の圧力差や温度差、風の力で排出される。設置位置・大小で換気効率が変わる。

動作原理(圧力バランスと空気の流れ)

給気ファンが室内に外気を送り込むことで、室内は外気よりやや高い正圧になります。この正圧により、建物の隙間(窓の合わせ目・配管貫通部・換気口など)から室内空気が外部へ排出されます。したがって、給気量と排気経路のバランスが重要で、給気ばかり増やして排気が阻害されると過剰な正圧や局所的な気流不均衡を引き起こします。

設計上の考え方と計算の基礎

換気量の設計には次のような基本式を使います。室内容積V(m3)と目標換気回数n(回/h)から必要風量Q(m3/h)は、Q = n × V で求められます。住宅では目安として0.5回/h程度を採ることが多く、実務では居室ごとの必要風量や人員あたりの換気量(m3/h/人)も考慮します。

具体的には、床面積に天井高を掛けて容積を算出し、上式で給気ファン容量を選定します。ダクト損失やフィルター抵抗、給気口の圧損も考慮して実効風量を確認することが必要です。

メリット

  • 給気側を機械で管理するため、供給する外気をフィルターで浄化でき、花粉や粉じん対策がしやすい。
  • 機械給気により屋内をやや正圧に保ちやすく、屋外汚染の浸入(バックドリフト)を抑制できる。
  • 給気装置が比較的シンプルで、第一種換気(両機械)より初期コストやメンテナンスが抑えられるケースがある。

デメリット・注意点

  • 排気が自然に依存するため、風向や温度差による換気性能の変動が大きい。無風時や気象条件によっては換気が低下する。
  • 第一種換気に比べて熱回収(熱交換器)を組み込みにくく、暖冷房負荷が増える可能性がある。熱回収を導入する場合は別途計画が必要。
  • 室内が正圧になるため、ドアの開閉時に空気が押し出されやすく、隣接住戸との気密や音対策、臭気移動に配慮が必要。
  • 排気経路の確保が不可欠。排気がうまく外部に抜けないと換気効率が著しく落ちる。

第一種・第三種との比較

第一種換気(機械給気+機械排気)は両方を機械で制御するため換気量の安定性が高く、熱交換器を入れて高効率に換気熱を回収できる。第三種換気(機械排気)は排気を機械で引くため、室内は負圧になり、隙間から外気が流入する。第二種はその中間で、給気側を管理しやすい利点があるが、排気の安定確保が課題となる。

適用場面と実務的なポイント

第二種換気は以下の場面で有効です。

  • 外気の清浄度に配慮したい住宅(花粉対策、砂塵対策)でフィルター給気を行いたいとき。
  • 給気位置をコントロールして室内の空気分布を配慮したい場合(例えば寝室・居間へ清浄空気を優先的に供給)。

設計・施工時のポイント:

  • 給気口の位置選定: 人のいるゾーンに効率的に外気を届けられるよう、高さや配置を検討する。
  • 排気経路の確保: 湿気や臭気が発生する場所(浴室・台所)からの排気動線を確保し、自然排気がしやすい開口を配置する。
  • 気密・断熱との整合: 高気密住宅では自然排気が不足しやすいので、計画換気量を満たすための工夫(排気補助や開口設計)が必要。
  • 騒音対策: 給気ファンは吸込み音や風切り音が発生するため、防振・防音を施す。

メンテナンスと運用

給気側にフィルターやダンパーがあるため、定期清掃・交換が必須です。フィルター目詰まりは風量低下の主因になります。また、給気口やダクト内の清掃、給気ファンのベアリング点検、電気接続の確認も定期的に行ってください。自然排気側は開口部の閉塞(虫、葉、雪など)を点検する必要があります。

省エネルギーと快適性の両立

第二種換気は熱回収の導入が難しい場合が多いため、暖冷房負荷が増えるリスクがあります。対策としては、以下が考えられます。

  • 給気空気を予熱/予冷するエアヒーターやプレヒート方式の導入。
  • 断熱・高気密化で外皮性能を高め、換気による負荷増を抑える。
  • 運転スケジュールの最適化や可変速ファンで必要時のみ風量を上げる運用。

よくあるトラブルと対処法

主なトラブル例と対処法は以下です。

  • 換気不足(無風時に換気量が落ちる): 排気経路の再設計、排気補助(小型排気ファン)の設置を検討。
  • 室内圧力の偏り(ドアが開きにくい、気流不快): 給気量調整やダンパー調整、給気口の再配置。
  • フィルターの目詰まりで風量減: 清掃・交換頻度の見直し。
  • 隣戸へ臭気移動: 給気・排気の気流経路を見直し、必要に応じて排気ファンの併用を検討。

導入の判断フロー(簡易)

第二種換気を採用するかの簡易フローは次の通りです。

  • 外気の清浄度対策が必要か? → 必要なら第二種を検討。
  • 熱回収の優先度は高いか? → 高ければ第一種換気を優先。
  • 自然排気が確実に取れる設計か? → 取れるなら第二種は有効。
  • コスト・メンテナンス性は許容範囲か? → 許容できるなら採用。

まとめ

第二種換気は「機械給気+自然排気」というシンプルな方式で、外気の浄化や給気のコントロールがしやすい一方で、排気の自然化に起因する性能変動や熱回収の難しさが課題です。設計では給気量と排気経路の整合、気密・断熱とのバランス、運用・メンテナンスの計画を十分に行うことが重要です。用途や優先事項(清浄性・省エネ・コスト)を整理して、第一種・第三種との比較検討を行ってください。

参考文献