着金管理の完全ガイド：確認・照合・トラブル対策と自動化の実践

2025年12月29日 最終更新日時 : 2025年12月29日 エバープレイ編集部

はじめに：着金管理とは何か

着金管理とは、顧客や取引先から送金された資金が自社の口座に確実に到着していることを確認し、会計処理や売掛金管理、キャッシュフローに反映させる一連の業務を指します。単なる入金確認にとどまらず、振込名義の照合、金額の照合、未着金の追跡、誤入金や不正の検出、月次決算や監査対応まで範囲は広く、企業の資金管理・内部統制の中核を担います。

なぜ着金管理が重要か

正確で迅速な着金管理は、次のような経営上のメリットを生みます。

  • キャッシュフローの可視化と短期資金繰りの最適化
  • 売掛金回収率の向上と未回収リスクの低減
  • 誤入金や架空取引などの不正検知による損失防止
  • 監査や税務調査での説明責任の履行

着金確認の基本フロー（基礎作業）

着金管理の基本は「確認→照合→処理→記録」のサイクルです。以下は一般的な日次フローの例です。

  • 銀行口座の入出金明細を取得（インターネットバンキング、CSV、APIなど）
  • 入金明細と請求データ（請求書番号・顧客名・金額）を照合
  • 突合できた入金は会計ソフトへ仕訳、売掛金を消込
  • 突合できない入金は「調査・保留」リストへ移し、顧客や銀行へ照会
  • 重複入金・誤入金は返金や振替処理を実施し、記録を残す

振込形態別の留意点

着金には形式が異なる複数の手段があるため、それぞれの特性に応じた運用が必要です。

  • 銀行振込（日本国内、全銀システム／全国銀行データ通信システム）: 振込名義の不一致やカタカナ・略称の差異により突合が困難になることが多い。振込人マニュアルや通知の徹底を推奨。
  • 決済代行（クレジットカード、PayPal、決済代行業者）: 決済手数料・チャージバックの発生、入金サイクル（締め日→払い出し日）を把握し、入金予定を予測する必要あり。
  • 現金入金・小口現金: 立替や現金過不足が発生しやすく、領収書・現金出納帳との突合作業が重要。
  • 海外送金（SWIFT等）: 中継銀行手数料や為替差損、受取側で差し引かれる手数料による着金額の差異、着金遅延が起きやすい。MTメッセージや受取手数料の処理ルールを決めておく。

よく起こる課題とその原因

着金管理で企業がぶつかる典型的な課題とその主な原因を挙げます。

  • 未着金・入金消込不能：振込名義の相違、振込参照番号の未入力、複数請求の合算振込などが原因。
  • 誤入金・重複入金：顧客の誤振込、システム反復処理ミス。
  • 入金情報の欠損：紙の振込依頼書のみで電子データがない、入金情報がOCRで読み取れない。
  • 遅延や未入金の連絡不足：売掛管理と着金管理が分断されているため対応が遅れる。

自動化・システム化のポイント

手作業中心の着金管理はミスが増え、スピードも出ません。以下を検討してください。

  • 銀行CSVの自動取り込み・API連携：入金明細を自動取得し、会計システムと連携することで手作業を削減。
  • 振込人名義の正規化と曖昧一致アルゴリズム：カタカナ・全角半角・スペース等を正規化し、AIやルールベースで類似照合。
  • OCR／データキャプチャ：紙の振込票や振込受領メールをOCRでデジタル化し、突合に活用。
  • RPAによる定型業務の自動化：突合不能データの分類、顧客へのテンプレートメール送信などを自動化。
  • クラウド会計ソフトの銀行連携（例：弥生、freee、マネーフォワードなど）を利用して入金消込を効率化。

内部統制と不正対策

着金管理は不正が起きやすい領域の1つです。以下の統制が必要です。

  • 職務分掌の徹底：入金確認、消込、会計仕訳、出金処理を同一人物に集中させない。
  • 二重承認プロセス：誤入金の返金など資金移動には複数承認を必須にする。
  • アクセス管理とログ保全：インターネットバンキングのアクセス権は最小化し、操作ログを保存。
  • 定期的な突合と外部確認：月次の銀行調整表作成、監査時の銀行確認書類を準備。
  • アラート設定：大量入金や通常と異なる振込口座への入金を即座に検知する仕組み。

月次・決算時の着金関連処理

決算に向けた着金管理で押さえるべき点は、締め日の取り扱いと未着金の会計処理です。

  • 締め時点の入金予定と入金実績の差分を明確にする。翌営業日の入金がある場合は注記や翌期繰越の扱いを確認。
  • 未確認入金は「未着金」ではなく、一時的な「未確定入金」勘定で管理し、調査完了後に振替。
  • 為替差損益や受取手数料の扱い（海外送金）は、受取日・評価レートに基づいて適切に計上。

対応フロー：未着金・誤入金が発生したら

迅速な対応が損失を防ぎます。推奨フローは以下の通りです。

  • 入金記録と照合し、口座振替IDや振込人名義・入金日・金額を確認
  • 社内で突合可能であれば処理を行い、不可の場合は顧客へ照会メールを送付（テンプレート化）
  • 顧客確認で誤入金と判明した場合は返金手続きまたは振替合意を取得し、二重承認で処理
  • 銀行側の問題（明細欠損・遅延）であれば銀行へ正式に問い合わせ、調査依頼の証跡を保管

実務チェックリスト（毎日／週次／月次）

運用の抜け漏れを減らすための最低限のチェック項目です。

  • 日次：銀行明細取り込み、未消込入金の確認、異常アラートの確認
  • 週次：未着金リストのステータス更新、顧客への未入金督促開始判断
  • 月次：銀行調整表作成、期末の未着金分類と会計処理、外部監査用資料の整理

ケーススタディ：海外送金の遅延対応

ある企業が海外顧客からの支払いを受ける際、中継銀行の遅延で着金が滞ったケース。対応として以下を実施しました。

  • 顧客に受取明細（MT103相当）を提出してもらい、送金トレースを実施
  • 受取時の差引手数料分を顧客に説明し、合意のうえで残額処理
  • 将来のトラブル防止のため、受取口座の仕向け指示・受取銀行の変更を検討

導入すべき主要ツールと技術

着金管理を支える技術・ツールの一例です。

  • 銀行API／フィーディングサービス：入金明細の即時取得と自動反映
  • 会計ソフト連携（弥生、freee、マネーフォワードなど）
  • 決済代行・PG（ペイメントゲートウェイ）連携（国内外クレジット、コンビニ決済等）
  • OCR・AI（入金通知メールの自動解析、振込名照合の学習機能）
  • RPA（照合作業・メール送付の自動化）

まとめ：着金管理を経営資源に変えるために

着金管理は経理のルーティン業務に見えますが、正確かつ迅速に実行することでキャッシュフローの改善、与信管理の強化、不正防止、そして経営判断のスピードアップに直結します。重要なのは「仕組み化」と「継続的な改善」です。日次の運用ルールを固め、技術を活用して自動化を進めつつ、内部統制を整えることで、着金管理を企業の競争力に変えてください。

参考文献

カテゴリー
ビジネス
前の記事
入金処理の完全ガイド：業務フロー・システム・不正対策と実務ベストプラクティスNew!!
2025年12月29日
次の記事
入金照合の全体像と実務ガイド：自動化・内部統制から例外対応までNew!!
2025年12月29日