密粒度アスコンの基礎と実務:設計、施工、性能評価から最新技術まで徹底解説

はじめに — 密粒度アスコンとは

密粒度アスファルト混合物(以下、密粒度アスコン)は、粗骨材・細骨材・充填材が比較的連続した粒度分布を有し、細骨材や微細充填物で骨材間の空隙を十分に埋める配合をもつアスファルト混合物を指します。一般に舗装表層・基層の汎用的な構成で用いられ、締固め後の空隙率(全体空隙)が比較的小さく、耐久性と耐荷力のバランスに優れるのが特徴です。

密粒度アスコンの特徴と用途

密粒度アスコンは以下のような特徴を持ちます。

  • 連続した粒度分布により粒子同士が密に配列し、空隙が小さくなる。
  • 摩耗や車両荷重に対する耐久性、耐力(安定度)に優れる。
  • 透水性は低く、水の浸入を抑制するため下層の保護につながる。
  • 施工性が良く、一般道路から幹線道路まで幅広く使われるが、排水性舗装や特殊用途には不向き。

用途としては、一般道路の表層・中間層、駐車場、空港滑走路の補修など多用途に用いられます。

材料組成と骨材配合の考え方

密粒度アスコンの設計では、骨材の粒度(グラデーション)、粗骨材と細骨材の割合、充填材(粉体)量、及びアスファルトバインダーの種類と含有量が重要です。骨材は粒度曲線が滑らかな連続性を持つことが求められ、粗・細のバランスで空隙率(VMA: voids in mineral aggregate)と空隙率(Va: air voids)を適切に確保します。

目標となる空隙率(締固め後の全空隙)は一般に3〜5%程度が多く、これにより耐久性と沈下・塑性変形(わだち掘れ)とのバランスを取ります。ただし最適値は骨材形状、最大粒径、交通量、気候条件によって変動します。

設計方法(マーシャル/その他)

日本や多くの地域ではマーシャル法による設計が広く用いられてきました。マーシャル試験では、最適アスファルト含有量(OAC)を安定度、空隙率、フロー値などに基づき決定します。近年はSuperpaveなどの性能規定や、試験を組み合わせた性能設計の手法も導入されています。

設計で重視するパラメータ例:

  • 空隙率(Va):耐久性と透水性の指標
  • VMA(空隙率 in mineral aggregate):十分なアスファルト保有を確保するための指標
  • 安定度(Marshall stability、抵抗力):荷重に対する強度
  • フロー(塑性変形の指標)

施工上のポイント

密粒度アスコンの施工では、温度管理・締固め・均し厚や継ぎ目(ジョイント)処理が品質に直結します。

  • 混合温度と舗設温度:アスファルトの粘度が施工性に影響するため、設計した種類のバインダーに応じた温度管理が必要です。ワームミックス(WMA)技術の導入により施工温度を通常より低減でき、施工時の排出ガスやエネルギー消費を低減できます。
  • 締固め:適切な転圧履歴(ローラー種、重量、スピード、間隔)を確保し、所定の密度を達成することが求められます。ローラーの種類(振動・静荷重)や初期プレッシャーは材料特性に合わせて選定します。
  • 継ぎ目処理:横継ぎ目・縦継ぎ目の温度差や圧密不足が原因で弱い箇所が生じやすく、タックコートやジョイント用の締固め工程の厳守が重要です。
  • 平坦性と厚さ管理:舗装機械のセットアップ、スクリード、レーザー制御などで所定の厚さと平坦性を確保します。

品質管理(現場試験と受入試験)

品質管理では材料受入、混合プラント、舗設後の現場検査が含まれます。主な試験項目は以下の通りです。

  • 骨材の粒度試験(ふるい試験)
  • アスファルト含有量の測定(燃焼法・抽出法)
  • 密度試験(核密度計、コア採取による密度評価)
  • 表層の平坦性(プロファイロメータ等)
  • 表面粗度・摩耗性試験(必要に応じて)

現場の受入基準(目標空隙、密度、公差範囲)は設計仕様書に基づきます。逸脱がある場合は補修や再舗装が必要になることもあります。

耐久性・性能評価

密粒度アスコンの性能は、下記の項目で総合評価されます。

  • わだち掘れ(荷重反復による塑性変形)への抵抗性
  • 疲労亀裂(低温割裂や繰返し荷重による微細損傷の進展)
  • 透水・水分損傷(ストリッピング)への耐性
  • 凍結融解や温度サイクルに対する耐久性

設計や材料選定で、これらの性能をバランスよく満足させることが重要です。たとえば、剛性の高いバインダーはわだち掘れに強い一方で低温疲労破壊(ひび割れ)に弱くなる可能性があるため、気候や交通条件を考慮してバインダー選定を行います。

再生材(RAP)や環境技術の導入

近年、環境・経済性の観点からRAP(再生アスファルト混合物)やワームミックス、バイオ由来添加剤の導入が進んでいます。密粒度アスコンでもRAPを混入することで天然資源の節約、CO2削減、コスト低減が期待できますが、RAP混入率が高くなるとバインダーの硬化や均一性、長期的な脆化リスクがあるため、添加剤や再生助剤(リジュビネータ)でバインダー性状を調整する必要があります。

ワームミックス技術は混合・舗設温度を20〜40℃程度低減することが可能とされており、施工時の揮発性有機化合物(VOC)やエネルギー消費の削減に寄与します(技術や効果は製品により異なるため仕様参照)。

施工上の注意点とよくある不具合

密粒度アスコン特有の施工注意点と不具合例:

  • 温度低下による締固め不足:舗設後の冷却が早いと目標密度に達しにくい。冬季や夜間施工では特に注意。
  • 混合プラントでの分離・偏析:粒度差や取り扱い不良で混合時に偏析し、舗装後に不均一な性能を生む。
  • 継ぎ目の脆弱さ:適切なタックコートやジョイント圧密がされていないと早期はく離やひび割れが発生。
  • 表面の水の滞留:密粒度のため排水性が低く、水の滞留は早期損傷や滑り性低下を招く場合がある。

設計・施工後の維持管理とライフサイクル

密粒度アスコン舗装は定期的な点検(わだち調査、ひび割れ、排水性など)と適切な予防修繕(シーリング、薄層オーバーレイ)が長寿命化の鍵です。舗装のライフサイクルコスト(LCC)を考慮すると、初期コストだけでなく維持管理費用や再舗装周期を含めたトータルでの採算を検討することが重要です。

最新動向と研究テーマ

近年の研究・実務のトレンドは以下の通りです。

  • 高RAP混合物の実用化と長期性能評価
  • ワームミックスや低温混合技術の普及と施工ガイドライン整備
  • 高性能バインダー(改質アスファルト、ポリマー改質等)の適用拡大
  • 耐久性評価のための舗装構造シミュレーションや性能規定への移行

まとめ

密粒度アスコンは、粒度設計・バインダー選択・施工管理の三者が整合することで優れた汎用舗装材料となります。設計段階で使用条件(交通量・車種・気候)を正確に評価し、施工現場での温度管理・転圧管理・接合部管理を徹底することが品質確保の要です。また、RAPやワームミックスなどの環境技術を活用する際は、それに伴う材料性状の変化や長期性能評価を慎重に行う必要があります。

参考文献