建築・土木で使われるブロワーの全知識:種類・選定・設置・メンテナンスと省エネ対策

はじめに — ブロワーとは何か

ブロワー(blower)は、低~中圧域で大容量の空気やガスを移送・供給する機械で、建築・土木分野では給排気、脱水・曝気、土壌浄化、気泡発生、粉体搬送など多岐にわたる用途で使用されます。一般に「低圧で高流量」を特徴とし、用途や要求性能に応じて複数の方式(ロータリーローブ、ロータリーサイドチャネル、遠心式など)が選ばれます。

基本的な動作原理

ブロワーは空気・ガスを取り込み、圧力を上げて吐出することで流量を確保します。原理は方式によって異なり、大別すると「容積式(正排気式/容積型)」と「動圧式(遠心型)」に分かれます。容積式は回転部で空隙を作り、容積変化により吸入・圧縮・吐出を行うため低速でも一定流量が得られやすく、動圧式は回転翼で運動エネルギーを与えて圧力を上げるため高速回転が必要ですが効率良く大流量を得られます。

代表的なブロワーの種類と特徴

  • ロータリーローブ式(ルーツ式)

    2つ以上の回転ローブがケース内で噛み合い、容積を移動させる正排気式。大きな流量と安定した吐出が得られ、空気・ガスの搬送や曝気などに多用されます。耐久性が高く高粘度や含水状況にも比較的強い一方、流量制御はVベンチやバイパス、回転数制御で行います。

  • ロータリー(スクリュー・ロータリーロブ含む)

    スクリューやロータリーベーンなども容積型に属し、連続して安定した流量が得られます。潤滑式・無潤滑の差やシール方式で選定が分かれます。

  • サイドチャネル(再生式)

    羽根車がガスを側面のチャネル内で螺旋的に加速・減速させる方式。比較的高い真空度や中圧が得られるが流量は中程度。騒音が大きくなることがあるため防音対策が重要です。

  • 遠心(シロッコ・横流)ブロワー

    羽根車で動圧を与える方式。回転数が高く効率良く大流量を扱えるため、ダクト空調や換気・排気用途で広く使われます。圧力は中程度、運転回転数の制御で流量を変化させます。

建築・土木での主な用途

  • 下水処理の曝気(酸素供給)
  • トンネルや地下空間の換気・排煙
  • 土壌改良や汚染物質の抽出(気相抽出)
  • 脱水設備の加圧/真空供給
  • 粉体・固体の空気輸送(空気搬送)
  • コンクリートのデンシングや養生用の換気

選定時のポイント

適切なブロワー選定は運転コストや寿命に直結します。主に次の点を検討してください。

  • 必要流量と圧力(または真空度):運転点(圧力損失を含めたシステムの必要圧)と必要流量を明確にし、メーカーの性能曲線で運転点が効率の良い領域にあるか確認します。
  • ガスの性状:水分、粉じん、腐食性ガス、可燃性ガスの有無により材質・シール・防爆仕様が必要になります。
  • 連続運転か断続運転か:長時間運転の設備では冷却・潤滑方式や耐久性が重要になります。
  • 騒音・振動規制:現場の環境基準や近隣配慮に基づき、防音ボックスや消音器を検討します。
  • 設置スペース・配管ロス:現場配管の圧力損失を見積り、運転点に反映させます。ダクト抵抗やベントの有無を設計に含めます。
  • メンテナンス性:点検・軸受やシール交換の容易さ、スペア部品の流通性を確認します。

設置・配管での注意点

ブロワーは設置方法や配管構成で性能が大きく左右されます。以下に主要ポイントを挙げます。

  • 水平設置・基礎:振動を基礎に伝えないため防振ゴムやボルト固定、レベリングを行う。
  • 吸込側の余裕:吸気口の抵抗が大きいと吸入性能が低下するため、吸込み側に短く太い配管を用いるかサイレンサやダンパーを適切に設計する。
  • 吐出側のバイパス:過圧や非常時の保護、定格点外運転回避のためのバイパス弁や安全弁を設置する。
  • 熱・冷却:容積式は圧縮に伴う発熱があるため冷却(空冷、水冷)を確認する。
  • フィルター設置:吸気フィルターで粉じんを除去し、機器の故障を防ぐ。

騒音・振動対策

ブロワーは機械音と流体騒音が発生します。特にルーツ式やサイドチャネルは脈動やパルスが出るため、騒音低減が求められます。対策は以下の通りです。

  • 防振架台やアイソレーターの採用
  • 吸排気のサイレンサー(消音器)設置
  • 流速低減のための配管径の最適化
  • 防音ボックスや遮音壁の導入

メンテナンスと寿命管理

機械的摩耗、軸受・シールの劣化、潤滑油の汚染・劣化が主な劣化要因です。定期点検項目としては、温度・振動・軸受の状態、オイルの定期交換、吸気フィルターの洗浄・交換、ベルト張力やカップリングの点検などを推奨します。適切なメンテナンスにより稼働率向上と長期のライフサイクルコスト削減が可能です。

トラブルシューティング(よくある故障と対処法)

  • 異常振動:ベアリング摩耗、シャフト偏心、取り付け不良。原因特定後に軸受交換や再整列を実施。
  • 発熱・オイル温度上昇:冷却不足、過負荷運転。運転点確認と冷却系の清掃・補修。
  • 流量不足:吸込フィルター詰まり、配管抵抗増大、回転数低下。フィルター洗浄や配管点検、駆動系の確認。
  • 騒音増加:インペラ欠損、ハウジング内の異物。停止点検が必要。

省エネと運転制御

ブロワー運転はエネルギー消費が大きく、特に曝気など連続運転が多い用途では省エネ対策が重要です。主な方法は次の通りです。

  • インバータ(VFD)制御:需要に応じた回転数制御でエネルギー削減。
  • 適正サイズ化:過大な機器選定を避け、運転点が効率域に入るように設計。
  • バイパス・ダンパ制御の最小化:バイパス運転は無駄なエネルギー消費につながるため回転数制御で代替。
  • 熱回収:発生する排熱を他プロセスへ利用することで総合効率向上。

安全・法規・基準

危険物を扱う現場では防爆(Ex)仕様や適切なアース、静電気対策が必要です。また、騒音規制や排気基準、下水処理場での性能基準など各種法令・ガイドラインに従う必要があります。仕様選定時にはJISやISO、現場の法規を確認してください。

導入事例(簡易紹介)

下水処理場ではルーツ式やスクリューブロワーが曝気に用いられ、VFDを併用して負荷に応じた酸素供給量を制御することでエネルギー削減を実現しています。トンネルの換気扇には遠心ブロワーが用いられ、高風量・低圧で長距離ダクトの圧力損失を補償します。土壌浄化ではサイドチャネルやルーツ式が真空・加圧の両方で利用されます。

まとめ

ブロワーは建築・土木分野で不可欠な機器であり、用途に応じた方式選定、設置条件、運転制御、メンテナンスが運用コストと性能に大きく影響します。導入前には必要流量・圧力・ガス性状を明確化し、メーカーの性能曲線や実績に基づいた検討を行ってください。省エネ対策としてはVFD導入と適正サイズ設計が効果的です。

参考文献