ダークウェーブとは?歴史・代表バンド・現代シーンまで徹底解説

ダークウェーブとは

ダークウェーブ(Dark wave、ダークウェイヴとも表記)は、ニュー・ウェイヴやポストパンクをルーツに持ち、暗く内省的な美学を前面に出した音楽ジャンルの総称です。冷たいシンセサイザー、メランコリックなメロディ、深みのある低音域のボーカル、そしてゴシック的/叙情的な歌詞世界が特徴で、1970年代末から1980年代にかけてのポストパンク/ニュー・ウェイヴの文脈から派生しました。

ジャンル名は曖昧で、ゴス(ゴシック・ロック)、コールドウェーブ、エシリアル・ウェイヴ(エーテリアル)などと境界が重なります。地域や時代によりサウンドのニュアンスは多様で、ギター主導のダーク・ポップ寄りのものから、シンセ主導のクラブ向けエレクトロニカ寄りのものまで含まれます。

歴史と系譜

ダークウェーブの源流は1970年代末から1980年代初頭のポストパンク/ニュー・ウェイヴの台頭にあります。Joy Division、Siouxsie and the Banshees、The Cure といったポストパンク系のバンドが示した陰鬱さやモノトーン的な美学が重要な出発点となりました。これにシンセサイザーやドラムマシンの普及が加わり、より暗く電子的な表現を志向する動きが現れます。

1980年代〜1990年代にかけて、クラシックなダークウェーブの代表格とされるアクトが現れ、また欧米とドイツ、フランスといった地域ごとに独自のシーンが育ちました。例えば、4ADのようなレーベルはエシリアル寄りの作品を多数送り出し、ProjektやHyperiumのようなレーベルはダークウェーブ/ゴス系の流通とシーン形成に寄与しました。

2000年代以降はインターネットを通じて90年代以前の作品への再評価が進み、2010年代にはLebanon Hanover、She Past Away、Drab Majesty、Boy Harsher などを代表とする“ポスト・ダークウェーブ”/“ニュー・ダークウェーブ”のムーブメントが生まれ、若い世代のリスナーやクラブ文化とも接続しています。

音楽的特徴

  • 音色:寒色系のシンセパッド、アナログ系シンセサウンド、リバーブやディレイを効かせたギター。
  • リズム:シンセドラムやドラムマシン、シンプルかつ反復的なビートで暗いグルーヴを作る。
  • ボーカル:低めで落ち着いた声質、またはドライで冷たい語り口。時に空間系エフェクトが掛けられる。
  • 歌詞/テーマ:喪失感、孤独、内省、都市の孤立、神秘主義や死生観といった重層的なモチーフ。
  • プロダクション:アンビエント的空間処理やミニマルな配列で“陰影”を強調することが多い。

代表的バンドと作品(入門ガイド)

  • Clan of Xymox(クラン・オブ・ザイモックス):エレクトロニクスとダークなメロディが融合したオランダ出身のバンド。初期〜中期作品はダークウェーブの重要な参照点です。Wikipedia
  • Dead Can Dance(デッド・カン・ダンス):ゴシックやワールドミュージック的要素を取り入れた深遠なサウンドで知られ、4ADレーベル周辺で高い評価を得ました。Wikipedia
  • Cocteau Twins(コクトー・ツインズ):エシリアルなギターと透過的なボーカルで知られ、ダークウェーブの“夢幻的”側面に影響を与えました。4ADにおける代表的バンドです。
  • Lebanon Hanover(レバノン・ハノーバー):2010年代の代表的ニュー・ダークウェーブ/ポストパンク派。ミニマルで冷たい音像とメランコリックな歌詞が特徴です。Wikipedia
  • She Past Away(シー・パスト・アウェイ):トルコ出身のバンドで、ポストパンクとシンセを融合した近年のダークウェーブ・リバイバルの好例です。Wikipedia
  • Drab Majesty / Boy Harsher など:エレクトロニック寄りの現代ダークウェーブ勢。クラブ的なダンスビートと暗い美意識を結び付けています。

レーベルとシーン形成

ダークウェーブは特定のレーベルと深く結びついて発展してきました。4ADはエシリアル/ダークなポップを、Projekt Records は北米でのダークウェーブ/アンビエント系の流通を支え、Hyperium(ドイツ)やMetropolis(米国)は90年代以降のゴス〜ダーク系のシーンで重要な役割を果たしました。こうしたレーベルやインディー流通がアンダーグラウンドな温床を作り、多様な派生を生み出しました。

関連ジャンルと区別点

ダークウェーブはゴシック・ロック、コールドウェーブ、ポストパンク、エシリアル・ウェイヴなどとしばしば交差します。おおまかな区別としては、ゴシック・ロックはよりロック的なギターの比重が高く、コールドウェーブはフランスやベルギー発の硬質なシンセ/ギター音に焦点があり、エシリアルは透明感のある女性ボーカルと空間的アレンジが特徴です。しかし現場では明確に線引きされることは少なく、アーティストや曲ごとに横断することが常です。Cold wave

現代の動向と影響

2010年代以降、インディー/DIYレーベルやBandcamp、ソーシャルメディアを通じて世界中で若いバンドが台頭し、ダークウェーブの“復権”が起こりました。クラブとフェスティバル(例:Wave-Gotik-Treffen)でのプレゼンスも大きく、従来のゴス文化と電子系ダンスカルチャーの橋渡しをする役割を果たしています。これによりダークウェーブは単なる過去の回顧ではなく、現在進行形のシーンとして再定義されています。Wave-Gotik-Treffen

聴き方のヒント

  • 初めて聴くなら、代表的なバンドのベスト盤や初期アルバムで系譜を追うと理解が早い。
  • ヘッドフォンでリバーブや空間表現に注目すると、ダークウェーブ特有の“陰影”がより鮮明に聞こえる。
  • クラブやライブでのダンス性を知りたい場合は、Boy Harsherや最近のエレクトロ寄りアクトをチェックするのがおすすめ。

まとめ

ダークウェーブは暗さと美しさを同時に内包する多面的な音楽潮流です。ポストパンク/ニュー・ウェイヴから派生し、ゴシック、コールドウェーブ、エシリアルなどと重なり合いながら独自の表現を築いてきました。歴史的作品から現代のリバイバルまでを辿ることで、ジャンルの広がりと変化を楽しむことができます。

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参考文献