メジャースケール完全ガイド：理論・構造・実践テクニック

2025年12月26日 最終更新日時 : 2025年12月26日 エバープレイ編集部

メジャースケールとは

メジャースケール（長音階）は西洋音楽で最も基本的かつ重要な音階の一つで、明るく安定した響きを持つ音の並びです。音程のパターンは「全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音」（全 = 2 半音、半 = 1 半音）で表され、英語では W-W-H-W-W-W-H という順序になります。このパターンはどの音から始めても同じ相対関係を保ち、たとえば C メジャーでは C–D–E–F–G–A–B–C（全・全・半・全・全・全・半）になります。

音名・度数・機能

メジャースケールの7音それぞれには度数（スケールディグリー）と機能があり、作曲や分析で頻繁に用いられます。一般的な呼び方は以下の通りです。

  • 1度（主音, Tonic） — 安定の中心（例：C）
  • 2度（上主音 / Supertonic） — 支音的役割
  • 3度（中音 / Mediant） — 長調か短調かを決定する音（長3度は長調の特徴）
  • 4度（下属音 / Subdominant） — 前進を促す役割
  • 5度（属音 / Dominant） — 強い進行性を持ち主和音へ解決する力がある
  • 6度（下中音 / Submediant） — 代替的な安定音（相対短調の主音でもある）
  • 7度（導音 / Leading tone） — 主音に半音で上行して解決しやすい（V→Iの求心力を高める）

これらの機能は和声進行やメロディ形成の基盤となり、特に主和音（I）、属和音（V）、下属和音（IV）の関係は西洋音楽の中心的な骨格です。

ダイアトニックコードと和声機能

メジャースケール上の各音から作る三和音（ダイアトニック・トライアド）は決まった質を持ちます。スケール上の1～7度それぞれを根音とする三和音の質は、メジャースケールでは以下のようになります。

  • I（長） — 主和音（例：C–E–G）
  • ii（短） —（例：D–F–A）
  • iii（短） —（例：E–G–B）
  • IV（長） —（例：F–A–C）
  • V（長） — 属和音（例：G–B–D）
  • vi（短） — 相対短調の主和音（例：A–C–E）
  • vii°（減） — 減三和音（例：B–D–F）

四和音（7th）に拡張すると、Imaj7, ii7, iii7, IVmaj7, V7, vi7, viiø7（半減七）という形になり、ジャズやポピュラー音楽でも広く使われます。典型的な進行は I–IV–V–I や IIIm–VI–IIm–V といった循環で、二次ドミナント（V/V など）や借用和音（モード混合）を用いることで色彩を豊かにできます。

キーと移調、五度圏（Circle of Fifths）

メジャースケールは各調（キー）として扱われ、調号（シャープやフラットの個数）によって区別されます。五度圏は調同士の関係を視覚化する道具で、隣接する調は半音ではなく五度単位（完全五度）の近さを示します。代表例：

  • Cメジャー：調号なし
  • Gメジャー：F#（シャープ1つ）
  • Fメジャー：Bb（フラット1つ）

五度圏は転調や和声進行の設計に便利で、近親調（共通音の多い調）への移動は自然に感じられます。

モードとメジャースケールの派生

メジャースケール（イオニアン・モード）は7つの旋法（モード）の一つで、同じ音集合（例えば C–D–E–F–G–A–B）をスタートする音を変えることで他のモードが得られます。主要なモードは次の通りです：

  • イオニアン（Ionian）＝長音階（メジャー）
  • ドリアン（Dorian）＝2度から始める（短調系の色彩）
  • フリジアン（Phrygian）＝3度から始める（半音が近いため暗い）
  • リディアン（Lydian）＝4度から始める（増4度を含み明るい）
  • ミクソリディアン（Mixolydian）＝5度から始める（短7度を持つ）
  • エオリアン（Aeolian）＝自然短音階（6度から始める）
  • ロクリアン（Locrian）＝7度から始める（不安定な減5度）

これらは現代の作曲や即興で色彩を付ける際に重要な素材になります。

調律（チューニング）と音律の影響

メジャースケールの理論は純粋な数学的比率（ジャスト・イントネーション）と平均律（均等に12等分された半音）とで微妙に響き方が異なります。歴史的にピタゴラス音律や平均律、ミーントーン等が用いられてきました。平均律は全てのキーで演奏可能にする利点があり、現代のピアノや多くの鍵盤楽器は平均律で調律されていますが、声楽や弦楽器のテンションのかけ方ではジャストな純正律的な調和が求められることもあります。

作曲・演奏での実践テクニック

メジャースケールを活用する際の実践的なポイントをいくつか挙げます。

  • 旋律作り：主音（1度）と導音（7度）の関係を利用してフレーズに解決感を与える。3度は長調らしさを示す重要な音。
  • 和声進行：I–IV–V–I の基本進行を軸にしつつ、二次ドミナント（V/V → V → I）や代理和音（例：iii を I の代理に使う）で変化をつける。
  • モードの混合（借用和音）：並行調や短調からの和音を一時的に借用して色彩を変える（例：IV を iv に変えて暗めの響きを加える）。
  • 旋律と和声の整合性：メロディの音を和音の構成音に合わせると安定し、テンション（9th, 11th, 13th）は和音の機能を壊さない範囲で使用する。
  • 転調とモジュレーション：五度圏に沿った近親調への移動は自然に感じられる。劇的な効果を狙うなら遠隔調（例：C→E♭）への転調も有効。

練習法と応用例

理解を深めるための具体的な練習法：

  • スケール練習：メトロノームに合わせて各調を上行・下行で流暢に弾けるようにする。
  • アルペジオ（分散和音）：I, IV, V などのアルペジオを各調で練習し、指の運びを身体化する。
  • コード分析：好きなポップスやクラシック作品のコード進行をダイアトニックに当てはめて分析する。
  • 転調練習：単一フレーズを異なるキーに移調して歌ったり演奏したりする。
  • 即興：メジャースケールのモードやパターンを用いて短いソロを作成し、和声との関係を体感する。

まとめ

メジャースケールは音楽理論の基礎であり、メロディ・和声・調性・即興といった多くの領域に影響を与えます。その構造（全全半全全全半）とダイアトニックな和音の性質を理解することで、作曲や演奏の幅が大きく広がります。また、調律やモードの知識を併せ持つことで、より豊かな音楽表現が可能になります。

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