砕石骨材の基礎から設計・施工・品質管理まで:種類・特性・選び方と最新の実務ポイント
はじめに — 砕石骨材とは何か
砕石骨材は、天然の岩石を破砕・選別して得られる骨材で、コンクリート、アスファルト舗装、路盤材、排水材、軌道用バラストなど土木・建築のあらゆる分野で最も広く用いられる材料です。砕石の品質や形状、粒度組成は構造物の強度や耐久性、施工性に直結するため、設計段階から適切な選定と品質管理が求められます。
砕石骨材の分類と主な用途
- 粗骨材(Coarse aggregate): 一般に4.75mm(または5mm)以上の粒径を持つ。コンクリートの骨格を形成し、強度や剛性に寄与する。Dmax(最大骨材寸法)は配合設計や施工上重要。
- 細骨材(Fine aggregate): 4.75mm以下の粒径を持ち、モルタル部分を形成して充填性やワーカビリティに影響する。
- 単粒度骨材(Single-sized): 特定の粒径範囲に整った骨材。路盤や排水層、バラストなどで使用される。
- 混合粒度(Gradation-controlled): コンクリートやアスファルトの配合用に連続的な粒度分布を持つ骨材。
物理的・化学的特性とそれが施工・設計に与える影響
- 粒形・粒度(形状と級配): 角張った粒は付着性が良く、圧縮強度や靭性に寄与するが、ワーカビリティや打設時の締め固めには不利になることがある。薄片状・細長(フレーク形状や細長比が大きい)な骨材は配筋周りの充填不良や要求強度低下の原因となる。
- 比重と吸水率: 比重は単位体積あたりの質量を決め、コンクリートの単位容積質量に影響する。吸水率が高い骨材は配合時の基準水量の補正が必要で、取り扱いを誤ると設計水セメント比が崩れ強度低下や耐久性劣化の原因となる。
- 強度・耐摩耗性(LA値など): アスファルトや高荷重がかかる路盤では耐摩耗性が重要。一般的にLos Angeles(L.A.)試験値によって評価され、用途に応じて許容値が定められる。
- 化学的安定性: アルカリ骨材反応(ASR)、硫酸塩や有機物の含有はコンクリートの長期耐久性に影響する。ASRの可能性がある骨材は予め試験し、必要に応じて低アルカリセメントやフライアッシュ等の使用で対処する。
製造工程 — 採石から製品化まで
- 採石(採掘): 原石は岩種(花崗岩、安山岩、石灰岩、チャート等)により機械的特性や化学性が異なる。設計用途に合わせて適切な岩種を選択する。
- 一次破砕・二次破砕: ジョークラッシャー、ローラークラッシャー、インパクトクラッシャーなどを組み合わせ、目標粒度と粒形を得る。クラッシャーの種類により粒形や微粉量が変わるため用途を考慮して設備選定を行う。
- ふるい分け・洗浄: 筛分(スクリーン)で級配を整え、必要に応じて洗浄して細粉や粘性物質を除去する。洗浄は特にコンクリート用細骨材で重要。
- 貯蔵・在庫管理: ストックパイルは混合を避けるために分離管理し、湿潤度や凍結・解凍の影響を監視する。
品質基準と主要試験
砕石骨材は複数の試験で評価されます。代表的な試験には次のものがあります。
- 粒度試験(ふるい分析): 粒度分布(級配)はコンクリートやアスファルトの配合設計で重要。
- 比重・吸水率測定: 単位体積質量や配合水量の補正に使用。
- 洛杉矶摩耗試験(L.A.試験): 耐摩耗性の評価。舗装や車道用には低い数値(高耐摩耗性)が要求される。
- 強度・破砕試験(ACVやcrushing value): 圧縮荷重下での破壊特性評価(国・規格により試験方法が異なる)。
- 堅牢性(風化・凍結融解に対する耐久性)試験: 道路や外部露出条件に必要。
- アルカリ・骨材反応試験(ASR試験): 反応性の有無を確認。
- 有機物・塩分・粘土塊の検査: コンクリートの初期強度や長期耐久性に悪影響を及ぼす不純物をチェック。
設計上の注意点(コンクリート・アスファルト別)
