「ホールド」完全ガイド:セットアッパー評価から批評・代替指標まで徹底解説
ホールドとは何か
ホールド(Hold、略記:HLD)は、主にリリーフピッチャー、特にセットアッパーなどの中継ぎ投手の仕事ぶりを評価するために使われる野球の非公式な投手指標です。セーブとは異なり、試合を締めるクローザー以外の投手が勝利継続のためにリードを維持したケースを数えるもので、複数の投手が同一試合でホールドを記録することができます。公式記録ではないものの、メディアや球団、ファンの間で広く用いられているため、投手起用や契約評価にも影響を与えています。
一般的な算出ルール(よく使われる定義)
ホールドに関する標準的な定義は次のとおりです。なお、メジャー公式が定める公式記録ではなく、各統計機関やメディアで採用されるルールに若干の差異がある場合があります。
- 投手が「セーブ機会(save situation)」に登板していること。一般的には、リードが3点以内、または同点・逆転の可能性が高い場面、もしくは得点圏に走者がいるなどの場面が含まれます。
- 少なくとも一つのアウトを記録すること(多くの運用ではこの条件が入ります)。
- 登板中にリードを失わないこと(失点してもチームがリードを保てばホールド対象になり得る場合もあります)。
- 試合を終了(セーブ条件を満たす形で締める)していないこと。つまり、クローザーのように試合を締めた場合はセーブであってホールドにはならない。
一つの試合で複数の投手が条件を満たせば、それぞれにホールドが付与されます。また、登板してアウトを取らずに降板した場合は統計の運用によってホールドが認められないケースが多いです。
具体例で理解する
例1:5回表にチームが4対1でリードしている場面で5回の中途から投手Aが登板し、1イニングを無失点で抑えて降板。続く投手Bが6回を無失点で抑え、クローザーCが9回を抑えて試合終了。投手A・投手Bはそれぞれホールドを記録し、クローザーCはセーブを記録する。
例2:同じくリードを保って登板した投手が1点を失ったがチームはリードを維持して降板した場合、投手によってはホールドが認められる運用が一般的です(記録機関による差は少しあります)。
ホールドが重要視される理由
- 中継ぎ投手の貢献を可視化:勝利に直結するクローザー以外の投手の価値を示すため、有用な指標となります。
- 起用傾向やロールの明確化:セットアッパーの評価や市場価値の指標として使われ、球団のリリーフ構成の把握に役立ちます。
- ファンタジー野球での指標:中継ぎ投手を評価する際、セーブが少ないリリーフ投手の貢献を数値化できるため、重宝されます。
ホールドの限界と批判点
一方でホールドには批判や限界もあります。以下の点に注意が必要です。
- 文脈依存性が高い:同じホールド数でも、投手が登板した場面(レバレッジ=重要度)が大きく異なれば、その価値は大きく変わります。例えば、同点や得点差1点の高レバレッジ場面と、事実上の安全圏での登板では意味合いが違います。
- アウトカウントや被安打内容を反映しない:与四球や被安打の内容、被長打の危険性などはホールド数に表れないため実力評価として不十分な場合があります。
- 易しくカウントできる指標ゆえの誤用:数が増えやすい投手はローテーションや投球回数の関係でホールドが偏ることがあり、単純なランキングだけで評価すると誤解を招きます。
- 公式記録ではない:MLBの公式記録ではないため、球団やメディアにより扱いが異なるケースがある点も留意が必要です。
ホールドと他の指標の関係(セーブ・勝利・WPA・LIなど)
ホールド単体で投手の価値を測るのは不完全です。以下の指標と組み合わせて評価することが勧められます。
- セーブ(Save):試合を締めたか否か。クローザーの評価に直結しますが、中継ぎの貢献は評価しにくい。
- 勝利(Win):先発が長く投げる場合や味方打線の援護によって大きく左右され、投手の個人性能評価には限界があります。
- WPA(Win Probability Added):選手のプレーが勝利確率に与えた影響を数値化したもので、ホールドの「重み」を場面ごとに評価できます。
- レバレッジインデックス(Leverage Index, LI):登板場面がどれだけ重要かを示す指標で、高LIの場面でホールドを記録していれば価値は高いとされます。
- FIP・ERA・WHIPなどの投球内容指標:アウトの取り方や失点の質を把握するために必要です。
代替指標と進化
最近の野球分析では、単純なホールド数だけでなく、場面の重要性や投球の質を同時に捉える指標が重視されています。たとえばWPAやRE24、レバレッジ係数を組み合わせた評価、さらにはStatcastによる投球質(球速、回転数、被打率など)を併せて分析することで、中継ぎ投手の真の価値に近づけます。
日本(NPB)での扱い
日本プロ野球でもホールドは広く使われています。NPBの公式記録として扱われることも多く、セットアッパーの指標としてチームやファンの間で定着しています。ただし、細かい運用や統計提供の仕組みは媒体により差があるため、比較する際はデータ元を確認することが重要です。
実務的な評価・スカウティングへの応用
スカウトや編成部門では、ホールド数は候補選手の一要素として参考にされますが、単独で判断することは少なく、以下のような組み合わせで使われます。
- ホールド数+レバレッジ:どの程度重要な場面で仕事をしているかを確認。
- 投球内容指標(FIP、K/BB、被打率など):安定性や三振奪取力、制球力を評価。
- リリーフの投球回・回復力:シーズンを通して使えるかどうか、投球イニング数と疲労管理。
- Statcastデータ:球速や変化球の効果、被本塁打率やバレル率など。
ファンタジーやメディアでの使い方
ファンタジー野球では、クローザー以外でポイントを稼ぐ手段としてホールドは有効です。ただしリーグルールによってホールドの価値(ポイント配分)が異なるため、使用する際はリーグ設定に合わせた評価が必要です。メディアでは簡単で分かりやすい指標として引用されやすく、中継ぎの人気指標となっています。
まとめ:ホールドをどう扱うべきか
ホールドは中継ぎ投手の貢献を可視化する便利な指標ですが、単独で投手評価を行うのは危険です。最も有効に使うためには、場面の重要度(レバレッジ)、投球内容(FIP、K/BBなど)、勝利確率変動(WPA)などと組み合わせることが重要です。球団やスカウティングではこれらを総合的に踏まえ、投手の本質的価値を見極めます。
参考文献
- Wikipedia(英語)「Hold (baseball)」
- FanGraphs Library「Hold (HLD)」
- Baseball-Reference Bullpen「Hold」
- MLB.com Glossary「Leverage Index」
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