束(つか)とは何か?床を支える「束」を徹底解説 — 種類・設計・メンテナンスと改修のポイント
はじめに:束の重要性
木造住宅や小規模建築における「束(つか)」は、床組の荷重を基礎や土台に伝達する垂直支持部材です。見た目は小さな柱に見えますが、床の剛性、耐久性、長期的な居住性能に直接関わるため、設計や施工、維持管理が適切に行われていないと床鳴りや沈下、耐震性能の低下といった問題を招きます。本稿では、束の種類・機能・設計上の留意点・施工・点検・改修手法までを詳しく解説します。
束の定義と床組における役割
一般に「束」とは、床下で大引(おおびき)や根太(ねだ)を支える短い柱状の支持材を指します。床材→根太→大引→束→基礎(または束石・根固め)という荷重伝達経路を形成し、床のたわみ防止や荷重分散、床面の平面性保持に寄与します。束は垂直荷重を支持する一方で、横方向の安定は床面の剛性や他の構造要素(壁、筋交い、床合板など)で確保します。
束の種類(材料別・形状別)
- 木製束(無垢材・集成材): 伝統的な材料。現場での加工がしやすく、断面や長さを調整可能。防腐・防蟻処理が必須。集成材は寸法安定性が高く、割れや狂いが少ない。
- 鋼製束(鋼製支柱・調整式束): 高耐荷重で調整機構を持つ製品が多い。床の高さや水平を現場で微調整できるためリフォームやプレハブ床組で広く使われる。鋼材は錆対策が必要(亜鉛メッキ等)。
- コンクリート製束(束石・独立基礎): 地盤に直接載る場合の支持部材や、束石に組み合わせて用いられる。屋外での耐久性が高いが、調整性は限定的。
- 複合型: 樹脂やプラスチック部材と金物を組み合わせた製品。寸法安定性、断熱性、耐腐食性を持つものがある。
寸法・配置・間隔の考え方
束の断面寸法や配置間隔は、上部の構造(床仕上げ、荷重、スパン)や使う材料によって決まります。日本の住宅ではモジュール(尺貫法の影響)として910mm(3尺)や455mm(1.5尺)が一般的な軸間隔の基準として使われることが多く、大引の配置間隔や根太のピッチと整合させて設計されます。
設計時の基本は次の点です。
- 荷重算定:利用状態(底荷重、積載荷重、人荷)を勘案して必要支持力を確保する。
- スパン管理:大引・根太のスパンと合わせて、たわみ量が許容範囲内になるようにする。
- 支持間隔:過度に広い支持間隔は局部的たわみを生むため避ける。一般にリフォーム領域では鋼製束を用いて支持密度を稼ぐことが多い。
施工上のポイント
- 水平出しと調整:床鳴りや段差を防ぐため、束の天端・底端を精度よく出すことが重要。鋼製束はねじ調整機構で高さを合わせるが、木製束は中堅材やかさ上げ板で調整する場合がある。
- 基礎との接合:束と基礎(または束石)との接触面には較差を吸収する部材や防湿シートを介し、直接の木材接地を避けることで腐朽やシロアリ被害を防ぐ。
- 防腐・防蟻処理:木製束は現場処理と工場処理の組合せで耐久性を確保する。薬剤処理だけでなく、通気設計(床下換気)も重要。
- 耐火・耐震の配慮:集合住宅や特殊用途では、床下の防火区画や耐震配置が求められる。束そのものは垂直荷重を担うため、床の横架材と確実に結合する金物の使用が推奨される。
劣化診断とメンテナンス
束の劣化は床鳴り、局部沈下、床面の不陸(でこぼこ)として現れます。定期点検で以下を確認してください。
- 床に沈下や傾斜がないか、歩行時に不自然な沈みや音がしないか。
- 床下点検で束表面の腐朽、シロアリ被害、接合金物の錆や緩みがないか。
- 床下の換気状態(通気口の閉塞や湿気の滞留)がないか。
劣化が見つかった場合は、早めの補修・交換を行うことが被害の拡大を防ぎます。木製束は部材単位で交換可能な場合が多く、鋼製束は錆が進行している場合は交換や防錆処理が必要です。
リフォーム・既存家屋の補強手法
中古住宅や築年数の経過した木造住宅では、束の補強・増設が床の性能改善に有効です。代表的な手法を挙げます。
- 鋼製束の追加:既存の大引や根太の下に鋼製の調整式束を追加して支持点を増やす。短時間で施工でき、荷重分散が向上する。
- 束の全面交換:腐朽やシロアリ被害が広範な場合、床下全体の束を新しい耐腐材や集成材、鋼製束に交換する。
- 基礎との連結強化:束と基礎の接合部(アンカーや金具)を強化し、水平荷重に対する信頼性を高める。耐震改修の一環として行われることが多い。
設計上の留意点(法規と標準)
日本の建築設計においては、床の荷重やたわみ許容、耐久性に関する基準が建築基準法や関連の技術資料に示されています。設計の際は「床の許容応力度」や「部材の防腐・防蟻基準」、地域の気候条件(高湿地・寒冷地)を踏まえ、材料の選定・防湿措置・換気設計を行うことが重要です。詳細設計では構造設計者や木造担当技術者と協議してください。
実務的なチェックリスト(施工者・点検者向け)
- 束の材質・寸法・数量が図面と一致しているか。
- 束と上部大引の取り合いが確実に金物で固定されているか。
- 木製束は防腐防蟻処理が適切に行われ、床下に直接地面と接していないか。
- 鋼製束は調整機構が固着しておらず、錆止め処理がされているか。
- 床下換気が確保されており、湿気や結露の原因がないか。
事例:よくあるトラブルと対処例
- 部分的な沈下:一部の束が沈下している場合、沈下した束上の大引をジャッキアップし、束を交換またはかさ上げする。鋼製束を用いると微調整で床面を復元しやすい。
- 床鳴り:根太や大引の接合不良、束の緩みが原因となる。金物の増し締めや接合部の補強で改善することが多い。
- シロアリ被害:被害が軽微なうちは薬剤処理と当該束の交換で対応。被害が広範な場合は床下全体の防蟻処理と被害材の除去・交換を行う。
まとめ:設計・施工・維持の三本柱が鍵
束は小さな部材に見えますが、床の耐久性・居住性・安全性に重要な役割を果たします。材料選定→正確な施工→定期点検・適時改修という流れを守ることで、床全体の性能を長期にわたって確保できます。特にリフォームや中古住宅の改修では、現場の実測による束の状態把握と、鋼製束などの有効な工法の採用が費用対効果の高い改善策となります。
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