PreSonus Eris 5 レビュー:小規模スタジオで本領を発揮する5インチ・モニターの実力と活用法
はじめに
PreSonus Eris 5(以下 Eris 5)は、手頃な価格帯でプロ向けの機能を備えた近接リスニング用スタジオモニターとして長く支持されてきたモデルです。本コラムでは、Eris 5 のハードウェア仕様、音質的特徴、設置とチューニングのポイント、競合機種との比較、実際の制作ワークフローでの使い方、購入時の注意点まで、できるだけ事実に基づいて深掘りします。小規模なプロジェクトスタジオや宅録環境でモニター導入を検討している方に向けた実践的なガイドを目指します。
概要と主な仕様(メーカー公称値)
- ドライバー構成:5インチクラスの低域ドライバーと1インチの高域ドームツイーター
- 出力形式:アクティブ(アンプ内蔵)のバイアンプ構成(低域/高域を別々に駆動)
- 入力:バランス入力(XLRおよび1/4" TRS)、アンバランスRCAなど複数のソースに対応
- 周波数特性:メーカー公称でおおむね50Hz台から20kHz付近(設置環境や個体差で変動)
- 物理的特長:フロントパネルにハイ/ローのトリムと空間補正スイッチ(リスニング環境向けのイコライジング)を搭載
上記はメーカーや販売店が公表している仕様をもとにまとめています。実際の数値は測定環境や測定器によって異なるため、導入後は自分の部屋での特性把握が重要です。
音質の特徴(良い点と留意点)
Eris 5 の音作りは「フラットさを志向しつつも使いやすい余地を残した」設計です。高域は滑らかで刺さりにくく、ボーカルやアコースティック楽器のモニタリングで疲れにくい性質があります。一方で、5インチクラスのウーファーとしては低域の伸びは限られるため、サブベースや低域の微細なコントロールが必要なジャンル(EDMや低域重視のマスタリングなど)ではサブウーファーの併用が有効です。
定位(イメージ)の面では、近接リスニングでのステレオ像は明瞭で、ミックスの中核となる中域の解像度が高いため、ボーカルやギター、スネアなどのバランス調整がしやすいです。反面、部屋の反射が多いと低域のモヤ付きやステレオイメージの曖昧化が起きやすいため、設置環境の改善(吸音/拡散)とトリム調整が効果的です。
設置とチューニングのポイント
- リスニング位置とスピーカー位置:一般的なニアフィールドモニターと同様に、左右のスピーカーとリスナーで正三角形を作るのが基本です。ツイーターの高さが耳の高さになるようにスタンドやデスクの上に設置します。
- 近接バウンダリ(壁)補正:Eris 5 にはフロントパネルで調整できる「空間補正」や高域・低域のトリムが備わっていることが多く、壁に近い設置で生じる低域ブーストを抑えることができます。実際にはトリムをいじりながら既知のリファレンストラック(自分がよく知る市販曲)で違和感が少ないポイントを探すのが現実的です。
- ルームチューニング:低域の問題はスピーカーだけでは解決しにくいため、低音吸収のためのコーナートラップや1/4波長対策が有効です。簡易的にはスピーカーと壁の距離を変えるだけでも低域のバランスは大きく変化します。
実際の制作ワークフローでの使い方
宅録や小規模スタジオでの典型的な利用シーンと、それぞれの最適な使い方を整理します。
- 作曲・アレンジ段階:Eris 5 の分解能は中域の要素をつかみやすいので、コードやメロディのバランス取り、ボーカルの位置決めに向いています。ヘッドルームを確保して音作りを行うことを意識してください。
- ミックス段階:中域の判断がしやすく、楽器の重なりを解消する作業で力を発揮します。ただし低域の判断は5インチドライバーの物理的制約があるため、サブウーファーやヘッドフォンでのクロスチェックを行うことを推奨します。
- マスタリング/最終確認:本格的なマスタリングの場面ではフルレンジを再生できる大口径モニターやアナライザーでの確認が望ましいです。Eris 5 は最終チェックの一つの視点として有用ですが、低域や空間感の最終判断は別のシステムで行ってください。
競合機種との比較(代表例)
- Yamaha HS5:HSシリーズは非常にフラットでリファレンス的な性格を持ちます。Eris 5 はそれよりもやや「親しみやすい」音色で、高域の刺さりが少ない点が特徴です。HS5 はフラット志向で厳密な判断に向く一方、Eris 5 はミックスが疲れにくく長時間作業に向きます。
- KRK Rokit 5:Rokit 系は低域が強めでポップな音作りが特徴です。Eris 5 は中域の解像が良くバランス派、Rokit はエンタメ寄りの密度感を好むユーザー向けと言えます。
長所と短所のまとめ
- 長所:使いやすい音色、手頃な価格帯、複数入力やフロントのチューニング機能で設置環境に合わせやすい、中域の解像度が高い。
- 短所:5インチクラスゆえに低域の物理的限界がある(深いサブベースは苦手)、部屋次第で本来の性能が活かせない場合がある。
購入時のチェックリスト
- 自分の制作ジャンルと低域の重要度を考える(低域重視ならサブウーファー併用を検討)。
- 設置スペース(デスク周りや壁との距離)を確認し、可能なら試聴してトリム機能の効果を確認する。
- 入力端子が自分のオーディオインターフェースや機材に合っているか確認する(XLR/TRS/RCA の有無)。
- モニターの左右一対の購入を前提に検討する(片側だけではステレオイメージ評価ができない)。
まとめ(結論)
PreSonus Eris 5 は、小規模な制作環境においてコストパフォーマンスに優れた選択肢です。中域の把握に強く、日々の編集・ミックス作業で疲れにくい音作りは多くのクリエイターに受け入れられています。ただし、低域再生の限界は物理的に存在するため、低域の厳密なモニタリングが必要な場面ではサブウーファーの追加や別システムでのクロスチェックが必須です。導入後は設置とルームチューニングに時間をかけることで、Eris 5 の実力を最大限に引き出せます。
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参考文献
- PreSonus - Eris 5 製品ページ(メーカー仕様)
- Sweetwater - PreSonus Eris 5 製品情報
- Thomann - PreSonus Eris 5 製品ページ(仕様・レビュー)
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