コンクリートにおけるポイント:
- 最大骨材寸法(Dmax): 配合効率やスランプ、打込みのしやすさ、被覆厚さ、配筋間隔により決定する。一般的な指針として、ACIでは最大骨材寸法は部材の最小寸法の1/5以下、かつ配筋間隔の3/4以下を推奨している。
- 細骨材の形状・細粉含有量: 過度の微粉や有機性の不純物は水分要求量を増やし、強度に影響する。
- 吸水率の補正: 吸水性の高い骨材は配合時に吸水補正を行い、実効水セメント比が設計値から逸脱しないようにする。
アスファルト(舗装)におけるポイント:
- 角礫性(角張り): 角張った砕石は骨格結合を強め、耐剥離性や耐荷重性を高める。
- 粒度曲線: 表層や中間層、基層で求められる粒度が異なるため、規格に合わせた混合が必要。
- 耐摩耗性・耐剥離性: L.A.値や吸水率、石種の選定が性能に関与する。
リサイクル骨材と代替材料の動向
近年、コンクリート構造物の解体材から得られる再生骨材(RCA: Recycled Concrete Aggregate)や砕石代替材の活用が進んでいます。利点は資源循環とコスト低減ですが、吸水率の増加、付着モルタル由来のアルカリ含有、強度のばらつきなど課題があります。使用に際しては前処理(洗浄、破砕の再処理)、品質規定、混合比率の最適化が必要です。
現場での管理と施工上のベストプラクティス
- 受入検査: ロットごとに粒度、吸水率、含鉄や有機物の有無を確認し、不適合は分別保管する。
- 在庫管理: ストックパイル間での混入を避け、降雨後の排水や凍結対策を行う。
- 配合時の水分補正: 現地での含水率測定を行い、設計水量へ調整する。高吸水骨材ではプレウェッティングや吸水補正水の管理が重要。
- 打設と締固め: 粒形や最大寸法に合わせた打込み方法(ポンプ、バイブレータ等)と凝結管理を行う。
環境・安全面の配慮
採石・破砕は粉じん・騒音・振動、採掘跡地の景観・生態系への影響を伴う。適切な防塵対策(スプレー洗浄、覆い、風向監視)、騒音の低減、採掘計画による段階的復旧(植生回復、排水管理)を実施することが求められます。さらに、骨材生産に伴う水使用量の管理や洗浄水の処理も重要です。
選定チェックリスト(設計者・施工者向け)
- 用途に合った石種と粒度を選んでいるか(コンクリート、アスファルト、路盤など)。
- 最大骨材寸法が部材寸法および配筋間隔に適合しているか。
- 吸水率、LA試験値、耐凍結性、ASRの有無が許容範囲内か。
- 現場ロットごとの受入検査体制が整備されているか。
- リサイクル骨材を使う場合、事前に性能評価と配合見直しを行ったか。
まとめ
砕石骨材は一見単純な材料に見えますが、岩種・粒形・粒度・含水率・化学性といった複数因子が構造物の性能に影響します。設計段階での適正な選定、製造段階の品質管理、現場での受入・配合管理が不可欠です。環境配慮やリサイクルの導入も今後ますます重要となるため、最新の規格・試験法・実務知見を踏まえた総合的な判断が求められます。
参考文献
- 国土交通省(MLIT)ウェブサイト — 道路・構造物関連の基準やガイドライン
- American Concrete Institute (ACI) — コンクリート設計・配合に関するガイドライン(例:ACI 318 等)
- ASTM International — 骨材試験法(比重、吸水率、LA試験、ASR試験など)の規格
- U.S. Geological Survey (USGS) — 骨材資源・採石に関する解説
- Federal Highway Administration (FHWA) — 道路用骨材の仕様・管理に関する資料
- 一般社団法人日本規格協会(JSA) — JIS規格の取得・参照
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